前期の授業が終わった翌日。
今日から生徒たちは長期休暇だが、俺たち教師にとってはそれほど関係なく、今日も学園へとやってきている。まずは今後のことを話すためにノクスと一緒に学園長室を訪れた。
「なんとか前期の授業は無事に終了したな。まあ、無事と言っていいかはわからないが……」
「あまりにもいろんなことがあったからねえ。しかもそれが全部ギークの入ってきたここ2~3か月の出来事だからすごいよね」
「元々それだけの問題があったということじゃから、ギークには申し訳なかったのう。生徒たちが無事に休みを迎えられたのじゃから、それが何よりじゃ」
「まあな。とはいえその分アノンの立場が少し不味くなっているのは事実だから、今後はもう少し秘密裏に動くとしよう」
エリーザの誘拐事件やイザベラの事件などアノンに直接の責任はないにせよ、この学園の教師が問題を起こしたり、生徒たちを危険な目に遭わせてしまったりと直接の被害者である生徒たちが俺やアノンを擁護してくれたからいいが、その親から見れば学園への不信感は募っているだろう。
もちろんだからといって問題のある生徒や無能教師をこのままにしておくつもりはないが、生徒たちやそのご両親に影響がないように気を付けなければならない。
「了解だよ。とりあえず、この長期休暇中に特にヤバそうな教師を排除していきたいね。ようやく第一学年の教師は問題なさそうになったから、第二学年と第三学年担当の教師の中で特に問題のある教師をピックアップしておいたよ」
「助かるぞ、ノクス。……それにしても、どれだけこの学園にはろくでもない教師が多いんだ?」
ノクスがピックアップしてくれた第二学年と第三学年の教師は2人ずついた。これで特にヤバそうな教師なのだから、他に問題ありそうな数を入れれば、学年の半数の教師が問題ありの教師になってしまうぞ。
そりゃ学園全体の品位が落ち、生徒たちが荒れるのも当たり前だ。
「面目ない限りじゃ……」
「アノンのせいではなく、前学園長の責任なのはわかっている。アノンがそう思うのなら、全力でこいつらの代わりになる教師を探してくれ。そればかりは俺ではこれ以上役に立てないからな」
「僕も情報は集められるけれど、そういった人材については少し厳しいからね。そっちは学園長に任せるよ」
「う、うむ。任せるのじゃ!」
俺も教師に適性がありそうで、この仕事を頼めそうなやつはノクス以外に心当たりはなかった。研究をしている時に知り合った優秀な者はすでに様々な要職に就いている者ばかりだ。決して俺の知り合いがノクス以外にいないというわけではないぞ。
ノクスの方は裏の人材は相当詳しいが、表で活躍している人材には直接接触する機会が少ない。それに魔術を十分に使用できる者の多くは裕福な貴族が多いからな。
「可能なら特に問題のあるこの教師たちについてはこの長期休暇中に入れ替えたいものだな」
「そうだね。それなら生徒たちへの負担も少ないし、新しく入ってくる教師側にも準備できる猶予があるからね」
「うむ。こちらを第一優先として早急に進めるのじゃ。ギークの基本魔術の代わりの教師については本当に最後でいいんじゃな?」
「ああ。むしろ今後もこのまま2教科を受け持っても大丈夫だぞ。代わりを探しにくいそっちを優先してくれ」
俺も2教科を受け持つことについては慣れてきた。こっちの方は後回しでいいから、アノンの方にはこの4人の代わりを探してもらうことに尽力してもらうとしよう。
アノンも生徒たちが長期休暇に入ったことで、これまでよりも動けるようになる。俺と違っていろんな人脈のあるアノンなら、教師に適性のある者に声をかけられるだろう。そしてその人材をノクスに調べてもらえれば安心だ。俺の方はその特に問題のある教師をノクスと一緒に調べ、秘密裏に排除するとしよう。
ふむ、完全に研究三昧の長期休みとはいかなそうだな。
「あとは他の学園の生徒たちの情報も少しだけ集めてきたよ。魔術競技会の参考にしてね」
「さすがだな。……毎回思うんだが、いったいどうやってこういった情報を集めてくるんだ?」
ノクスが集めてくれた資料には魔術競技会に参加する他学園の中で優秀な生徒たちの情報が記載されていた。
この学園にいる者の情報なら直接接触する機会もあるだろうけれど、他学園の生徒の情報なんてどうやって集めてくるのだろう?