「ギーク先生のおかげでいい買い物ができました。ありがとうございます」
「気にしなくていい。俺もいろいろと楽しめたぞ」
結局いくつかの魔道具屋を回り、シリルは小型の掃除機のような魔道具を購入した。
複数の商品について性能や値段を比べ、店員にいろいろと質問を質問をしたら少し値段をまけてくれた。最初の店員では答えられないこともあって、店長らしき人が出てきて言葉に詰まりながらも必死に説明してくれていた。店員からしたらさぞ面倒な客だっただろうな。
「ふふ、ギーク先生がこれほど楽しそうにしていたのは初めて見たかもしれません。よっぽど魔道具が好きなのですね?」
魔術や魔道具のことになるとつい饒舌になってしまう。それほど魔道具について興味のないイリス先生には少し退屈だったかもしれない。
ちなみにイリス先生はまだ俺がギル大賢者の弟子という設定を知らないようだ。生徒たちも俺のことは秘密にしてくれているらしい。
「学園が終わったらいろいろと研究しているからな。魔道具を作るだけでなく、魔術の研究も面白いものだ」
「そういえば放課後の勉強会でもなにか作っていましたね。いつも落ち着いていて冷静なギーク先生が少しだけ子供っぽくて、なんというか……安心したというか身近に感じられました」
「どちらかというと研究をしている時の方が俺らしいのだがな」
前世も含めて人生経験が人よりも多いからいつも落ち着いているように見られるだけで、実験や研究をしている時間が一番楽しいのである。
「……この店には俺も入らなくちゃ駄目か?」
「え、え~と、無理に入らなくても大丈夫ですよ」
「外で待っている方が変に見られると思います。別に男性の方も入っているので問題ないと思いますが?」
「そういうものか……」
魔道具屋の次にやってきたのはエリーザとシリルとソフィアの希望により、女性用の服屋となった。
この店はそこそこ有名な店らしく、来店している客はほぼ身なりのいい女性だ。シリルの言う通り男性客もいるのだが、カップルの客しかいない。ここに女性4人を引き連れた俺が入るのはさすがに場違い感がすごいのだが……。
俺としても先ほど魔道具屋に付き合ってもらった手前なかなか断りにくい。確かにシリルの言う通り、この店の前で待っていると変に思われてしまいそうだし、観念するしかないか……。
「こっちの服はソフィアさんにとても似合いそうですね」
「わ、私にそんな服は似合わないぞ!」
「そんなことないわ。ソフィアにもよく似合うわよ」
「ひ、姫様まで!?」
なんともにぎやかなものだな。
「皆さん、とても楽しそうですね」
「ああ、長期休み中くらいはこうやって友人と楽しく遊べるのはいいことだ」
前世も含めて女学生が仲良くショッピングしている様子など見たことがなかったが、こうして楽しそうに服を選んでいる生徒たちを見ていると、先日の汚い教師たちを処分していた心が浄化されていく気分だ。
いろいろな事件が起きたが、こうしてみんな笑顔で休みを過ごせているようならなによりである。
「イリス先生も俺に構わず服を見てきたらどうだ?」
「い、いえ、私にはこんなお洒落な服は似合わないと思うので!」
ブンブンと激しく首を振るイリス先生。
あまり服についてはわからないが、別にそんなことはないと思うのだが。まあ、俺もそうだがあまり服とかをすすめられるのをよく思わない人も多いから、これ以上すすめるのは止めておくとしよう。
「お客様。当店では試着も可能ですので、もし気になる服がございましたらぜひいかがですか?」
生徒たちを遠目で見守りつつ、イリス先生と話をしていたら、女性定員さんが話しかけてきた。さすがにこういったお店だけあって、店員の制服もお洒落っぽい。
「わ、私には似合わないと思うので大丈夫です……」
「あら、そんなことはありませんよ! お客様はとてもスタイルがよろしいので、こちらの服などとてもよくお似合いだと思います。そちらの彼氏さんもそう思いませんか?」