「合宿の方はどうしたものかな。さすがに泊りがけとなると、場所の手配もあるし、俺ひとりでは監督が難しい。ノクスやイリス先生も手伝ってくれると嬉しいんだけど、どうだろうか?」
「ええ、もちろん構いませんよ。生徒たちと一緒に合宿なんて楽しそうですね!」
「わ、私もいっぱい助けてもらったので、ぜひ手伝わせてください!」
どうやら2人も参加してくれそうだ。新任のルシアン先生にも声はかけてみるか。
そしてノクスの気持ちはわからなくもないが、実際に泊りがけの合宿となると教師側はあまり楽しんでいる余裕はあまりないからな。いろいろな手配をしたり、現地の調査や見回りなど普通の授業以上に準備をすることが多いのである。
合宿についてはまずはアノンに相談してみるか。こういうのは一教師の一存で決めることでもないからな。
いつもの勉強会が終わり、ノクスや生徒たちとわかれ、そのまま学園長室へ行く。
「構わぬぞ。演習場の方は申請をして他の者と調整をしてくれれば問題ないのじゃ。合宿所の方は妾の方でも手配することが可能じゃから、参加する生徒の数がわかったら早めに言ってくれればよい」
「そんなあっさり決めていいのか? もちろん問題を起こすつもりもないが」
アノンに長期休み中の勉強会と合宿のことを話したところ、あっさりと許可をもらえた。
「ギルのおかげで第一学年はようやく落ち着いたこともあって余裕が出てきたからのう。それにギルと妾がいればなんの問題ないのじゃ!」
「……アノンも来るつもりなのか?」
許可を取りに来ただけのつもりだったのだが、どうやらアノンも一緒に合宿へ来る気らしい。
「うむ。妾も多少は落ち着いてきたからのう。たまには気分転換をしながらギルや生徒達と交流を深めるのじゃ!」
「まあ、引率してくれる教師は多い方がいいから助かる。それじゃあ希望する生徒がどれくらいいるか確認してみるか」
アノンも多少は動けるようになってきたのは良いことでもある。まあ生徒達の安全の面で言えば、これ以上ないくらいに安全になったから良しとしよう。
なにはともあれまずは試験が終わってからだ。俺もそろそろ学期末試験の準備を始めるとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「それではこれより、基本魔術の試験を始める」
そして学期末試験の日。
ようやく第一学年の教師がまともになってきたと思ったら、今度は学園の試験や行事の準備で非常に忙しかった。普段の授業に加えて、二教科分の試験と初めて試験を作るノクスやルシアン先生の手伝いをしていたら、あっという間に時間が過ぎていったな。
さすがに忙しすぎて魔術の研究をしている暇もほとんどなかったぞ。今回で2人とも試験を作る経験というをしたから、次の試験は今回ほど忙しくはないだろう。
……それにしても少し働き過ぎな気がするのは気のせいだろうか。まあ生徒たちのやる気もあるようだし、教師としては嬉しい限りだからよしとしよう。
それに学期末試験が終われば長期休暇に入る。教師という仕事は長期休暇中もやることはあるのだが、通常授業よりはまだ余裕があるので、その際は魔術の研究に没頭するとしよう。
「指定された魔術を順番に的に当ててもらう試験だ。魔術の威力に加え、構成する速度や正確に的を当てられるかを見せてもらおう」
基本魔術の試験は筆記試験と実技試験に分かれている。基本魔術は知識も重要となるので、筆記試験と実技試験の評価割合は半々となっている。防衛魔術の方は対魔物や対人による実戦が優先されるので、3対7と実技試験の評価割合の方が高い。
実技試験は演習場にて行われ、特殊な的に魔術を当てるとその魔力が測定できるという道具だ。俺が学園にいたころは魔力も教師が測定していたから、やはりあのころからだいぶ技術は進んでいるようだ。
「よし、次。シルヴァン」
「は、はい!」
初めての学期末試験ということで、生徒たちもだいぶ緊張しているようだ。こればかりは誰でもそうだろう。