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A Baby’s Crawling Struggle in Another World – Chapter 56

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二日後に領地に到着する、と父から連絡が届いた。

弓の腕に覚えがある精鋭、十人が確保できたという。

十人――。

人数を頼んで獲物を包囲した狩りをするには、心許ない。

一方、昨秋の兄のように一人で百羽以上を狩ることが可能なら、成果を出すことができる。

といった点で、微妙ではあるが、期待するしかない。

三の月の三の光の日。二階に上がる途中の窓から見た空には、満月が輝いていた。

援軍の到着前に明日はもう一度森の中の状況を確認に行く、という兄の予定を聞きながら、ベッドに入った。

抱きしめた腕の温かみに安心して、意識は溶けていく。

その腕のいつにない動きに揺り起こされたのは、眠りについてそれほど時間の経たない頃合いだった、ようだ。

「なに?」

上体を起こしている、兄に向けて問いかける。

以前襲撃を受けたときのような緊迫は、感じられない。兄自身、戸惑いの様子でベッド脇を見下ろしているようだ。

見ると、そちら側の兄の腕に、ザムが鼻先を擦りつけているのだ。

「どうした、ザム?」

兄の問いかけに、大きな反応はない。何か異状を知らせるならもっと気忙しい動きを見せるはずだが。

二人の目覚めを確かめてか、ザムはさっと窓際に駆け寄った。

前足を枠にかけて、がすがすと窓板に鼻を擦りつける。

「何だ?」

そうしてから急に、ザムは身を翻した。

戸口の扉に駆け寄り、かりかりと前足で引っ掻いてみせる。

「外へ出たいのか?」

片手に僕を抱いて起き出し、兄はドアノブに手をかけた。

するとザムは首を伸ばし、僕を抱いた兄の袖口を咥えて引っ張る。

「まさか……」

「俺たちにも一緒に来いというのか?」

問いかけに、ザムは明らかな頷きを返してきた。

いつもの遊びに興じる様子はなく、見るからに真剣な表情だ。

兄の視線が下がり、二人頷きを交わす。

ザムの真剣な懇願なら、聞いてやりたい。

「ちょっと待てるか?」

ザムに声をかけてから、兄はベッドに戻った。

ロッカーを開き、二人の防寒着を取り出す。手早い手つきで僕と自分の外出支度を調える。

僕は兄の背にしっかりおんぶされる格好だ。

その間も、ザムはドアを鼻でつつき続けていた。

少し遅れて、ノックの音がした。

「ウォルフ様、何かありましたか?」

不寝番をしているテティスの声だ。

剣と弓矢も装備し、支度を終えて兄はドアを開いた。

「え、ウォルフ様、そのお姿は?」

「ザムの希望だ。ちょっと外出してくる」

「え、え?」

いつも冷静な女騎士が素っ頓狂な声を返したこと、誰も責めはできないだろう。

開いたドア外へ向けて、ザムは兄を引っ張ろうとしている。

「ちょっとお待ちください。ヘンリック殿に声をかけてきます」

「急ぐようだ、長くは待てない」

慌ただしくテティスが階段を降りていく。

僕をおんぶしザムを従えて、兄もその後に続く。

テティスの呼びかけに、すぐヘンリックとウィクトルが起き出してきた。

武道部屋の戸口に、村人の夜番だったらしいディモも顔を覗き出している。

「ウォルフ様、どういうことですか?」

「俺もくわしくは分からない。ザムの希望だ」

「そんな……」

「くわしくは分からないが、俺はザムを信じている。希望は叶えてやる。たぶん危険はないはずだ、行ってくる」

「ちょ――ちょっとお待ちください」

「待てない。急ぐようだ」

そんな執事とのやりとりの間にも、ザムは兄の袖を引っ張っているのだ。

一度姿を消したウィクトルが、すぐに完全装備、剣と弓矢を携えて現れた。

「私がお供します。テティスはここの警備を頼む」

「了解した」

そのやりとりを理解したように、もうザムは玄関に向かっていた。

すぐ兄が、小走りに後を追う。

玄関を開くや外に飛び出し、ザムはすぐ土の上にうずくまった。

「背に乗れということか?」

ためらいなく、兄はその背中を跨いだ。

後ろから追いかけて、ウィクトルが駆け出してくる。

それを待たず、僕らを乗せてザムはすっくと立ち上がった。

屋敷の角を回り、裏の森を目指すようだ。

慌てた様子で、ウィクトルは馬を引き出している。

「ウォルフ様、少々お待ちください!」

「待てない! ついて来れないなら置いていく!」

「そんな……」

兄と意を一つにしたように、ザムはどんどん足を速めていた。

屋敷の裏手から、木立の間に入る。残雪の道なき坂を駈け降りる。降りた先の幅のある川を、ためらうことなく飛び越える。

兄と僕二人の重みを感じる様子もなく、いつもの軽やかな疾走の様だ、

「ま――待ってください、ウォルフ様、ザムうーー」

裏返りかけたウィクトルの声が、次第に遠ざかる。振り向くと、何とか馬で川の飛び越えには成功したようだ。

木々の間を縫って、何の障害もないかのようにザムの足どりは軽やかだ。騎馬のウィクトルがついてくるのは困難だろうが、少し回りながらなら馬の通れる余地もありそうだ。残雪にザムの足跡は印されているだろうから、遅れてなら追ってくることは可能だろう。

ぐんぐんと、ザムは森の奥へと進んでいく。

例の洞窟や野ウサギの狩り場を目指すのかとも思ったが、方向は違う。今まで僕らが行ったことのない奥地に向かっているようだ。

森の中には、他の動物の姿は見えない。まあもちろん、小さな動物はいたとしても、ザムの姿に身を潜め息を凝らしているのだろう。

夜行の鳥の声もなく、ついてくるのは木枝の陰に輝く満月ばかり。

時刻は夜半過ぎ、といったところだろう。

馬よりも速いだろう疾走に風が頬を打ってくるが、兄の背に押し当てていれば冷たくはない。

生まれて初めて経験するこれほどの速度に、爽快さを覚えてしまうほどだ。

木々の間を抜け、溶けかけの雪をはね上げ。

走る、走る。闇を切り裂き。

走る、走る。

一刻ほども、疾走は続いただろうか。

わずかに木立が開け、前方に幅広い岩山が見えてきた。

隣のディミタル男爵領との間を隔てる、境界だ。

横方向には見渡す限り絶壁が続き、間を抜けるただ一つの道は、ほとんど獣しか通れないような狭い裂け目状のものだけだという。それも冬期間は積雪と凍結で、ネズミさえ抜けられない難所と言われる。

今はようやく雪が溶けて、辛うじて通れるということなのだろう。足を止めることなく、ザムは狭い裂け目に駆け入っていた。

「隣の領へ行くのか」

「みたい」

兄の呟きに応えて。何となく、行き先の予想がついてきた。

いくつか大きな岩に駆け昇り、飛び降り。停まることなく、オオカミは駆け続ける。

走る、走る。

走る、走る。

やがて岩の合間を抜け、また木立の下へ入った。

ここから、ディミタル男爵領だ。話に聞いたように、ここら辺はうちの方より積雪の量が多いようだ。

まだ白い雪をはね上げ、木々の間を。

走る、走る。

走る、走る。

A Baby’s Crawling Struggle in Another World

A Baby’s Crawling Struggle in Another World

赤ん坊の異世界ハイハイ奮闘録
Score 7.4
Status: Ongoing Type: Author: Native Language: Japanese
Rudolf Berushuman, the second son of an impoverished baron, suddenly awakens to an adult-level consciousness at just six months old. At the same time, he senses the presence of “memories” from a world different from the one he now lives in, whispering to him. Panic sets in. Everyone in this world possesses a seemingly pathetic, magic-like “blessing.” Upon learning of his real older brother’s existence, Rudolf enlists his brother’s power and sets out to save their territory.

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