――『薔薇色の黄昏』に関する話を終えた後、アルベール国王は俺とレティシアをなんとも優雅な労いティータイムに誘ってくれた。
その席では俺とレティシアの惚気話を根掘り葉掘り聞かれ、
「それでそれで、二人はどこまでイッたのぉん?」
「子供はいつ頃作るご予定? 早く孫の顔が見たいわぁん♥」
……なんて言い出す始末。
アンタは俺らの保護者かなにかですか?
っていうか孫って、それだとアンタ老けてもないのにお爺ちゃんになっちゃうんですが、それでいいんですかねぇ?
などと思いつつ、俺は美味い紅茶をズズズと啜りながら下世話な質問に対して適当に受け答えしていた。
その隣でレティシアは時折、顔を赤くしたりしていたが。
そんなこんなで――帰路。
「はぁ~あ、面倒くさかった。結局大した用事でもなかったな」
俺とレティシアは学園へと向かい、徒歩で城下町の中を歩いていた。
王城の従者たちは行きと同じように帰りも馬車で送ってくれようとしたが、俺たちは「せっかくだから復興した城下町の中を歩いて帰りたい」と辞退。
絶賛、夫婦二人で帰り道デートの真っ最中というワケだ。
賑わいを取り戻してる通りの中を、俺はレティシアの歩幅に合わせて進むが――
「……ね、ねぇ、アルバン……?」
「ん? どうしたレティシア?」
「そ、その……アルバンは、私との子供……は、早く欲しいって、思ったりする……?」
レティシアは俯き気味に、なんとも気恥ずかしそうな表情をして尋ねてきた。
――俺は思わず、目が点になる。
一瞬、頭の中が無限に広がる大宇宙になるが、すぐに顔の筋肉を引き締めてキリッとした目つきに己を調整。
「思ったりする。めっちゃ欲しい。絶対欲しい。すぐに欲しい」
「す、すぐに……!?」
「あ、いや、ゴメン。すぐにはダメだな。少なくとも学園を卒業するまでは待つって決めてるし」
身重にしてしまう=レティシアの自由を多少なりとも奪ってしまう、だからさ。
最低でも学園生活を送る間は、レティシアに伸び伸びと過ごしてほしい。
っていうか学園生活に限らず、これから先もレティシアが望むレティシアの生き方を歩んでほしい。
だからレティシアが子供を作りたくないというなら、俺はその意見を尊重する。
まあでも、俺って一応領主だし、本当に最後まで実子ができないのはちょっと困ったりするけど。
「でも、俺とレティシアの子供だろ? 絶対に可愛いって。可愛くて強くてキュートで最強な、怪獣みたいな無双チャイルドになるって、マジで」
うんうん、と頷きながら言う俺。
そんな俺を、少々呆れつつ照れた顔で見つめてくるレティシア。
「……アルバン、あなたってそんなに子供が好きだったかしら……?」
「え? いや、全然? 子供っていう広い括りで言うなら、むしろ嫌い――とまではいかずとも苦手かも?」
「…………あなたが将来酷い父親にならないか、なんだか心配になったきたわ……」
「え~、ならないって。レティシアとの子供ならちゃんと死ぬほど可愛がるって」
だってレティシアを悲しませたくないもん。
それに好きか嫌いか関係なく、大人は子供に無償の愛を注がなければいけないって理解してるし。
だから無問題。
――なんて会話を俺たちがしていた、その時だった。
ボスッ、と俺の背中になにかがぶつかってくる。
アルバンとレティシアに子供ができたら、どんな子になるんでしょうねぇ……((((;゜ω゜))))ガクガクブルブル