―― 銀河連邦主星イージナ ホテル『クルメン』 3701号室
「……それは本当のことなのですね、メンタードレーダ議長閣下」
『はい、本当のことですダイアルビー嬢。ドーントレス軍将軍の言葉を信じるなら、現在惑星ドーントレスは危機的状況にあります』
「具体的にはなにが起こっているのでしょうか?」
『無数のモンスターが地表に現れ、無差別に人々を襲っているようです。現在ドーントレス政府軍がモンスターの排除にあたっていますが、戦力がまったく足りていないとのことです』
「モンスター……どういうことでしょうか?」
『ダイアルビー嬢はご存じありませんか? 惑星ドーントレスには、ダンジョンと呼ばれるモンスターの棲む穴が複数あるのです。貴女のお父上、総統閣下はそこを秘密裏に管理し、色々と役立てていたようですが』
「申し訳ありません、わたくしはまったく聞いたことがございません。お父様がそのようなことを……」
『もとは「ゼンリノ師」という人物がそうするよう進言したようです』
「ゼンリノ師……! やはり彼は裏のある人物だったのですね!」
『もっとも、貴女のお父上のところにいた「ゼンリノ師」は、ミスターアイバが倒してしまいましたがね』
「……あの失礼な男性ですわね。アンタッチャブルエンティティを名乗っていた……」
『前にもお話ししましたが、彼はアンタッチャブルエンティティなどという虚像を大きく超えた人物ですよ。さて、話を元に戻します。現在惑星ドーントレスはモンスターの氾濫により危機的状況にあります。そこで、我々はもともと派遣するはずだった調査艦隊を、そのまま救援艦隊として向かわせることにしました』
「ありがとうございます」
『ですが、そこで問題があります。将軍によると、現在ドーントレスの総統府は連絡がつかない状態にあり、貴女のお父上の安否すら確認できないとのことなのです』
「えっ!? そんな……お父様が……」
『落ち着いてください。お父上の生死を含め、惑星上でなにが起きているのかも正確に把握できていない状況なのです』
「は、はい。取り乱して申し訳ありません」
『ここからが重要なところですのでよく聞いてください。以上のことから、救援艦隊が現地に行くにあたって、惑星ドーントレスの政府関係者や軍を掌握できる人物、つまり惑星ドーントレスの臨時の代表者が必要になります』
「それは、もしかして……」
『ええそうです。ダイアルビー嬢、貴女に救援艦隊への同行をお願いしたいのです。非常に辛いことになるかもしれませんが、貴女以外にそれを為せる人間はいないのです』
「……」
『なお、先に話の出たミスターアイバも現地に救援に来てくださることになっています。彼がいれば、惑星ドーントレスのこの件も短期間で解決が見込めるでしょう。ですが貴女がいなければ、その後の惑星ドーントレスの舵取りができなくなります』
「……」
『いかがでしょうか、ダイアルビー嬢』
「……わかりましたわ。救援艦隊に同行しドーントレスに戻ります。お父様の消息は絶対に突き止めなければ、そしてなにをなさろうとしていたのかも私は知らなければなりません」
『大変結構です。我々もそれは知りたいところです。救援艦隊の出発は24時間後になりますので、急ぎ出立の準備をなさってください』