階段を降りると、受付のサシャのもとに向かう。
「ジーク先輩、話は終えられたんですか?」
「ああ。サシャ、魔導石製作チームのクヌートを呼んでくれ。あそこで待ってるから」
応接室を指差す。
「わかりました」
サシャが頷いたので応接室に向かい、ノックをした。
「入っていいか?」
『いいよー』
扉を開け、中に入ると、レオノーラが対面式のソファーに腰かけていたので隣に座る。
「杖を見た本部長が褒めてたぞ」
「おー! それは良かったよ!」
「まあ、見事なものだったからな。それとサシャに頼んでクヌートを呼んでもらった。すぐに来るだろう」
「わかったー」
俺達はお茶を飲みながら待つ。
すると、5分も経たないうちにノックの音が部屋に響いた。
「どうぞ」
そう言うと、扉が開き、クヌートが部屋に入ってくる。
「失礼する」
クヌートはいつものふざけた感じではなく、貴族って感じがした。
「仕事中に悪いな」
「俺が頼んだことさ」
まあな。
「座れよ」
「ああ」
クヌートはこちらに来ると、対面に腰かけた。
「魔導石製作チームには慣れたか?」
「ああ。だいぶな。あそこはよほどヤバかったんだろうな。ものすごい感謝されるし、英雄扱いだ」
ひっどいね。
まあ、コリンナ先輩が35点の俺を欲しいって言うくらいだからな……
「それは良かったな。テレーゼはもう大丈夫そうか?」
「ああ。大丈夫だと思う」
「一安心だわ」
これで王都の憂いがなくなった。
残りはこいつら、か。
「さて……改めて自己紹介をしましょう。クヌート・フォン・イェーリスです」
本題に入ったクヌートがレオノーラに自己紹介をした。
すると、レオノーラが帽子を取り、渡してくる。
「レオノーラ・フォン・レッチェルトです。先般の縁談話については大変失礼と御無礼を働きました。誠に申し訳ございません」
レオノーラが深々と頭を下げる。
「謝罪は受け取ります。縁談話が立ち消えるなど珍しい話ではないですし、こちらとしてもまだ縁談の前段階のことですので問題ありません。しかし、何故、そこまで拒否するのでしょうか? 私に何か問題でもありますかね?」
女癖が悪いところじゃね?
あと、不真面目なところと軽薄なところ。
「クヌート様に問題はありませんし、イェーリスの家に嫁ぐのは名誉なことでしょう。しかし、私は錬金術師になりたかったのです。子供の頃からの夢であり、それを叶えるためにずっと努力してきました。そして、10級試験に受かり、これからという時だったので縁談話を受け入れることができなかったのです」
「私も錬金術師なので気持ちはわかります。ならばもし、私が錬金術師を続けてもいいと言ったらどうしますか?」
意地悪なことを聞くなー。
「申し訳ございません。結婚相手は自分で決めますし、私はわがままと言われようとも自分の人生は自分で決めると子供の頃から決めております。そして、私はこちらのジークヴァルト先生に師事し、リートに骨を埋めるつもりです」
先生だって。
「そうですか。ジークは優秀な男ですからそれが良いかもしれませんね」
「そう思っています」
俺、これのために呼ばれたのかね?
「わかりました。では、私達は縁がなかったということで」
「申し訳ございません」
「いえ、父と母には私が話しておきますので」
2人が深々と頭を下げ合った。
「……終わったのかな?」
「……多分?」
ヘレンと小声で話し合っていると、2人が顔を上げる。
「ジーク、終わった」
「あ、そう? ならいいや。帰っていいぞ。俺達も帰る」
もう用はないだろ。
「ちょっと待て。これとは全然関係ない話だが、明日の夜は空けてくれ」
「なんで? また飲みに行くのか? その辺の女でも連れていけよ」
「フラれた人の前で言うことか? いや、この前言った勉強会だ。本部長も元気になったし、明日の仕事終わりはどうかってなったんだ」
あ、やるんだ。
「別にいいけど、逆にお前らが大丈夫か? 忙しいだろ」
「大丈夫だ。次の日に出るから」
休日出勤か。
「わかった。終業時間に本部長の家に行けばいいんだな?」
「ああ。頼む。じゃあ、俺は仕事に戻る」
クヌートがそう言って立ち上がる。
「頑張れ。来月の試験は受けろよ」
「そうする」
クヌートはそう答えて、応接室を出ていった。
「俺達も帰るか」
「そうだね」
俺達も立ち上がり、応接室を出た。
そして、サシャに一声かけ、本部を出ると、ホテルに向かって歩いていく。
「あれがけじめか?」
「うん。正式に断った」
「あれでいいの?」
「クヌートさんは正式な断りの言葉を待っていたんだよ。それで親に話し、この話はおしまい」
おしまいか。
「お前、親父さんに会ったらどうだ? 王都にいるわけだしさ」
「会わないよ。まずは謝罪の手紙を出すところからかな。リートに帰ったら出すよ」
会って話した方が早いだろうに。
貴族ってめんどくせーな。
俺達はホテルに戻ると、各自の部屋に入り、ゆっくりと過ごした。
夕食の時間になり、俺の部屋に集まると、食事を楽しみ、トランプやボードゲームなんかで遊ぶ。
そして、10時くらいに解散したのだが、すぐにノックの音が聞こえてきた。
「んー?」
「誰ですかね?」
立ち上がって扉を開けると、そこにはレオノーラが立っていた。
「やあ、ジーク君」
「どうした?」
「今日のお礼。つまらないことに付き合ってもらって悪かったね。それとあの場にいてくれてありがとう」
「別にいい。本当にその場にいただけだしな」
実際、何もしてない。
ただ2人の話を聞いていただけだ。
「それが助かるんだよ。心強かったよ」
そうか?
お前のメンタルなら大丈夫だろ。
「まあ、お前が良かったなら良かったが……」
「ありがとうね。私は人に恵まれたよ。結婚話を言われた時は神も仏もないなってショックだったし、家を出た時は途方にも暮れたけど、リートに来て良かった」
そうか……
「じゃあ、明後日、リートに帰ったら魚パーティーでもしようぜ」
頼むぞ、エーリカ。
「そうだね。そろそろ魚が食べたいなって思えてきたよ。じゃあ、また明日。おやすみ」
「ああ。おやすみ」
頷くとレオノーラが扉を閉めた。
「解決、でいいのか?」
閉まった扉を見ながらヘレンに聞く。
「いいです」
問題があったのかすら微妙だったけどなー……
首を傾げながら部屋の中を歩き、窓から夜景を見た。
繁華街ということもあり、夜だというのに明るく、通行人も多い。
「確かにリートは良いところだ」
この夜景も綺麗だが、サイドホテルから見た夜景の方が綺麗だった気がする。
「そうですね…………ジーク様、仏って何ですか?」
「さあな」
知らんし、どうでもいいことだ。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!