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Send Help, Not Corpses—My Church Is a Hero Repair Shop! – Chapter 89

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かつてない最悪の目覚めだった。こんな起こし方をされた人間は、世界広しと言えども俺以外にそう何人もいないんじゃなかろうか。

寒い。そしてぬるぬるしている。触手が全身を這いずっている!

「ねぇ」

首をひねって声の方を見る。ジッパー? 違う。女がいた。待て、男か? 触手に埋もれている。良く見えない。

いや、触手に埋もれているのは俺の方だ。

ヤツは細い腕を触手の中に突っ込み、まるで子犬でも抱き上げるように俺を引っ張り上げた。

ようやくヤツの全貌が見える。

湖に溶け込むようなライトブルーの髪。上半身にはなにもつけていないが、その体は人形のようにつるりとしていて性差を感じさせるものが一切ない。

特筆すべきはその下半身だろう。触手だ。腰のあたりから生えた触手が、まるでドレスのように半身を形作っている。

整った顔と異形の体。

今までの経験から、俺は瞬時に理解した。

「ま、魔族……」

蒼白い顔がずいっと迫る。緑の目、湖に引き込まれた時のことがフラッシュバックする。コイツだ。コイツが俺を引き込んだんだ。

……どうして俺だけを?

魔族ならば全員を連れ去ることも、あるいは皆殺しにすることだってできたはずだ。なにが目的だ?

あたりを見回す。ルラック洞窟の最深部なのだろうか。広い空間だ。半分は浅瀬のようになっており、もう半分は陸になっているが面積に対して足の踏み場はそう多くない。辺り一面モノで埋め尽くされている。

なんだこれは。価値の有りそうな宝石や金貨のようなものも無くはないが、大半はガラクタに見える。

あれ? あそこにあるの髑髏じゃね? 嫌な予感がする……

通算二人目の触手持ち魔族が、俺の首筋に顔をうずめる。

く、食われる?

俺は恐怖にガチガチと歯を鳴らす。

しかしいつまで経っても痛みは襲ってこなかった。歯を突き立てる代わりに、魔族はスンスンと鼻を鳴らす。

「神官なんでしょ? 人の子の神に仕えてるくせに、浮気性なんだね。知った匂いがいっぱいする」

「神官を……知っているんですか?」

リンは神官という言葉すら知らなかったのに。

すると魔族は俺を見上げてニッと笑った。

「荒地の馬鹿や森のマヌケと一緒にしないで。ボクは他種族の文化を取り込み、学んできたんだ。その辺のヤツとはココが違うよ」

そう言って、魔族は自らの頭を人差し指でコツコツとやる。

なるほど、知的な魔族さんですね。今までの例に漏れず、この魔族とも一応会話はできそうだ。できれば友好な関係を築きたい。

俺の思いを汲んだかのように、魔族が優しい声色で言う。

「ボク、人間って大好き」

俺たちの脇を横切るように、青い色をした蟹がトテトテとカニ歩きしている。蟹とはいえ犬くらいの大きさはあり、その巨大なハサミになにか持ってる。んー……腕だな。人の腕だ。俺はこっそり自分の腕を盗み見る。よし、ちゃんと付いてる。俺のじゃないな。

食料を巣へ持ち帰る途中なのだろうか。なんとも微笑ましい光景である。しかしせっかくの食料は触手によって容易く掻っ攫われた。

「ギャァ!!」

あー、蟹さんが怒ってるぞ。

抗議の声を上げる蟹さんを見下ろしながら、魔族は横取りした腕に齧り付く。

「ここにある宝物のほとんどは人間から奪ったものなんだ。何度も何度も諦めず取り返しにくる個体もいるんだよ」

あっという間に腕を腹におさめる。

だがまだ食い足りないのか。次に、魔族は岩の切れ目に触手を突っ込み、なにか引きずり出した。

また蟹だ。蟹にしてはデカいが、腕を持っていた蟹よりは小さい。猫くらいの大きさだ。もしかして子供なのか?

「ギャッ! ギャアッ!」

親蟹がハサミを振り回して一際激しく鳴いている。蟹にも親子の絆というものがあるんですねぇ。

手に入れた子蟹を、魔族は口に運んだ。

「ギャ……」

バリバリ音を立てながら子蟹が食われていく。ペロリと平らげるや、ヤツはこちらに笑顔を向けた。

「ボクの持っている物を奪い返しにきては返り討ちにあうのを見ていると、凄く心が満たされるんだ。ボクはこんなに価値あるものを持っているんだぞってね」

耳を塞ぎたくなる絶叫と泡を上げながら、蟹がこちらへ向かってくる。それを小虫でも払うように魔族が触手で打ち返す。蟹さーん!

飛んでいく蟹には目もくれず、魔族はその蒼白い腕で俺の頬を撫でた。

「最高の宝物だ。君を独り占めしたら、きっと色んなヤツが悔しがる。その顔を見れたらどんなに満たされるだろう。あのいけ好かない雑草の仏頂面が歪むのを見れたらどんなに……」

あ、ダメだ。コイツと友好的な関係を築くビジョンが見えない。

ん? 地面からなにかが染み出している。銀の液体……粘度を持ったそれは徐々に盛り上がり、ぷるんとした塊を作る。

「ジェ、ジェノスラ!」

助けに来てくれたのか!?

やっぱ持つべきものは魔物の友達だよね。弱小種族の人間なんて目じゃないわ。

ジェノスラはゆっくり、ゆっくりとこちらへ触手を伸ばす。俺は戦いに備えて身を固くした。

しかし魔族は全く動じていない。パッと笑みを浮かべて軽く片手を上げる。

「やぁ、カイザースライム。立派になって帰ってきて嬉しいよ。可愛い子には旅をさせよってね」

そう言って、こちらへ伸びるジェノスラの触手をゼリーのように容易く切り飛ばす。

「そういえばコレ、お前の匂いもするね。羨ましいでしょ。これが欲しい? でもダメ、もうボクのだから。触っちゃだめだよ。見るだけなら良し」

ジェノスラはプルプルと体を揺らすだけ。勇者たちを飲み込んだり、火の海に飲まれたオークション会場から俺を救い出してくれた時の覇気はもうない……

*****

えっ、これもしかして詰んだかな?

外は魔物だらけで自力での脱出は不可能。

ジェノスラは俺を遠巻きにしながらプルプルするばかりだ。まさかジェノスラがあのタコ足の眷属だったとは。眷属の魔物がご主人様に逆らうのは難しい。

アイギスたちが助けに来てくれるのを祈るしかないが、たとえ来てくれたとして人間が魔族に勝てるかと言うと……。

シアンの時のように魔族不在の瞬間に来てくれれば良いのだが、ヤツはこの空間を根城にしているらしく出ていく気配はない。

……いや、とりあえず今自分にできる事をしよう。大丈夫だ、拉致は慣れてる。

俺はこの空間のことを知るべく、辺りを見回す。ジッパーはいないようだ。少なくとも姿は見えない。

あっ。俺は唐突に耳の中にいるはずの触手のことを思い出した。マッドと離れると耳の奥へ進んでしまうといっていたが。

触手が蠢く感覚は……ないな。水中に引き込まれたとき出てしまったのだろうか?

そういえばあの魔族の触手、吸盤があってヌルヌルしていて、ジッパーのそれに似ている。まさかマッドの言うようにここがジッパーの故郷で、あの魔族がジッパーの親族とか……そんなことはないと思うけど……

「ん? どうしたの?」

俺の視線に気付いたらしい魔族がこちらを向く。なにやら古びたオルゴールをいじっている。年代物だ。錆びているのか、音が外れて妙な音楽を奏でている。

「あ、えっと……あの、ずっと歩いていたので空腹で。朝から何も食べていないんです」

俺は咄嗟に嘘を吐いた。ポーション飲みまくっていたのと、緊張と疲労で食欲はあまりない。たとえ空腹だったとしてもカバンの中に食料がギッチリ入っている。

しかし魔族は俺の訴えにあっと声を上げた。

「そうだった。ナマモノの宝物は久しぶりだったから。前もメンテナンスサボってダメにしちゃったんだよな……」

なにやら不穏なことを呟きながら、魔族はオルゴールを放り投げる。がちゃん、と音がしてオルゴールはうんともすんとも言わなくなった。

ヤツは水場に飛び込み、触手をくねらせながら潜っていく。あっという間に姿が見えなくなった。一見岩壁で覆われて出口がないように思えるが、湖の底の方で外の水路と繋がっているのだろう。

よし、今がチャンスだ。俺は散策を開始した。

魔族が消えていったあの湖以外に脱出口はないのか? あるいは人の通れそうな穴は。俺は壁を注意深く見て回る。

だがそんな都合の良いものは見つからなかった。

「はぁ……」

いざとなったらあの湖を泳いで脱出しなければならないのか。泳げないこともないが、果たして人間の潜れる深さなのか。そして水中の魔物に食われないかが問題だな。

水場に近づいてみる。ん? 透明な水の上を銀色の液体が揺蕩っている。

これ……ジェノスラの血だ。

よく見ると、ジェノスラの体から銀の液体が漏れ出て湖に流れ出している。触手を切られたときの傷だろう。

ジェノスラなら、俺を抱えてここを脱出できるだろうか。

その粘液で空気ごと俺を包み込めば、溺死も得体のしれない魚も気にせず水路を通って楽に脱出できる? 眷属にとって魔族の命令は絶対だが……今魔族はいない!

俺はにっこり笑いながらジェノスラとの接触を試みる。

「怪我してるんですね。見せてみなさい。治療してあげますから」

しかしジェノスラは尻込みするようにぷるぷると俺から離れていく。

なんだよ、水くさいな。ともに死線を潜り抜けた仲じゃないか。俺はゆっくりとジェノスラの後を追う。

「大丈夫ですよ。今ならヤツもいません。そのままにしていたら萎んでまた小さくなってしまいますよ。すぐ済みますから」

岩壁に阻まれ、ジェノスラの動きが止まる。

気が変わらないうちにと、俺は液体の漏れ出た部分に手をかざした。体がデカいから修復に必要な面積は大きいが、重傷って感じではない。大丈夫、これならすぐ治せる!

強い風が吹き抜ける。幾本もの触手が俺の脇をすり抜けるようにしてジェノスラを貫いた。

「……え?」

「匂う、匂う。裏切りの匂い!」

いつの間に帰ったのか。あるいは最初から隠れて俺の様子を見ていたのか?

魔族がタコ足をうねらせながらザブザブと湖から上がる。

「言ったよね。私の宝物に触るなって」

さらに数本の触手がジェノスラに巻き付き、締め上げる。

串刺しにされたジェノスラの傷から銀の液体が吹き出した。

このままではジェノスラが死んでしまう! 俺は物凄い精神力を消耗して無理矢理明るい声を上げる。

「ま、まぁまぁ、落ち着いてください。ほら、怪我してたから少し手当てをしてあげようとしただけで他意はなかったんです。彼女……彼? は遠慮してたんですけどね。神官としては近くに怪我人がいるとなんだか落ち着かなくて。職業病です」

すると魔族は困ったような顔で呟いた。

「音の出る宝物って扱い面倒なんだよねぇ。どこを取れば余計な音出さなくなる?」

「ひっ……」

触手が蛇のような動きで足を伝い、喉に巻き付く。

やべぇ、余計なことしたか? でも俺、宝物なんでしょ? 手荒な真似しないよね?

「んー、でもここイジると壊れるんだよねぇ。ええと、どうしたらいいんだっけ」

魔族が首を傾げる。怒っているわけじゃない。脅してるわけでもない。壊れた人形の修理をしてるような、そんな無機質な顔。

あぁ、俺は勘違いをしていた。ヤツが先ほど投げ捨て、音の出なくなったオルゴールを見下ろす。なにが宝物だ。俺も所詮このオルゴールと同じ、コレクションの一つにすぎない。所有欲さえ満たせれば状態などどうでも良いのだ。

俺は恐怖のあまり声も出せず、生唾を飲み込む。

「あっ、思い出した。ここを抜けばいいんだ」

触手が首を這って顔にのぼってくる。慌てて口を閉じるが、そんな行為に意味がないことも分かっている。

蛇が鎌首をもたげるように触手の先が口元に向く。この先俺がなにをされるのか、考えたくないあれこれが洪水のように頭になだれ込む。唇がわなわなと震える。脂汗が止まらない。

が、口に飛び込む寸前で触手がピタリと動きを止めた。

「…………?」

魔族が触手を持ち上げ、まじまじと眺めながら首を傾げる。

なんだ? 一体どうした。助かったのか? それともダメなのか?

だが答えを得るより早く、湖に異変が起きた。

激しい水音。嗅ぎなれた血の匂い。清らかな湖が赤く染め上げられていく。

湖を揺蕩う血が肉体を得たかのように、水面から赤髪が飛び出す。

「神官さん、助けにきました!」

今回ばかりは涙を堪えることができない。

「アイギスぅ……!」

アイギスの後に続くように、秘密警察達も次々浮上し……ん? なんで息継ぎをしないんだ? 顔を水につけたまま、背中を上にしてプカプカ浮いてる。ヤツらの周りは特に水の赤が濃い。

良かった、ようやく息継ぎしてるヤツがいた。ヤツは手をブンブン振りながらこちらへ歩いてくる。

おいおい、はしゃぐなよ。ん?

「神官さん、助けてくださーい!」

秘密警察の腹からぬめぬめした魚が生えてる。ヌタヌタ吸血鰻か、肝吸いか……

気付くと、水面は棺だらけだ。子鴨のようにどんぶらこどんぶらこと湖の上を揺蕩い、やがてアイギスに続いて陸へ上陸する。

いつの間にか涙は引っ込んでいた。

これはダメかもしれないね。

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Send Help, Not Corpses—My Church Is a Hero Repair Shop!

I'm a priest working at a church, but please stop sending me the bodies of heroes who have been brutally murdered., I'm Working at the Church as a Priest, but I Want to Be Cut Some Slack from the Mutilated Bodies of the Heroes that Keep Getting Sent to Me, Kyōkai tsutome no shinkandesuga, yūsha no zansatsu shitai tensō sa rete kuru no kanben shite hoshīdesu, Kyōkai tsutome no shinken desu ga, yūsha no zansatsu shitai tensō sa rete kuru no kanben shite hoshīdesu, 教会務めの神官ですが、勇者の惨殺死体転送されてくるの勘弁して欲しいです
Score 6.6
Status: Ongoing Type: Author: , Released: 2019 Native Language: Japanese
Monsters roaming? The bravest heroes charging into battle? That means someone’s working overtime at the church—me. Every time an adventuring party falls, their mangled bodies land on my altar. My job? Stitch their bits back together, slap on a revival spell, and pray the church gets paid this month. Swords and sorcery are tough—but try arguing fees with dead heroes, wild mages, and coffin stalkers. Welcome to a fantasy world where the real grind isn’t on the battlefield, but right behind the sanctuary doors. Sharp humor, absurd obstacles, and a fresh take on classic fantasy resurrection. If you thought dying was dramatic, you haven’t seen what I go through bringing heroes back—one limb at a time.

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