ヴァネッサの傍で、寝る間も惜しんで魔法の実験を続けるデミトリの様子を繋がりを通して見て焦る。
「なんか私の神呪の影響、悪化してない?」
私の神呪は、月光に晒されなければ効果を発揮しないはずなのにここの所日中もデミトリの様子がおかしい事が多い。何となく原因に心当たりがあるけど、どうするべきか悩ましい。
「月光鳥をテイムするなんて聞いてないって~アムールではコルボって言うんだっけ?」
愛し子のヴァネッサの横で気持ちよく寝てる月光鳥の雛から放たれる微細な光に、ヴァネッサもデミトリも気づいてないみたい。
「しかも日中は上着の胸ポケットに入れて体に密着させてるんでしょ? 肌に直当て程じゃないけどやばいよねー」
「ふざけてないで対策を教えてくれないと捻り潰すわよ?」
「……ティシアちゃんの力でコルボをどうにかすればいいじゃん」
「次その呼び方をしたら、本当に消すわよ?」
闇を凝縮させたような神力を目の前に出されて少しだけ焦る。本当に、トリスは無駄に神格が高いからやりにくい……
「トリスから体に悪いから逃がしてあげてって言ってあげるのが一番手っ取り早いんじゃない?」
「そんな事をしたらデミトリも、ヴァネッサも、シエルも悲しむでしょう。ミネアが神呪を解けば済む話じゃないかしら?」
トリスは笑ってるけど目が座ってる。ずかずかと領域に入られたのはむかつくけど、正直これ以上怒らせたくない。
「解くのには理由が必要なのはトリスも知ってるでしょ」
「ヴァネッサちゃんを助けたんだからもういいじゃない?」
「まだちゃんと助かってないからだめ!」
「本当に、我儘な子ね……」
口ではそう言う物の、理解はしてくれたみたい。トリスが膝に肘をつきながら水面に移るデミトリを覗く。
「私はそろそろアムールに向かうわ」
「あっそ」
「……色々話したけど、余計な事をしたら駄目よ」
トリスの前に闇が現れて、来たのと同じぐらい呆気なく彼女は帰って行った。
「こっちの台詞なんだけどなー」
ヴァネッサを愛し子にしたのはこっちが先だし、デミトリに神呪を授けたのもあの子達がトリスと出会う前だし……
「……月光鳥の事はトリスに任せるとして、問題はヴァネッサの加護だよねー……」
悲しい思いをしないために授けたんだけどな……
結論が出ない問題に頭を悩ませながら水面を覗くと、デミトリが氷に覆われた毒瓶を吐き出していた。
「うわっ……! 早めに対策しないとやばそうだよートリス」