【書籍化】一般兵士が転生特典に『無限再生』を貰った結果、数多の美女に狙われた
第4章 世界四大厄災
第62話 俺+悪友✕2…………+美少女✕3??
今回ギャグに突き抜けますわ。
頭空っぽでお楽しみください。
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———疲れた。
穏やかな陽の光が差し込むアシュエリ様の部屋にて、俺はソファーに座りながら膝に肘を付きつつ手と手を組むと、その上に顎を乗せて床をぼんやりと見つめつつ、胸中でそんな言葉を呟いていた。
セラが我が国アズベルト王国に住み始めてから早1ヶ月。
すっかりセラも此方の生活に慣れ、持ち前のとんでもない頭脳で此方の言葉をほぼ完璧にマスターしてしまった。
また、公にはされていないものの、魔法師団と騎士団にはセラがこの国にいることを伝えられたため、今では魔法使いの鍛錬にも顔を出して教鞭を奮っている。
アシュエリ様もより戦術やらの勉強に精を出しているらしく、エレスディアと俺も相変わらず騎士団の鍛錬に励んでいた。
そのため、比較的直ぐにいつもの生活に戻れる……何て幻想を抱いていました。
ところがどっこい。
女3人寄れば姦しい……何て言葉もあるようにいつもの生活は戻って来る事はありませんでした。
だって今も……。
「ちょっと、アンタが何でここにいるのよ? アンタは今日魔法師団に用事があるんじゃなかったの?」
「ふふっ、それは午後からですよ? ですからフリーな午前中にここに居て何が悪いのですか?」
「……五月蝿い」
絶賛エレスディアが眉を吊り上げてセラを見下ろし、セラもセラで何処か挑戦的な笑みを浮かべて言い返していた。
ただ、今日はまだマシな方だ。
今は俺が巻き込まれていないのはもちろん、普段はあの2人の中に参戦するアシュエリ様がお日様に当たってぼーっとしているのだから。
「は、はぁ? アンタには教えて欲しいって魔法使いが沢山いるのだから、そっちに行ってなさいよ」
「嫌です。私は彼等といるより、ゼロさんといる時の方が100倍楽しいですから」
これを見ても分かる通り、どうにもエレスディアとセラは反りが合わないらしい。
でもその割に俺が居ない時は仲良くしているので、もっと意味が分からない。
もちろん当初は『え、2人とも俺のこと好きなの?』何て思ったりして、ドキドキワクワクしていたよ。
今だってセラが思わせ振りな言葉を吐いてるじゃん?
寧ろ今まで俺がしてきたことを考えたら惚れられてもおかしくないって客観的に思うわけですよ。
でも、いざ俺がキメ顔で頭を突っ込めば……。
「ふっ、2人とも俺のために争わないでくれ。俺はこの通りここにいるじゃないか」
「……キモッ」
「……ごめんなさい、ゼロさん。ちょっと鳥肌が……」
「君たち酷くない?? 俺だからって何でもかんでも好き勝手言って良いと思って……おいコラ、その『え、駄目なの??』みたいな顔は何だ!?」
こんな感じでエレスディアからは冷たい視線を、セラからはマジで引いたような表情を向けられ……欠片も俺への好意を感じないやり取りを行うのである。
てか好きな人にこれほど冷たい目で『キモッ』とか言う奴いないだろ。
しかも『鳥肌が……』とかガチでドン引きしているじゃん。
何て俺が内心ツッコんでいる傍ら、『え、駄目なの?』的な表情を浮かべていたエレスディアが口を開く。
「え、駄目なの?」
「エレスディア貴様ぁぁぁぁぁ!! 顔に出すだけに飽き足らず……口にまで出してしまうとは! 許さんぞ、駄目に決まってんだろ! これにオーケーを出す奴は生粋のドM……おっと、ごめん。1人いたわ、眼の前に」
「ぶっ殺すわよ?」
「ごめんなさい」
殺意すら感じる極寒の視線に流れるような土下座を繰り出す俺。
こんな事が毎日続けば……当然疲れる。
寧ろ疲れないわけがない。
———と、いうことで。
「ちょっと、遊びに行ってくるわ」
俺は土下座から立ち上がり、一転して爽やかな笑みと共にそう告げる。
すると、3人が驚いた様子で俺に顔を向けてくるではないか。
「あのゼロが遊びに……? 何処の女と遊ぶのよ?」
「……女?」
「え、そうなのですか、ゼロさん?」
「君たちの頭の中で俺がどんなイメージなのかよーく分かった。1度引っ叩いてやるからそこ並ぼうか」
コイツら俺をヤ◯チンとでも思ってんのか?
童貞でお前らと団長以外に碌な女性の知り合いがいないこの俺を?
寧ろ俺は遊び人が居たらぶん殴る側の人間ですが?
「え、違うの?」
「違うに決まってんだろ。フェイとザーグと遊ぶんだよ」
「あぁ……あの2人ね」
俺が兵士時代の同期で友達の名前を挙げれば、2人とそれなりに交流があったエレスディアは納得げに頷いている。
対してセラは仕方ないが、1度会ったことのあるはずのアシュエリ様まで頭に疑問符を浮かべて首を傾げていた。
「アンタ、アイツらとまだ繋がってたのね」
「最近やっと上級になって懐も潤ってきたから、ちょっくら遊ぼうってよ。てかアイツらも大概物凄いスピードで出世してるよな」
そう、フェイもザーグもまだ1年程度しか経っていないというのに、既に上級騎士にまで上り詰めたのだ。
俺とエレスディアは例外としても、十分以上に早い出世だった。
「———てことで、まぁちょっくら行ってくるわ! 帰りはそんなに遅くなんない予定だからまた後で!」
これ以上ここに居たら面倒な予感がしたので、俺は慌てて飛び出す。
そのせいで———3人が何やら不穏な表情を浮かべているのに全く気付かないのであった。
「———お、我らが出世頭のゼロが来たぞ!」
「久し振りだな、ゼロ!!」
「おー、フェイもザーグもおひさー」
俺が急いで待ち合わせ場所で、王都の中心でもある噴水の前に向かうと……既に私服姿のフェイとザーグが居た。
2人とも俺と一緒であんまり変わってない。
マジで久し振りだな……何て俺が考えていると。
「おいゼロ……上手く女性陣にバレずに来れたか? これがバレたら軽蔑だけじゃ済まないぞ?」
フェイが突然キョロキョロと辺りを警戒した面持ちで頻りに見回したかと思えば、顔を寄せてコソコソと声量を下げて話し始めた。
そんな彼に、俺はチッチッチッと人差し指を揺らして渾身のドヤ顔を繰り出す。
「ふっ、おいおいフェイ君……俺を誰だと思ってる?」
「誰なんだよ」
「いや分からん。ノリで言っただけ」
「拾った俺が馬鹿だったよッ!! ……それで、どうなんだよ?」
気を取り直した様に訊いてくるフェイに、俺はグッと親指を立てた。
「バッチリだ、バレてねーよ。ちゃんとつけられてないか気配を探りつつ、【縮地】も使って超遠回りで来たからな!」
「おぉ……何か高等技術の無駄遣いしてる奴がいるけど……よし、ナイスだゼロ! これで心置きなく楽しめるな!」
「おうよ! 楽しみすぎて夜も寝れなかったぜ!」
「……結局俺達は何処に行くんだ?」
ワイワイ盛り上がる俺達を他所に、口が軽いために1人だけ知らされていないザーグが不思議そうに首を傾げる。
そんな彼に、俺達は辺りに人が少なくなったのを鑑みて、もう良いかと目配せをすると。
「「可愛い店員さんが、疲れた男へ癒しを提供してくれる神店———『甘々治癒処』だっっ!!」」
「おおおおおおお!!」
目を輝かせながら告げる。
同時にザーグも心当たりがあるのか、歓声を上げた。
———甘々治癒処。
名前はヘンテコであるが……その名前に相応しい場所である。
まずその店は料理を提供しているのだが、それがまぁ美味いらしい。
幾つもの高級店を回ったことのある美食家が有名な高級店と遜色ないレベルの料理だと大絶賛したとの噂すらあるくらいだ。
しかしここからが本番。
ご飯を食べ終わった後は、店員である美女達が疲れた男達を過度なエッチなこと以外でとことん甘やかしてくれる。
例えば客指定の衣装で膝枕をしてくれたり、耳かきをしてくれたり、ゲームをした遊んだり……などなど、客の要望によって多種多様なことをしてくれるらしい。
控え目に言って最高。
男の夢を詰め込んだ、まさしく癒しを与えてくれる場所である。
系列にエッチなお店もあるらしいが……流石にハードルが高いということで行くことは控えたのはここだけの話だ。
決してヘタれたわけじゃない。
何て考えていると……路地裏を突っ切った所に『甘々治癒処』と書かれた看板の掲げられた店が現れる。
同時にフェイが俺とザーグの前に立って拳を握って声を張り上げた。
「お前ら、楽しみか!?」
「「おう!」」
「癒やされたいか!?」
「「もちろん!!」」
「さぁ———桃源郷にいざゆかん!!」
「「いざゆかん!!」」
俺達は期待を胸を昂らせながら店内に踏み込む。
店内はキッチンカウンターやテーブル席が幾つかある他に、奥には幾つもの個室があり……男女の楽しげな声が聞こえてくる。
「……す、すげぇ……」
隣でフェイが呆然と零すが、俺も激しく同意するぜ。
反対のザーグを見れば、圧倒されている様子でキョロキョロとしていた。
「あらあら〜このお店は初めて?」
そんな挙動不審な俺達の下に、微笑ましげな笑みを浮かべたドレス姿の1人の女性がやって来る。
年齢は30前後だろうか……大人の女性の雰囲気を纏っており、施設に居たことで碌に女性と話していなかった2人がビシッと固まってしまう。
ただ、俺もエレスディア達と居なかったら普通にやられてたかもしれない。
ふっ、俺を舐めるなよ……!!
「は、はい、初めてです」
「フフッ、緊張しなくてもいいのよ〜?」
「ウッス。大丈夫っす」
無理でした。
緊張しないなんて、童貞の俺が出来るわけありませんでした。
そんなガチガチな俺達を気遣ってか、大人のお姉さんが優しげな声色でリードしてくれる。
「それじゃあ、早速座ってもらおうかしらね〜? どこがいいとかある?」
「いえ、特にはないです」
「おっけ〜。じゃあ貴方達は———彼女達に案内してもらってね〜」
「はい、分かりまし——————は?」
俺は朗らかな笑みを浮かべる彼女の後ろにいつの間にか立っていた3人の少女に目を向け———思わず声を漏らした。
え……は、え?
な、何で……いやマジで!!
な、何がどうなって……。
頭の中で無限に疑問符が増え、顔を真っ青にする俺の姿に、フェイとザーグも異変に気付いたらしく前方を向いて……俺ほどではないものの、顔を青くして固まった。
何故なら———。
「「「———いらっしゃいませ、ゼロ(さん)?」」」
この店のドレスを着た、つい先程別れたはずのエレスディア、アシュエリ様、セラの3人が、目の全然笑っていない柔和な笑みを浮かべて立っていたからである。
魔力は全く出てないのに、不思議と周りにオーラが見えた。
「……は、ははっ……や、やぁ御三方……。ど、どうしてここが……?」
もう俺には、乾いた笑みを浮かべながらこう言う他なかった。
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第4章開幕です!
さぁ初手からやらかすゼロ!
一体どうなる!?
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