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A Baby’s Crawling Struggle in Another World – Chapter 245

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「オオカミとり」に飽きてきた一同に、次は「七ならべ」というゲームを教えると、また王女王子は熱中に戻っていた。

しかしこちらでは数の順番を即座に判断できないとまごつくため、パウリーネがたびたび困惑する場面が出てくる。ウィリバルトと、札を動かす手の速さの差が歴然だ。

しまいには、王女の口から「うーー」という唸りが漏れてきた。

「何だってウィリバルトは、そんなに速くできるの!」

「ん?」

「れんしゅうすれば、はやくなる、おもう」

ウィリバルトは、何を言われているのか分からないとばかり、ただ首を傾げている。

僕が口を入れると、き、とパウリーネは僕にきつい視線を向けてきた。

「練習します。このカータ? 売りなさい!」

「ねだん、たかい。というより、まだねだんつけられない」

こういう娯楽品の価格基準については、まったく見当もつかないのだ。

少なくとも紙一枚が百ヤーヌを越えるだろうという予想に照らして、原材料費だけでも七百ヤーヌ以上、おそらく最終的に千ヤーヌをはるかに超えて不思議はない、といったところだろうか。

「いくらでも出します。売りなさい!」

「うらない」

「何ですって、わたしの言うことが聞けないの?」

「でも、おうじょでんかに、おねがい、ある」

「何?」

僕はナディーネに命じて、作成したばかりの板製のカータを持ってこさせた。

紙だと一山になるその横へ、同じ枚数を二山にして並べる。

「これもおなじ、かーた」

「そのようですね」

「つかいがって、どうちがうか、しりたい。いっしゅうかん、おうじょでんかにかすから、つかってしらべてほしい。らいしゅう、おしえてくれたら、おれいに、どちらかすきなほう、けんてい《献呈》する」

一瞬、ぽかんとして。

王女は側付きたちと顔を見合わせた。

「この話を受けて、問題、ありませんね?」

「左様に存じます」

「今夜からこれで、貴方たちと練習します」

「かしこまりました」

「ウィリバルトは、明日からわたしの部屋に来なさい。真剣勝負します」

「うん」

板の山を謹んでお渡しすると、傍らの侍女が丁寧に布で包んでいた。

それを見ながら、

「おうじょでんか、もひとつおねがい、していい?」

「何ですか?」

僕の申し出に、周りの侍女たちは揃って呆れ気味の表情になっていた。

会ったばかりの王女相手に、馴れ馴れしさも過ぎるという受けとめなのだろう。

しかし王女本人は、むしろ頼まれごとをするのがお気に召したという、何処か得意げな反応だ。

これもナディーネに命じて、運ばせた。新品のお伽噺の本だ。

「これ、がくいんにゅうがくまえのこどもにあうか、しりたい」

「何ですか、これは?」

「何、何?」

受けとって目を瞠る姉の隣りに、ウィリバルトも寄ってきた。

おっかなびっくりの様子で、パウリーネの指がページをめくる。

「これが話に聞いた、紙というものですか」

「ん」

「何、何?」

「こらウィリバルト、引っ張っちゃダメ」

「らんぼうにしたら、やぶれる。きをつけて」

「ん、分かった」

意外と素直に、王子は手を引っ込めた。

姉の手が、ぺら、とめくり。

二人揃って、鮮やかな挿絵に目を瞠っている。

「すご、すご」

「見事な絵ですねえ」

「姉様、これ読める?」

前のめりになって、ウィリバルトは絵の横の文字が並ぶページを指さした。

心なしか、一瞬目を泳がせて。王女は大きく頷いた。

「当然ですよ。読めます」

「読んで、読んで」

「あ、ああ、はい」

周りを見渡すと、何処にも反対の顔はない。

こほん、と小さく咳払いして、パウリーネは膝の上に紙の本を開いた。

「むかしむかし、山のふもとに、小さな村がありました――」

「わ、わ――」

それほど流暢とはいかないが、淡々と音読が続いた。

弟は真顔を引き締めて、それに聞き入っている。

ときどきつっかえ、読みに迷う場面もあるが。

「(炎が燃え上がった、でございます)」

「(うん)」

傍からナディーネが囁きかけると、何事もなかったかのように朗読が戻る。

後ろの王女付き侍女が目を丸くしているところを見ると、同じく読みができなかったらしい。

「――そうして、子鬼と村人たちは、ずっとなかよくくらしました。めでたしめでたし」

「わあ――」

「じょうず」

「うん、うん」

僕が手を叩くと、ウィリバルトも真似してぱちぱちを始めた。

侍女たちも、それに続く。

「もっかい、もっかい読んで」

「姉様は疲れました」

「もっかい、もっかい」

しきりと、姉の袖が引かれる。

侍女たちは半分苦笑いで困惑顔になっている。

「おうじょでんか、それ、じぶんでしっかりよんだあとだと、もっとうまくよんであげられる」

「そう?」

「それもいっしゅうかんかすから、よんでみて。かんそう、おしえて」

「分かりました。じゃあウィリバルト、今度また読んであげますからね」

「うん、うん、約束」

「任せなさい」

話によると、この姉弟二人はしょっちゅう部屋を行き来して遊んでいるらしい。

男爵令嬢侍女に、王子にもカータを貸そうかと訊ねると、「お姉様の部屋で一緒に遊ぶ方がいいでしょう」という返事だった。

また来週、とご機嫌の様子で王子は帰っていく。

続いて立ち上がりながら、パウリーネはついと僕を振り返った。

「前の、取り消すわ」

「ん?」

「田舎臭いとか貧乏とか、言ったこと」

「……ああ」

以前廊下ですれ違ったとき、何やら言っていたことらしい。

こちらはすっかり忘れてたけど。

「いなかも、びんぼも、まちがいない」

「え?」

「にかげつまえまで、びんぼうなだんしゃくりょうしか、しらなかった」

「そうなの?」

「おかげさまで、いまべんきょうちゅう」

「ふうん。まあとにかく、王女にふさわしくない態度でした。それと、お祖父様があなたのお陰で助かったと言っていました」

「ん?」

「ちゃんと、言いましたからね。では、また来週、楽しみにしています」

つんと肩をそびやかして、颯爽と歩き出す。

周りで側つきたちも配置につき、当然ながら王子ご一行よりも気品を窺わせる御拾いだ。

静かに扉が閉じると。

中では一斉に、侍女たちの溜息が響き渡った。

シビーラ以外の三人が、揃って首を垂れて脱力している。

「緊張しましたあ」

「本当にい」

カティンカなどは床に膝をついてしまい、メヒティルトがその肩にもたれかかっている。

シビーラがそんな後輩たちに声をかけた。

「こらこら、まだ後片づけが残っていますよ。こんなことは、後宮では当たり前です。今日はちょっと、いきなりすぎたけど」

「ですよねえ」

首を振りながら、ナディーネは僕を抱き上げてソファに乗せてくれた。

そのまま僕も、ぐて、と背もたれに沈んでしまう。

のろのろと立ち上がり、カティンカとメヒティルトは敷物を片づけ始めた。

そのカティンカが、まだ溜息混じりにナディーネを振り返った。

「でも、ナディーネは王女殿下のお部屋で、こんなことしていたんじゃないの?」

「お妃殿下や王子殿下がいらしたことは、ときどきあったみたいだけどね。そういう高貴な方がいらっしゃるとき、わたしは表に出してもらえなかったもの。王子殿下のお顔を拝見するのも、今日が初めてだったわ」

「ああ、あちら、侍女はたくさんいるものね」

「これからはこの部屋でも、これが毎週恒例になるみたいだよお」

シビーラに苦笑いで言われて、三人はがっくり肩を落としていた。

「ごくろさん、がんばってね」と声をかけながら、僕はナディーネに問いかけた。

「おうじょでんかのおじいさま、ひるしゅはくしゃくだった?」

「はい、そのはずです」

「たすかった、いってた。なにかな」

「さあ、分かりませんね」

「だね」

当然誰も知るはずはなく、シビーラもテティスも首を振っている。

明日ヴァルターに訊ねて、調べてもらおうかと思う。

活動報告にも書きましたが、新作の投稿を始めてしまいました。

「君に、最大公約数のテンプレを ――『鑑定』と『収納』だけで異世界を生き抜く!――」

https://ncode.syosetu.com/n6311hk/

となっております。

できましたら、覗いていただければと思います。

「赤ん坊」が、まあ元々そういうつもりで企図したものですから、あまり異世界ものらしくない内容になっていて、そういう嗜好の方には物足りない向きもあったのではないかと。

新作ではそちら方面の好尚の方についても少しは慮ってみたいと思い――。

などという作者の口上を鵜呑みにしてかかると、また「これじゃない感」に包まれるかもしれませんので、ご注意ください。

「赤ん坊」と共にご贔屓いただければ、幸いです。

A Baby’s Crawling Struggle in Another World

A Baby’s Crawling Struggle in Another World

赤ん坊の異世界ハイハイ奮闘録
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Native Language: Japanese
Rudolf Berushuman, the second son of an impoverished baron, suddenly awakens to an adult-level consciousness at just six months old. At the same time, he senses the presence of “memories” from a world different from the one he now lives in, whispering to him. Panic sets in. Everyone in this world possesses a seemingly pathetic, magic-like “blessing.” Upon learning of his real older brother’s existence, Rudolf enlists his brother’s power and sets out to save their territory.

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