伊奈野が天使たちの諸々に巻き込まれたりお詫びを受け取ったりしている間。
色々ときているがそれでも予定通りにイベントは進められており、
「運営ふざけんなですわあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「天使達、今度締めようかしら」
「さすがに許せませんね」
プレイヤーも英雄も少なくない怒りを抱えていた。
その原因はやはり、イベントというものがあるときに限ってやってくる天使などという存在と、それがこの時期に現れることを許容した運営。
街のことを守らなければならない英雄たちとしては自分たちがいない間を確実に狙ってやってきたであろう天使が許せないし、一度イベントから出ると戻ってくることができないプレイヤーたちも運営には激しい憤りを感じるものだろう。
「あの運営達、株価を落としたいんですの?」
「天使達、火あぶりにされたいのかしら?」
共通する事象。違いの出る怒りの矛先。そして、考える物騒な報復。
運営も天使たちも小さくない寒気を感じたのは間違いない。
そんなプレイヤーたちも英雄たちも正気でないところは若干あるとして、それは焦りが募っているというよりも完全にスイッチが入っている状態に近く、
「か、勝てねぇよぉ!!」
「何なんだよ!なんなんだよお前たちはぁぁぁ!!!!」
「ぐぬぅぅぅ!!!自分に押し負けるとは…………」
「まだまだ私たちも、修練が足りなかったわね」
勝ち上がっていくたびに、対戦相手は英雄も協力的なサーバが増えていく。つまり、英雄に非人道的な行いをしていないサーバが増えてきたのだ。
そのため誰かが裏切るといったことはないのだが、だからと言ってその実力差が同等となるわけでもない。
正式なパートナーを作れていない教皇と大商人にも日本サーバと他サーバでは大きな実力差が存在しており、そこによる力の差やもちろん他の英雄のこれまでの経験の差が出て、勢いに差こそあれど一方的な展開のまま進むことは変わらない。
日本サーバの快進撃はすさまじく、もはやだれも止められるものはいないように思われた。
それこそ、
「次で決勝ですわ!早く終わらせて、天使とやらの面を拝みに行きますわよ!!」
「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」
ほとんど苦戦というものをすることなく準決勝も勝利して終わって、次は決勝というところまで来てしまっている。
ここまで決して弱い敵ばかりではなかったのだが、それでもここまで苦戦しなかったのはすさまじい。
だが、だからこそ。
誰かがこの流れを打ち破らなければ日本サーバの快進撃を止めることなど不可能であると考えるわけで、
「日本サーバの者達よ!」
決勝戦。
日本サーバと戦うことになったフランスサーバの1人は考えた。全体で戦って勝つのが難しいのであれば、
「一騎打ちを申し込む!!代表者同士で戦おうではないか!!」
「「「「……………は?」」」」
まず第一に、そのプレイヤーの狙いである日本サーバの面々を困惑させるという目的はすぐに達成された。
プレイヤーも英雄たちもそろって怪訝そうな表情で首をかしげる。
ただ、これが声が大きいだけのプレイヤーであればあっさり無視されただろう。
しかし、ここで事情が変わってくるのは、
「うげぇ。あれ、最強ではないですの?」
「ほんとだニャ~。また厄介なのが……………ニャ~」
最強。そういわれるプレイヤーが、声を上げたのだ。
そうなれば必然的に、注目を集める以上の成果が生まれる。
「一騎打ちとは、どういうことですの?自分ならば相手が1人なら絶対に勝てると思っていますの?」
日本サーバのプレイヤーの代表者的位置にあるトッププレイヤーたちも注目し、その声に反応せざるを得ない。
そうなればペースは完全に最強と呼ばれるプレイヤーのものになるわけで、
「それは間違いなくそう思っている!しかしここでやりたいのは、両サーバ同士の力をかけた戦いだ!決して個人戦をするのではない!!」
「はぁ?でも、一騎打ちなのでしょう?」
「そうだ!一騎打ちだ!だが、それはあくまでもお互いに戦う代表者という1人を出すだけであり、支援に関しては他の者達がかけることを許可するということだ!!」
「支援は許可、ですの?」
「そうだ!お互い全員がかけられるだけのバフをかけてもらった状態で、代表者同士で戦う!それこそがこちら側の求める、まさしくこの世界のすべてをかけるに等しいと思う一騎打ちの内容だ!もちろんここで選んでもらう一騎打ちの代表者は、プレイヤーに担ってもらう!!」
作り出された空気。
それは、完全に断ることのできないものだった。サーバ同士の戦いだというのに、あくまでも見た目では一騎打ち。まさしくエンタメ性に富んだ、イベントの最後にふさわしいと言える戦いだろう。
少しの話し合いの末、結局日本サーバもそれを了承する形となり、
「では私が、いえ、日本サーバこそが最強だということを見せて差し上げますわ!」
「ふんっ!たとえどれだけ集まれば強かろうと、結局最後に大事なのは個人の力であることを見せてやるよ!!」
それぞれのサーバの者達から支援を受ける、日本サーバ最強(仮)とプレイヤー最強。
両者は同時に飛び出し、
「『次元斬』」
「ぶっとべえええええええぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
ぶつかり合った。
あらゆる防御などを完全に無効とする攻撃と、ただの最強と呼ばれる存在から繰り出された攻撃。
それはその攻撃の性質を知る者達から考えれば、圧倒的に日本サーバ最強側の方に有利なように思われたが、
「カハッ!?」
「ぬりぃなぁ!!そんなもんかよぉ!」
最強は、最強であるからこそ最強なのである。
間違いなくダメージは受けているのであろうが、全くそんなことも意に介していないといった様子の最強は、自信とやる気のあふれた表情で笑っていた。
「……………くぅ。バフはこちらの方が確実に上だと思いましたのに。さすがに簡単にはいきませんのね」
「当たり前だ。こっちはだてに最強とは名乗ってないんだよ……………しかも日本サーバの代表だっていうのに相手が賢者の師匠ではなく影の薄い悪役令嬢だっていうなら、なおさらなぁ?」
「へぇ?…………ぶちのめしますわ」
「ハッ。やってみろよ」
熱いバトルが繰り広げらラれそうですが、バッサリカットします