「皆さん、先ほどの服屋ではありがとうございました。私はあまりああいったお店には行かないので、とても楽しかったです」
「とんでもないです。私もあの店にソフィア以外と行くことはあまりないので、とても楽しめました」
「ええ。みんなでいろんな服を試着させてもらって、とても楽しかったですね!」
この店の予約時間になるまで服屋では様々な服を試着していた。
そして結構なお値段だったにもかかわらず、それぞれが何着か購入していたからな。
「ソフィアさんのいつものメイド服姿見も綺麗ですが、可愛らしい系の服もとっても似合っていましたね」
「私もそう思いました。メイド服も素敵ですが、ああいった可愛らしい服もすごくよかったです」
「そ、そんなことはないぞ! わ、私にはああいった服は似合わない!」
シリルとイリス先生の言葉を顔を真っ赤にして否定するソフィア。
「そんなことはないわ。ソフィアによく似合っていたわよ。ねえ、ギーク教諭?」
そんな中でエリーザが俺に話を振ってくる。
「……まあ、そうだな。普段のメイド服もいいと思うが、ああいった服もソフィアに似合っていたと思うぞ」
「っ!? ……あ、ありがとうございます」
確かにソフィアは学園の中でも外でも同じメイド服だったから、それ以外の服を着ている姿は初めてみたな。店員さんが可愛い系の服ばかりすすめていたが、確かにそういった服もよく似合っていた。
というか、それについてはさっきの店の試着室前で伝えたのだがな。
唯一ここにいる男性だからと、服を試着するごとに全員からどの服が良いかを質問され続けた。それについては完全に個人の意見だからと念のため付け加えつつ、どっちの服が似合うかを選択し続けた。
試着室の前で待っている間は男の俺としてはだいぶ肩身が狭かったぞ。まったく、俺の意見なんてどうでもいいだろうに……。
「それにしても、ギーク先生は私たちのいろんな私服を見ていた時よりも魔道具を見ていた時のほうが楽しそうにしていましたし、今もいつもの学園と一緒の態度なんておかしいです」
「そうですね、もう少し嬉しそうにしていても罰は当たらないと思います」
突然のシリルの言葉にエリーザまで援護をしてくる。
「……いや、そんなことを言われてもな」
もちろん俺も生徒たちとどこかへ出掛けたりするのが楽しくないというわけではないが、今は気にしていることの方が多い。
この世界ではあまり問題ないかもしれないが女生徒たちと遊びに行くというのは教師としてどうなのかとか、今回はイリス先生の個人的なお礼だが特定の生徒ばかり誘っていいのかとかな。
……それに加えて街を歩いている時から男性の視線がすごい。第三王女であるエリーザがいることに気付いたからというわけではなく、単に綺麗な女性が集まっているからだろう。こんな状態で純粋で楽しむのは難しい。
魔道具屋で魔道具を見ていた時は少しだけそのことを忘れられていただけである。
「あら、もしかしてイリス?」
「えっ……ラ、ラルシュさん!?」
雑談をしながらランチを楽しんでいると、俺たちのテーブルの横を通っていた女性がイリス先生を見て足を止めた。
どうやらイリス先生の知り合いのようだ。シリルとエリーザはまだ何か言ってきそうな雰囲気だったから、ちょうどいいタイミングで来てくれてかもしれない。
「久しぶり~学園を卒業して以来じゃない!」
「え、ええ……」
イリス先生の知り合いらしき女性は赤茶色のロングヘアを縦ロールにした20代前半の女性だ。前世ではあまり見ることのない髪型だが、こちらの世界ではありふれた髪型である。
このお店はそこそこ高価なこともあって、訪れているお客の大半は貴族の者だ。それに加えてイリス先生と同じ学園に通っていたということは貴族の令嬢である可能性が高そうである。
「皆様、いきなりお邪魔してすみません。私はイリスの同級生でして……えっ! ま、まさかエリーザ=バウンス第三王女様!?」
ラルシュという女性が俺たちに気付いて会釈をすると、エリーザの存在に気付いたようだ。すぐに第三王女だと気付いたようだし、結構階級の高い貴族なのかもしれない。
エリーザはわざわざ立ち上がって、ラルシュさんがしたの同じように軽く会釈をした。
「初めまして、エリーザ=バウンスと申します。イリス教諭には学園でいろいろと教えていただいております」
「き、教師!?あのイリスが!?」