テレーゼのアトリエに戻ってからは魔剣を作り続けた。
そして、翌日も同じように3人娘と共にテレーゼのアトリエに来て、魔剣を作り続ける。
「ジーク君、どんな感じー?」
レオノーラがやってきて覗いてきた。
「順調だな。多分、明日にはできると思う」
良い感じの魔剣ができそうな手応えがある。
「ほうほう。じゃあ、それから2日はフリー?」
「まあ、そうだな」
「デートしようよー」
デートねー……
「どこ行くんだ?」
「お土産買いに行こうよ」
あー……
「支部長にいるかね? 王都出身らしいけど」
「一応、買っておいた方がいいんじゃない? あと、微妙に迷惑をかけているルーベルトさんとルッツ君」
確かになー……
俺達のせいでもないが、向こうも大変だろう。
「行くかー」
「うん、行こう。エーリカとアデーレもいい?」
レオノーラが2人に確認する。
「いいですよー。私も家族の分を買わないといけませんし」
「せっかくだし、皆で出かけたいわよね」
俺達は予定を決めていると、ノックの音が部屋に響いた。
「どうぞー」
そう答えると、扉が開かれ、何故か本部長が部屋に入ってきた。
「よう、ジークとその女共」
他に気の利いた挨拶ができんのか?
「あ、本部長。ご無沙汰してます」
アデーレが立ち上がって一礼する。
「え? 本部長さん?」
「あ、そうなんだ……」
エーリカとレオノーラも立ち上がった。
「リート支部のエーリカ・リントナーです」
「同じくレオノーラ・フォン・レッチェルトです」
2人が自己紹介をし、一礼する。
「ああ……私がクラウディア・ツェッテルだ」
本部長が頷いた。
「本部長、用件は何ですか?」
「せっかちな奴だな」
あんただけには言われたくねーよ。
「呼ばれれば行きますって」
「まあ、仕事の件で来たわけじゃない。お前ら、今夜は空いているか?」
今夜?
「今夜はホテルで食べるつもりですけど?」
「夜は私が奢ってやるからついてこい」
「ハァ? なんでです?」
「なんで……え? なんでって言った、お前?」
言ったが?
「変なこと言いました?」
「師であり、後見人である私と食事に行くことに疑問を抱くところだ」
「そうは言いますけど、一度たりとも本部長と外食に行ったことないですし……」
住まわせてもらっていたから当然、家で御馳走になっていた。
だが、どこかに連れていってもらったことは一度もない。
「あれ? そういえば、お前と食事に行った記憶がないな」
「本部長さん、ジーク様が2、3回ほど拒否したからです」
ヘレンが答えた。
「あー、そうだ、そうだ。入学祝いに連れていってやるって言ったのに拒否したんだったな、お前」
そうだっけ?
誘われた記憶すらないぞ。
「うーん……そもそも祝われることですか?」
「ああ、そう言って拒否したな、お前」
本当に記憶がないんだが……
「えー、じゃあ、行きましょうか……あれ? さっきお前らって言いました?」
「言ったな」
「まさか3人娘もです?」
「お前の弟子だろ。食事を誘うことがおかしいことか? ましてや遠い地から来てくれたのに」
そう言われると……
「本部長、ちょっと耳を塞いでくださいね……お前ら、どうする? 拒否したいなら拒否してもいいぞ」
本部長が耳を両手で塞いでくれたので3人に確認する。
「やっぱり一門なんですから挨拶はいりますよー」
「そうだね。しかも、自分達の組織のトップじゃないか」
「拒否する理由がないわ」
ないのか……
「上司と食事なんて最悪じゃないか? この人は支部長のように優しくないぞ」
「お前が私の優しさをことごとく無視するだけだろ」
聞いてんじゃねーよ。
「ウチはパワハラ禁止令を出しているんだ」
「そんなことせんわ。お前は私を何だと思っているんだ」
弟子をリートに左遷した師匠。
「じゃあ、行きますか……奢ってくださいよ?」
「当たり前だ。どこに行きたい?」
どこ……
「どうする? この人、金を持っているから高いところも行けるぞ」
またもや3人と相談する。
「うーん……ドレスコードはなー……最初はジークさんとサイドホテルって決めてますし」
「王都の高いところはジーク君が連れていってくれるしなー」
「普通のところでいいんじゃない?」
タダ飯だというのに……
いや、こいつらはどっちみち、タダ飯か……
「本部長、高くない適当なところで」
「じゃあ、南のバイキングにでも行くか。そういうのが一番手っ取り早い」
わかる、わかる。
各々が好きなものを選べばいいからな。
「それでいいか?」
3人に確認する。
「バイキングか……」
「またもや危険なネーミングだね」
「明日の朝もあるし、気を付けないといけないわよ」
こいつら、王都に来てから食ってばっかりだな。
「本部長、そこで」
「わかった。終業時間に迎えに来るから行こう。車は出してやる」
車はありがたいな。
「お願いします」
「ありがとうございます」
「御馳走になりまーす」
「私まですみません」
3人がお礼を言う。
「ああ。では、仕事を頑張ってくれ」
本部長はそう言うと、部屋を出ていった。
「ホテルの料理がバイキングになったな」
「バイキングも楽しみですよ」
「まあねー……あ、ホテルに電話してキャンセルしないと」
「でも、ちょっと緊張するわね」
拒否してほしかったなー。
あの人、昔から知っている人だから余計なことをしゃべりそうなんだよな……
お読み頂き、ありがとうございます。
これが今年最後の更新となります。
来年も更新していきますので引き続きよろしくお願いいたします。
良いお年を(@^^)/~~~