A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 156

「もちろん騎士やそれ以外の道も閉ざされていない。

話をしたが本人は騎士になる事を諦めていないし、一般の入団試験には間に合う。

アッシェ家から籍を抜かれたわけではなく、家名を名乗る事を禁じられただけで、実力さえ確かな物にすれば再び家名を名乗る事もできるだろう」

あらあら、私の僅かばかりの後ろめたさを感じ取りでもしたのかしら？

王子は一応フォローをしているけれど、あのワンコ君の実力でそれが可能だと本気で考えていないわよね？

だから騎士以外の道もそれとなくほのめかしたのよね？

前世で普通に家族に愛されて、普通に家族を愛して、日本人の平均寿命くらいでその普通に感謝しながら人生の幕を下ろせたわ。

前々世の時とは比べ物にならない程のたくさんの普通を享受できたからこそ、まだ19才のあちらの世界の孫と同世代の坊やにささやかな後ろめたさと、羽根のように軽い同情を覚えるのは確かよ。

とはいえ初めからこうなると、いえ、これから先の彼の暗雲を初めから予想していても、やっぱり傷は治していたわ。

今の私は前々世の王女だった記憶を持ってこの世界に再び産まれた、この国の公女という身分だもの。

軽はずみな扱いを公子から受ける謂れは最初からないの。

何より彼はあの王妃の生家の公子で、同じ両親の同胞の血族。

聖獣ちゃん達が特にアッシェ家の人間に厳しい目を向けてしまう気持ちもわかってしまうくらいには、私もそうしてしまうわ。

「そして次に主犯の３名について」

まあまあ、孫についてはスルーしたわ？

何もお咎め無しとは思えないのだけれど、どうなのかしら？

「元ニルティ家公子であるエンリケはそなたを害してシエナ嬢を第２王子妃にしようと目論んだと自白した後、死亡した。

第１王子である俺、四公の次期当主であるそなたの兄とウォートンの３名でそれを証言し、捜査報告書に記帳されている。

ニルティ家からは学園での成績不良、そして何より学園内外での彼の言動が四大公爵家の公子として相応しくなく、改善の見込みも無しとして放逐、及び家系図からも遡って抹消されていた為に調査に協力し、生家の関与がなければ一族への処罰は無いものとして調査を行った。

結果、処罰無しと決定した」

「左様ですの」

お兄様を見れば、少なからず菫色の目が揺れたわ。

私を助けに箱庭に入る時に力を借りようと裏取り引きしたんじゃないかしら？

抹消は恐らく次期当主が箱庭に入る前に、遡っての処理をしたんでしょうね。

「エンリケの指示とはいえ、今回の転移騒動の主犯でもあるペチュリム＝ルーニャック、マイティカーナ＝トワイラの両２名にも厳罰を与える必要がある。

仮にも四大公爵家の公女に危害を及ぼそうとしたのだからな」

「左様ですわね」

もちろん王子の言葉には同意するしかないわ。

学園内での社会の縮図を学園外と混同してしまったのだもの。

でもわかっているのかしら？

そうさせたのは腹違いとはいえ、他ならぬあなたの弟よ？

王家が過去の教訓を活かせていないのなら、ましてやベルジャンヌの転生した私に再び同じような仕打ちをするのなら……聖獣ちゃん達もこの国を完全に見限ってしまうかもしれないけれど、いいの？

「しかしあの２人は蠱毒の箱庭にて蟲に襲われ大怪我を負っていた。

第２王子達が救出したらしいが、箱庭の外で捜索にあたった騎士が４人を発見した時には、マイティカーナ＝トワイラは既に亡くなり、ペチュリム＝ルーニャックはかろうじて命を取りとめた状態だった」

そう。

金髪ちゃんは死を選び、金髪君は生を望み、孫はそれを叶え、ワンコ君も従った……浅はかな選択ね。

「しかしペチュリム＝ルーニャックは既に修道院へ送られている。

あの者が今後二度と表に出てくる事はない。

体には障害が残り、蟲の毒で外見もかなり酷い。

両名共に父であり、家門の当主からの除名処分の申請もあったが、棄却した。

こうなる前に放逐し、除名していたならまだしも、事を起こした後にそれは認められない。

それぞれの家門が罰として公女が望むだけの慰謝料の支払いや、それ以外の物も必要であれば可能な限り融通するよう命じている」

なるほど。

ある意味ニルティ公爵家からのトカゲの尻尾切り的な扱いになったのね。