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A Baby’s Crawling Struggle in Another World – Chapter 216

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足を空踏みして。

目を開いた。

身じろぎすると、金髪の女性にじろりと睨み下ろされた。

おもむろに手が伸び、頬を摘ままれる。

まだ声を出していないんだけど、と抗議したくなる。

ゆっくりタベアが奥に向かった、らしい。

呼ばれたようで、小走り寸前の早足で、メヒティルトが出てきた。

ソファに寄って、おくるみの首元を寛げてくれる。

気がついてみると僕は、寝汗で濡れそぼっているのだった。

「よくお休みでしたね。一刻半くらい、お眠りになったみたいですよ」

「ん」

汗まみれの衣服を、着替えさせられる。

抱き上げられ、トイレに連れていかれる。

ソファに戻り、湯冷ましを飲ませてもらう。

当番のメヒティルトがそんな奉仕をしている間、ナディーネとカティンカも出てきて、離れて見守っているようだ。

妃とタベアも、あまり関心の表情は作らないまま、ちらちら眺めている。

そのまま僕は、おくるみには入れられず、ソファの背にもたれて座らされた。

隣から手が伸びてきて、また頬を摘ままれた。

「大人しく、しているのだぞ」

「ん」

とりあえず、おくるみ拘束は免除されたらしい。

まだ昼下がりの暑さが残る時間帯で、汗疹の心配が軽減されるのは助かる。

タベアから手で指示されたらしく、メヒティルトは下がっていった。

妃はまた、読書に戻る。

座り姿勢で少し頭が高くなって、わずかながら木の板を覗くことができるようになった。

ちらちら読みとれる文章は、どうも物語の類いらしい。

以前ヴァルターに訊ねてみても、そういう種類の本は図書館にほぼないし、市中で売られていると聞いたこともない、という返答だったが。

質問したくても、発声を禁じられていてできない。

ましてや、読書の邪魔をしたらどんな仕打ちが返ってくるか、想像するだに恐ろしい。

思っていると、タベアが茶を運んでくるのが見えた。

妃の顔が上がり、カップを受けとる。

またとない、希少な機会と思われる。

「ばぶばぶ」

「……む」

「だあだあ」

「な?」

「ばぶばぶばぶ」

「ああ、わざとらしい。うっとうしいわ!」

「ひゃう」

カップを卓上において、しこたま頬をつねられた。

言葉にするのが薄気味悪いと言うから、赤ん坊らしい声にしたのに。

言われた通り大人しく、この場を動かないでいるのに。

理不尽だ。

「赤子が赤子の真似をして声を出すなど、ますます気味悪いわ」

――では、どうしろと?

精一杯可愛らしく首を傾げてみせると、うんざりと顔を顰められた。

額に手を当て、しばし黙して。それから、ふん、と鼻が鳴らされる。

「それほどに、薄気味悪い言葉を出したいか」

「ん」

「其方次第では、必要な範囲なら許してもよいぞ」

「ん?」

「其方が持つ、貴重なものを提供すると申すならの」

「……ん?」

――貴重なもの?

―――。

思い当たらない。

そもそも僕は、ほとんど私物を所有していないのだ。

私室にあるのも、王宮からの支給物以外では、図書館から借りてきた本とわずかな衣類だけ、のはず。

今度は演技抜きで、首を傾げていると。

ぎろり横目で睨み、妃の口角がわずかに持ち上がった。

「秘密のものを、持ってこさせよ」

「……は?」

「惚けるでない。数日前、こっそり調理見習いに作らせていた菓子じゃ」

「……ああ」

小さな手を、ぽんと打ち合わせる。

思い出した。

「ぱんけーき?」

「何というか知らぬ。こっそり作っていたものよ」

「よく、しってた」

「侮るでない。調理室の情報は、筒抜けじゃ」

「へええ」

「見習いに問い糾させても、これは秘密、ルートルフ様の許可なく作れない、などととぬかしたそうな」

「わ」

クヌート……。

こちらとしては半分冗談だったんだけど、律儀に言いつけを守ったらしい。

「わかった、しかたない。とくべつ、つくらせる」

「うむ」

たいしたものではないのだけど、勿体をつけることにする。

ナディーネを呼んで、調理見習いへの伝言を頼んだ。

先日のパンケーキを、十五個。

これからだとすぐに作れないかもしれないが、できるだけ早く、ということで。

侍女が出ていくと。

こちらの女主人の顔は、何処か満足げになっていた。

それにしても、と思う。

「ちょうりしつ、じょうほう?」

「当たり前じゃ、その辺には目を光らせておる。特に調理室は、重要監視地点じゃからな」

「そなの?」

「他の妃がこっそり美味いものを作らせていたら、腹立たしいであろうが」

「わ……」

「どの妃も、あそこには自分の息のかかった者を入れておるぞ」

「正妃殿下だけは、そういったところにご関心はないようですけどね」

「そうであったな、あの方は」

侍女の付言に、妃は苦笑いになった。

そういった点でも、正妃は浮世離れした存在というもっぱらの認識らしい。

「それでも、執務棟側担当の見習いにまで観察を怠らなかったのは、妾の手の者だけじゃ。日頃の指導の差じゃな」

「はあ……」

妃間の抜け駆けを見張る目的なら、確かに後宮側の調理担当に気をつけていれば十分だろう。

いや、しかし……。

思ってしまう。

――その情熱、もっと有益なものに向けられないのだろうか。

戻ってきたナディーネの報告によると。

クヌートはすぐ指示に従うということだが、おそらく夕食準備前には材料を揃えるのが精一杯、実際の調理開始は夕食後になるという。したがって、出来上がりをお届けするのは食後デザートとしても少々遅い頃合いになりそう、という返答だ。

指示がかなり遅かったせいなので、その辺は仕方ない。

聞いて、妃も黙って頷いている。

加えてナディーネから、調理場の離乳食担当と相談してきたという話もあった。

「ルートルフ様の現状をお伝えしたところ、今日の夕食には間に合わないが、明日からはお食事内容を考慮する、という返事でした」

「ん」

妙に強ばった顔で報告する侍女に、頷き返す。

聞いている妃からもベテラン侍女からも口入れはないので、その点問題はないということなのだろう。

ナディーネは下がらされ、妃は読書に戻る。

かたん、かたん、とページを捲る音だけが続く。

またやることがなく、僕はぼんやり横からそれを眺めるばかり。

ややしばらくして。

いきなり手が伸びてきて、鼻を摘ままれた。

「むぎゅ」

「覗き見、気になるわ」

書面から目を離さないまま、宣われた。

邪魔にならないように、声も抑えていたのに。

理不尽だ。

A Baby’s Crawling Struggle in Another World

A Baby’s Crawling Struggle in Another World

赤ん坊の異世界ハイハイ奮闘録
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Native Language: Japanese
Rudolf Berushuman, the second son of an impoverished baron, suddenly awakens to an adult-level consciousness at just six months old. At the same time, he senses the presence of “memories” from a world different from the one he now lives in, whispering to him. Panic sets in. Everyone in this world possesses a seemingly pathetic, magic-like “blessing.” Upon learning of his real older brother’s existence, Rudolf enlists his brother’s power and sets out to save their territory.

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