「シリルさんもギル大賢者様の大ファンだったのですね! 私はギル大賢者様がこの魔術学園にいたからこそ、この学園を選んだのですよ」
「エリーザさんもそうだったのですね。実は私も一緒です。かのギル大賢者様を育てたこの学園に憧れてここを選びました!」
「………………」
なんだか変なところでシリルとエリーザが意気投合している。
「ギーク先生の魔導具の知識は本当にすばらしかったのですが、まさかギル大賢者様の弟子が防衛魔術の臨時教師として入ってきていたとはさすがに想定の範囲外でした。ですが、昨日のギル大賢者様の開発した魔導ゴーレムやポーションなどを実際に目の辺りにすればそれも納得です」
「シリルさんとメリアさんが羨ましいです。私もぜひ見てみたかったですね」
「後ほど詳しくお教えしますよ。それと、あの魔導ゴーレムのようなギル大賢者様の発明した素晴らしい魔道具の魅力についても語らせてください」
「ありがとうございます。ですが、ギル大賢者様のことについてでしたら、私も山ほどお話でしますよ」
「……その辺りは勉強会以外のところでやってくれ」
本人を目の前にしてどんな羞恥プレイだよ。
「そうですね、ギル大賢者様のすばらしさをお伝えしていたら、十七時までには到底間に合わないです。早く次の授業であの魔導ゴーレムというものをあますことなく観察させていただきたいですね」
「私もとても興味があります。それにポーションや指輪の魔導具などもぜひ見てみたいです。ギーク先生、いかがでしょうか?」
「ふむ、ポーション類や指輪は少し特別製だから秘密だ。まあ、魔導ゴーレムなら次の実戦演習で見せてもいいだろう」
ポーションとマナポーションは他の生徒からもどこの店で販売しているかを聞かれたが、あれは俺が作った特別製のポーションで、素材もかなり高価なので、生徒やその関係者が大怪我を負った時以外は渡すつもりがない。
生徒達に渡した指輪の魔導具は俺の両手に身につけている物と同じだが、使う機会がなくてなによりである。当然すべて回収済みである。魔導ゴーレムに関しては観察するくらいは問題ないか。
「ありがとうございます。ギル大賢者様とギーク先生で作った魔導ゴーレムですか。本当に楽しみです」
「私もとても楽しみです」
「僕もです。大きくて動かせる魔導具なんて格好よさそうですよね」
「わ、私も楽しみです」
どうやら次回の実戦演習の際は魔導ゴーレムを生徒達に見せることになりそうだ。俺としても、自分で作った男のロマンである魔導ゴーレムを見てもらえるのは悪い気がしない。
少なくとも生徒たちが心に大きな傷を負うことなく、無事に全員が登校しているので本当によかった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「結局セラフィーナ伯爵家やアルベリオ男爵家は爵位剥奪。当事者は処刑、それ以外の親族は国外追放となったようじゃな」
「あれだけのことをしでかしたのだから当然だ。さすがに国の司法まで完全に終わっているわけではなくてほっとしたぞ」
翌週となり、今回の事件に対する処罰が国から発表された。
俺の権限などを使う必要もなく、きっちりと当事者は処罰されるらしい。セラフィーナ伯爵家は結構な大貴族であったが、さすがに起こしたことが大きかったため、厳重に処罰されたようだ。
まあ、いろいろと責任を逃れるための小細工をしていたようだが、それらの証拠を残しておいたのが大きかったのかもしれない。こういう時に記憶を読み取る魔術は便利だ。人道的にいろいろと問題はあるから、ああいった犯罪者相手にしか使うつもりはないが。
「イザベラとその親戚は国外追放となったようだし、ガリエルと同様、多少動向を気にしておくことにしておこう」
多少の同情はするが、あの老執事もこれまでに手を汚してきただろうから、こればかりは仕方がない。実行犯であるあの老執事は処刑されることとなったが、イザベラはセラフィーナ伯爵家の親戚と共に国外追放となる。
俺のことを恨んでいることは間違いないだろうし、多少はその動向を気にしておくとしよう。とはいえ、家を失った彼女たちが何かをできるというわけではない。できることなら、そのまま残りの人生を過ごしてほしいものだ。きっとあの老執事もそれを望んでいることだろう。
まあ、これ以上は俺の関与することではないか。
「さて、いろいろとあったが、明日からは俺の知り合いがこの学園に教師としてやって来る。そいつを出迎える準備をするとしよう」
「うむ。問題が多すぎて遅くなってしまったが、ようやく学園側の受け入れ態勢が整ったのじゃ。少しずつ学園の教師側も改善していければいいのう」
本来ならばもっと前にあいつをこの学園に呼ぶ予定だったが、いろいろと問題が多かったから少し遅くなってしまった。
……しかしまあ、あいつはあいつで少し変わったやつだから、また忙しくなりそうだ。