「みんなよく学び、よく頑張ったな。たとえ魔術競技会の選手として選ばれなくとも、ここで学んだことは決して無駄にはならない。それと長期休みももう終わりだが、最後まで羽目を外し過ぎないように注意するように。さて、これで合宿は終了だ。みんなお疲れさま」
「「「お疲れさまでした!」」」
5日間の合宿が無事に終わる。
この5日間、他学園のユリアスが現れた以外には海で足が攣ってしまい溺れそうになった生徒がいたくらいだ。もちろん魔術ですぐに助けたがな。
合宿で身体と魔術を酷使したあとにパニック状態になると、自力では魔術を使えなくなってしまう。こちらの世界でも海に入る前の準備運動は必須である。
「それと夜には浜辺でイベントを行う。いい思い出になると思うので、強制参加ではないがぜひ参加してくれ」
せっかくの合宿最終日ということで、せっかくなら学生らしいイベントも行わなくてはな。勉強や魔術のことばかりでは疲れてしまうので、こういった息抜きも必要である。それに学校でのイベントは意外と大人になっても記憶に残っているものだ。俺も高校生どころか、小学校の修学旅行でさえ、転生した今でも覚えている。
特に男子生徒にとっては女生徒と触れ合うまたとない機会なので、ぜひ参加してほしいところだ。
「……ギーク先生はユリアス様と密会ばかりですね」
「密会なんて人聞きの悪いことを言うな。普通にうちの学園の生徒と同じように魔術の質問などに答えているだけだ」
まったくシリルは……男同士で密会も何もないだろうに。それに同じ部屋にはユリアスの護衛がいる。相変わらず俺に対してのプレッシャーはすごいんだよ……。
今日の合宿が終わり、海で生徒たちの監督をしながらシリルたちやイリス先生と話している。ユリアスの方は随分と押しが強かったので、朝食をとりながらの1時間と夜に1時間だけにしてもらった。本当に魔術のことになると一直線である。
「でも、ギーク先生から1対1で指導してもらえるなんて羨ましいですね」
「ちょ、ちょっと羨ましいです……」
「そうは言うが、ユリアスとは学園が違って普段は指導できないからな。家庭教師をしてほしいという頼みも断ったし、この合宿の機会しか指導できないから仕方がないだろう。指導している時間で言えばみんなの方がよっぽど長いぞ」
ベルンとメリアもそう言うが、俺の指導時間という意味ではみんなの方が遥かに長い。ユリアスから週に一度だけでもいいから家庭教師をしてほしいと新たに頼まれたが、それも断った。かなりの大金を提示されたが、さすがに他学園の生徒の家庭教師を勤めるのはまずいだろう。
ユリアスとはこの合宿でしか指導できない。魔術に対するやる気はあるようだし、そういった若人を応援するのは大人の務めである。
「ふふっ、ギーク先生は大人気ですね。」
「……まあ、そう思ってもらえたのなら光栄ですよ」
イリス先生が言うように大人気なのかはわからないが、生徒たちに必要と思ってもらえる教師になれたのなら嬉しいことだ。
「でも、エリーザさんもユリアス様の魔術を見て根を詰めすぎているようですし、ちょっと心配です……」
エリーザとソフィアは海には来ていない。ユリアスと俺が模擬戦を行った翌日から、合宿のあともなにやらソフィアと一緒に頑張っているようだ。休む時にはしっかりと休むように注意したんだがな。
「同年代でエリーザと同じくらいの魔術の才能や実力を持った者を初めて見たのかもしれない。ユリアスと魔術競技会で競うことになった際に負けたくないのだろう」
「はあ、ギーク先生は本当にもう……。10ポイント減点です。エリーザさんが頑張っている理由はそれだけじゃないですから、ちゃんと察してあげてください。もちろん学園のためという理由でもありませんからね」
シリルがため息を吐く。
「ふむ……それならどんな――」
「やっと仕事が終わったのじゃ~! ふぎゃっ!」
どんな理由なんだとシリルに聞こうとしたところで、突然走って横から俺に抱き着いてこようとしてきたアノンを避けると、アノンはそのまま砂浜に顔から突っ込んだ。かぶっていた麦わら帽子が飛ばされそうになったので、それを拾ってかぶせてやる。
まったく、こういうことは公の場でするなといつも言っているのだがな。まあ、こいつもようやく学園長としての仕事が終わったようで、テンションがおかしくなっているのだろう。本来ならば1~2日前に終わる予定だったのだが、学園の方から追加でやる作業が届いたらしい。昨日なんて本当に死んだ魚の目をしながら書類に向かっていたからなあ……。
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『住所不定キャンパーはダンジョンでのんびりと暮らしたい ~危険な深層モンスターも俺にとっては食材です~』