「ギーク教諭、ノクス教諭、おはようございます」
「「「おはようございます」」」
ノクスと朝食をとっていると、エリーザ、ソフィア、シリル、メリアの4人が食堂へとやってきた。
食堂はこの施設を使用している人全員が使用できるため、生徒たちだけでなく他の一般のお客さんもいる。ここを使用する客はいいところの貴族のお客さんが多いから、生徒たちが問題を起こさないよう気を配っておかないといけない。まあ、一番心配なゲイルたちも相応の身分の相手にはちゃんとした態度をとっているので大丈夫だとは思うが。
「おはよう。昨日はちゃんと眠れたか?」
「はい! ベッドも柔らかくて、疲れていたことも合わさってすぐに寝ちゃいました。お風呂もとても広かったし、おうちにいるよりもずっとよく眠れました!」
「私もメリアと一緒でぐっすり眠れました。ここは本当に快適な場所ですね」
「ふむ、それは何よりだ。今日を含めて残りは4日間もあることだし、身体を休めることは大事だぞ」
この施設にはちゃんと大きな浴場もあり、ベッドも大きくて柔らかく立派なものだった。利用者のことをよく考えた実に見事な便利な施設である。
「それにしても学園の外でみんなの私服姿を初めて見たけれど、とてもよく似合っているよ。学園外の行事だと、みんなのこういった姿も見られるから、なんだか新鮮だよね」
「ありがとうございます。ノクス教諭にそう言っていただけて光栄です」
「ノクス先生もとってもお洒落な服ですごく素敵です。ギーク先生もノクス先生のように自然と女性を褒められるようになればいいのですけれどね」
「……無茶を言うな」
まったく違和感なく流れるように生徒たちの服装を褒めるノクス。
さすが諜報活動を得意とするだけあって、人の懐へ入ることが非常にうまい。これを俺が真似たところで無理があるだろうな。
鍛錬をおこなう時は防御の魔術式が組み込まれた学園の制服で行うが、それ以外の時間では生徒たちも私服で過ごしている。ちなみに俺たちも私服で、当然俺は白衣を着ている。
「さて、今日も昨日と同様に各自で鍛錬を続けてもらう。午前中もこの施設を利用できる分、昨日よりも鍛錬の時間は早めに切り上げるから注意するように。その後は自由時間とするので、海で遊ぶなり、図書室で学ぶなり自由にするといい」
朝食をとり、昨日と同様に施設へと移動してイリス先生と合流する。アノンのやつはまだやる事があるので、今日も自室にこもっていた。今のうちにできる限り仕事を進めているので、最終日くらいは自由になれそうらしい。
生徒たちは昨日よりもやる気に満ち溢れた様子だ。しっかりと身体を休められたようで何よりである。
今日は午前中から施設を使用できるが、その分午後の利用時間は昨日よりも短い。あまり詰め込み過ぎても逆効果のため、決められた時間の中で全力で鍛えた方が効率も上がるというものだ。
魔術を使用するには集中力をだいぶ使う。人間集中力が持続する時間には限度があるからな。
「ギーク先生、昨日聞いたところがうまくできているか、もう一度見てくれませんか?」
「ああ、もちろんだ」
「イリス先生、こちらのボードを使いたいのですが、調整をお願いできますか?」
「は、はい。ええ~と……」
「手伝いますよ、イリス先生」
生徒たちに呼ばれてあちこち移動する俺たち教師。こちらも忙しくなりそうだ。
「……ふむ、今使用している魔術式も悪くないのだが、実戦ではここの部分をこうした方がより効果的に魔術を使用できるから試してみるといい」
「はい! ギーク先生、ありがとうございます」
施設内にあるホワイトボードへ今生徒が使用していた魔術式を少し改良した術式とその理由を書き記す。
基本となる魔術式はすでに最適化されて魔術の教科書にも載っているが、常にそれが最適であるとは限らない。実際に対人戦で使う場合には魔術式をいじった方が良い場合もある。
本来ならばここまで教える必要はないかもしれないが、こういった機会だし、向上心のある生徒たちにはいろいろと教えてやりたいところだ。
「あ、あの、ギーク先生……」
「どうした、メリア?」
別の生徒に教えていると、メリアが少し挙動不審な様子で俺に尋ねてくる。なにか質問があるという雰囲気ではなさそうだ。
「さっきからずっとこっちを見ている人がいるので、少しだけ気になってしまって……」
「……ふむ?」
メリアの視線の先にはこの施設への出入り口のひとつがある。この施設は大きいので、出入り口が四方に設置されている。
その出入り口から少し距離を取った場所にひとりの男が立っていた。
【お知らせ】
こちらの作品ですが、いよいよ11/15にGA文庫様より発売されます(о´∀`о)
書影も公開されました。
可愛らしいエリーザと白衣姿のギルが表紙です(*^▽^*)
すでにAmazonや楽天などで予約が始まっております。
続刊を目指していきたいので、何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m