「話は大体分かったけど……なんでまた私の領域に来てるのよ」
「リスコが余計な事を言ったせいでデミトリが色々と気付いてしまったわ……一旦追求しないでほしいって伝えたからヴァネッサちゃんに教えたりしないと思うけど、念の為ミネアも状況を把握してた方が良いでしょう?」
「それは……そうね、教えてくれたのは正直ありがたいわ。あの探究馬鹿は本当に余計な事をしてくれたわね……」
異界の事を教えるだけでも大問題なのに、トリスティシアから聞いたデミトリの反応が本当にそのままなら、主神の存在にまで勘付かれてるじゃない……。
「デミトリの運命の糸が絡まってる事について説明しようと思って顕現したのに、リスコのせいでそれどころじゃなくなっちゃったわ……」
「運命の……運が悪いと言うか、偶然にしては異世界人に会いすぎてると思ったけど理由があったのね? ヴァネッサを見つけてくれたきっかけっぽいけど今の状態は流石に可哀想だし……原因はやっぱりあの準神だったの?」
「ディアガーナを問い詰めた後、シャーナに確認したから間違いないわ」
簡単に確認したって言ってるけど、運命神のシャーナって物凄い引き篭もりじゃなかった? 良く捕まえられたわね……。
他の神々が『トリスティシアが神界に帰ってきた』って騒いでるみたいだけど、デミトリのために飛び回ってるなら噂になるのも納得だわ。
「魂を正しくこの世界の輪廻の循環に乗せられないまま転生させられたせいで、デミトリと同じ世界から来た異界の魂と運命の糸が重なりやすくなってるらしいわ」
「かなり面倒な状態ね……それって転生しちゃった後でも直せるの……?」
「……一応シャーナに調べてもらってるわ……」
すぐにどうこう出来る問題じゃないならしばらくはあのままなのね……。
「ヴァネッサと出会う前は別に異世界人と引かれあってなかったみたいだけど……?」
「それは複数人分の神呪をデミトリに押し付けたあの準神が、ディアガーナにバレないように魂に封印を掛けてたせいよ。封印自体はデミトリが死の淵に立った時無理矢理解除されたみたいだけど……」
「あー……ヴァネッサを見守ってた時に聞いたけど、急に前世の記憶が蘇って魔力が増えたって言ってたのはそう言う事だったのね……」
「本当にふざけた真似をしてくれたわ……ディアガーナが殺してなかったら私がーー」
「ちょっと!! 領域がめちゃくちゃになるから落ち着いて!」
怒ると手をつけられないんだから神力をそんな気軽に解放されると困るわよ……。
それはそれとして運命神に運命の糸について確認して、探究神からデミトリ守って、命神を問い詰めてなお愛し子の為に頭を悩ませるトリスティシアの姿に懐かしさを感じる。
前の愛し子を失って、封印ごっこをし始める前の状態に戻りつつあるのは良い傾向だと思うけど……。
「……もう悪神の振りは止めたの?」
「わ、私は振りなんてそもそもしてないわ」
素直じゃないのは今も昔も変わらずね。
「とにかく。リスコを見つけて罰を与えてから、この世界の神と交流してる異界がどこなのかを吐かせて、今後デミトリが出会うかも知れない異世界人の情報を集めるためにヴィーダ王国近辺に異世界人を呼んでる神々を調べーー」
「トリス、深呼吸!」
早口でこれからやることを羅列し始めたトリスティシアを止めるために、顔を両手で掴んで視点を無理やり床から私の目線に合わせた。
「トリスが一杯一杯になったら元も子もないでしょ?」
「私は、別に……」
「焦ってないとは言わせないわよ? そうやってなんでもかんでもひとりで背負い込んでも、良い結果には繋がらないのはトリスが一番良く知ってるわよね?」
「……」
失くした愛し子を引き合いに出すのは正直気が引けるけど、これ位言わないとまた暴走しそうだから覚悟を決める。怒ったら私じゃ手に負えないから凄く怖いんだけど……。
気不味い沈黙が続いた後、思いの外しおらしくしゅんとしたトリスティシアが低い声で呟いた。
「分かってるわよ……」
「もう…デミトリに何かあったらヴァネッサが困るから私も協力するから」
私の愛し子じゃないけど、デミトリの事が心配じゃないって言ったら嘘になるし……。
「相談すればサシャとフリクトも手伝ってくれると思うわよ? 焦らずに協力して対処すれば大丈夫よ」
「……ありがとう」
「!?」
トリスティシアが私に感謝した……!?
「ず、随分と素直じゃない。何か変なものでも食べたの?」
「……感謝の気持ちは言葉にしないと伝わらないってデミトリが言ってただけよ」
頬を赤らめながら膨れさせたトリスティシアの顔を離してあげる。ちょっとだけデミトリにのめり込みすぎてないか心配だけど……何もかもがどうでも良くなってた頃と比べたらこっちの方が断然良いわね。
「何よ……?」
「何でもないわよ! それよりさっきの話を聞いてて気になったんだけど、デミトリって別に異世界人とか関係なく……結構な頻度で残念な人と遭遇してない? それもあの準神のせいなの?」
「シャーナ曰く主神の思し召しらしいわ……」
えー……。
「……期待されてるって事?」
トリスティシアの表情に影が落ちる。
「分からないわ。どちらかと言うと……都合が良いだけかもしれないわ」
私達に世界を見守らせて極力介入しないようにしてる主神が、使徒に選ぶ条件に合う人間なんてほとんど居ない。
そう言う意味だと輪廻の循環から外れてて、少し運命の糸が絡まっちゃってるけど比較的自由に動ける特異な存在になっちゃってるデミトリは、トリスティシアが言う通り都合の良い存在なのかも知れないわね……。
「……変な質問をして悪かったわ。分からない事と、私達じゃどうしようもない事について今悩んでも意味がないわ!」
「ミネア?」
「私は今異世界人の愛し子を見守ってる神が居るのか、調べるのを手伝ってもらえないかサシャとフリクトに聞きに行くから。トリスはリスコの馬鹿を探してきなさい」
「……ふふ、分かったわ。ありがとうミネア」
「素直な態度を取られるとむず痒いからもう感謝は良いわよ!! 気持ちは伝わったから……」