本日3話目です。
さっきまで数千文字が消えて発狂してました(泣
「禁忌って、どういうことですか?」
伊奈野は、骸さんから出てきた理解できない単語を尋ねる。
なにせ、自身が近畿でも歓喜でも元気でもなく、禁忌と言われてしまったのだから。
伊奈野の記憶には、
「禁忌なんて言われるようなことをした覚えはないのですが…………」
『む?そうなのか?だが確実に禁忌を生み出していると思うのだが………』
伊奈野と骸さんはそろって首をかしげる。
今まで伊奈野ととしてはダンジョンを作成したと言うちょっとばれたら袋叩きに合いそうなことこそしているものの、基本的に清廉潔白に、勉強オンリーでゲームは進めてきたのだ。
まさか禁忌なんて、
『最近の禁忌で言えば、『核反応』『生物兵器』『兵器工場建築』『炎上商法』『一酸化炭素中毒』と言ったものがあるが、とりあえずこれらに聞き覚えはないか?』
「いや、核反応とかに並ぶような禁忌に私関係なんて………してますね」
1番最後のものには非常に聞き覚えがあるような気がした。
具体的には、うるさい人と宗教勧誘少女のいる小屋が襲われるという話を聞いたとき。伊奈野は防衛の手段として様々な知識を教えたのだ。主に科学の。
そこで最終的に選ばれたものが一酸化炭素中毒による無力化だった。
「え?あ、あれって禁忌なんですか?」
『禁忌になっているな。やはり其方は禁忌に関係していたか。言った通りであっただろう?』
「そ、そうですね…」
伊奈野は茫然とする。
まさか自分の渡した知識が禁忌扱いをされるような事態になるとは思っていなかったのだ。
ただ、ちょっと防衛の手段を渡しただけであるというのに。核反応などとは全く並ぶこともないあまりにも格の低い物だというのに。
(なんでそれが禁忌になるの!?おかしくない!?……あともしかしてそうなると、私うるさい人とか宗教勧誘少女ちゃんから恨まれてる可能性ある!?禁忌教えちゃったってかなりまずくない!?)
伊奈野はかなりまずいように感じた。
「あ、あのぉ~。禁忌指定された場合って、具体的にどんなことになるのでしょうか?」
聞きたくはないが、聞くしかない。
伊奈野は恐る恐る、それはもう死刑宣告を待つかのように骸さんに尋ねてみる。
だが、
『特に禁忌に指定されたからと言って其方には何かあるわけではないぞ。ただ、禁忌指定されたものがこの世界の人間に使えなくなるだけだ』
「そうなんですか?使えなくなるというのは?」
『使う場合に警告が出て、それでも使えばこの世界におけるスキルや称号、ステータスやレベルといったあらゆる神からの恩賜を受けられなくなる』
「な、なるほど」
自分への影響はとりあえずないということで安心……できるはずもなく。
伊奈野が気になるのはやはり、うるさい人と宗教勧誘少女ちゃんである。2人が禁忌を扱ってしまったとなるとスキルなどが使えなくなっているわけで、当然非常に恨まれていることが予想でき、
(……………ん?でも、ちょっと待って。確か爆撃を受けてた時、宗教勧誘少女ちゃんって結界とかいうのを張ってなかった?あれって多分スキルだよね?ってことは、使えなくなったわけではない?)
「禁忌に指定されたものを使ってスキルが使えなくならないことってあるんでしょうか?」
『ん?ないと思うぞ。それこそ禁忌指定された後に使用した者はどれだけ高潔な存在であってもあっけなく首を切られるからな』
やけに実感のこもった言葉に感じられた。
「そうですか…………ん?指定された後に使用した、ですか?」
伊奈野は落ち込みそうになるが、途中で言葉に引っ掛かりを憶える。
つまりそれはまるで、
「指定される前に使ったものは罰則の対象にはならない?」
『それはそうだろう。後だしで規制して、規制する前のことを裁くなんて決まりを作るものとしてあってはならないことだ。為政者としては自分が無能であると示しているに他ならないだろう』
「な、なるほど!」
それはまさに希望。
一酸化炭素中毒の利用を教えた2人が、禁忌により被害を受けたことはないだろうと思えるものだった。
その後もいくつか話をしたり、勉強をしたり。
伊奈野はダンジョンが新しくなった日を少し楽しみながら過ごしていく。
ただ、楽しい時間はあっという間に過ぎていき、
「それじゃあ、私帰りますね」
「あっ。お疲れさまでした」
『うむ。次来るまでにさらにダンジョンを変えてみせよう』
「ハハッ。楽しみにしてます」
伊奈野は習慣のようにログアウトするためダンジョンから出ていく。ちなみにいつの間にか解放された機能により、伊奈野がダンジョンから出るのは一瞬だった。
さらに追加で言えば、ダンジョン内も自由に転移できるようになっていたりする。
伊奈野が去った後のダンジョンにて。
「あっ。そういえばリスポーン地点とログイン地点をダンジョンに設定できるの伝え忘れてました」
『む?大事なことなのか?』
「まあ大事なことですね。とはいっても、次回伝えればいいだけなんですけど」
『そうか……………あぁ、そうだ炎よ。余は邪神を消滅させた後、世界を支配することに決めたぞ』
「そうなんですか?壮大な夢ですね骸様」
『カカカッ。王たるもの野望は大きくなくてはな………そこで炎にも協力してほしいのだが』
「それはダンマスに言っていただかないと困りますね。自分は所詮ダンジョンマスターの補佐でしかないのですから」
『そうか。それなら今度あのダンジョンマスターは口説くことにするとしよう。今はボスのアンデットを作ることに集中するか』
「そうしてください……………まあ、そのボスを配下にするだけでも世界は狙えそうな気もしますけど」
『カカカっ!確かにな。さすがにこれだけでは足りぬと思うが、将来このダンジョンにより強力なボス召喚できるようになれば余の配下だけで世界を支配できるようになるかもしれん』
「それはおそろしいですね……………ただ何となく、ダンマスはそんなことを聞いても『へぇ。すごいですね』くらいの反応しかしない気もしますが」
『うむ。短い付き合いだが余もあやつならそうなる気がするな……………………ん?外にいる配下の前で戦闘が起こって、っ!?ほ、炎よ!』
「な、何ですか骸様急に!?」
『ダンジョンマスターが邪神の使徒と戦っておる!』
「………………はぁ!?」