A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 157

「……………」

思わず無言になってしまうわ。

もちろんお顔はデフォルトの笑みだけれど。

だってあまりの丸投げっぷりじゃない？

私の望むだけ？

融通？

私の気持ちを優先させていると見せかけてはいるけれど、それとなく私を矢面に引き合いとして出すなんて。

無才無能は私の専売特許だってわかっているの？

無責任万歳敵前逃亡至上主義な私よ？

頭大丈夫かしら？

目の前の美形男子達は私の返答をどういう気持ちで待っているのかと改めて確認するわ。

片や何かを見定めるかのような朱色の瞳、片や何かを期待する菫色の瞳。

そこで改めて我に返ったわ。

あらあら、何という事でしょう。

そうよ、そうなのよ。

私は出来の悪い公女。

対してお兄様は出来の良い次期当主。

あっちからの丸投げ様子見サーブは、レシーブ＆トスでお兄様に回してアタックを打ち込んでもらえば良いんじゃないかしら。

ふふふ、あちらの世界のバレー用語を使ってみたわ。

前世では一時期ママさんバレーをしていたのよ。

「ねえ、お兄様？

お兄様ならどうするのが最善だとお考えになって？」

「ん、そうだな……」

あらあら？

お兄様が何だか嬉しそうにいそいそと答え始めたわ。

王子は何となくお兄様の方にむすっとしたお顔を向けたわ。

いい気味ね。

無才無能な私に何を期待したのかわからないけれど、応える事そのものを全力で拒否よ。

まあそれはいいわ。

「私ならそうするだろうが、お前はどうしたい？」

最後はそう締めくくった。

私の意志は尊重してくれるのね。

お兄様の言葉を要約すれば、概ね私が望んだものだったわ。

１つ目。

それぞれの家門で私以外のうちのグループと凛々しいお孫ちゃん全員に慰謝料を支払う事。

平民や下位貴族だからと不当に慰謝料を下げる事は許さない。

ずっと私への慰謝料のお話ばかりだったから、気がかりだったの。

お孫ちゃんになら、いくら四公の１つとの縁故があっても同格の家柄だから支払ったでしょうけど、下位貴族や平民のうちのグループには支払わない可能性は十分あったのよ。

訴える前に圧力をかける場合もあるわ。

何より金髪組は家格君を介してニルティ家の泥を被って尻尾切りに遭わされたようなもの。

縁故の関係は切れていないらしいから、裏で何かしらの取り引きがあった可能性もある。

となれば、下々の立場のあの子達は結局は四公を相手にしなければならないのと同義になっちゃうのよ。

そして２つ目。

ニルティ家はエンリケの放逐、除名を縁故関係にある家門に周知する義務を怠り、結果エンリケの命令に金髪組が従った事は否めない。

よってその慰謝料の一部はニルティ家からの補填を求める事。

金髪組の生家はこれ幸いと協力を求めるでしょうし、ニルティ家も彼らに協力しやすいわ。

そしてそこらへんの関係性にも気づいているんだぞとロブール家が釘を刺す事にも繋がる。

とはいえ、これはある意味予定調和かもしれないわ。

だってお兄様達３人は示し合わせて箱庭に足を踏み入れたのだもの。

「さすがお兄様ね。

それでよろしくお願いしますわ、王子。

あ、でも支払うのは複数の高位貴族の家門ですし、私達は皆同じ目に遭っておりますわ。

何より今後も私はＤクラスで同じ人達とグループを組むと思いますの。

お兄様の仰った通り、家柄を多少は考慮するにしても、私と他の人達との金額に雲泥の差をつけて後々の私達の人間関係的に水を差す、なんて事はくれぐれもなさらないで下さると嬉しいわ」

「……わかった。

そうするよう王家からも取り計らおう」

「ありがとうございます」

これくらいなら自分勝手な無才無能の範囲の発言で許されるわよね。

なんて思っていれば、お兄様が不意に王子に少し厳しい目を向けたわ。

「王子、学園側の責任はどうなさるのです？

転移陣の管理方法の見直しはもちろんですが、今回成績優良クラスと称されるＡ、並びにＢクラスの一部の生徒達の訓練中の事故に見せかけたＤクラスへの暴行問題を、そこに妹が在籍している兄としても、生徒会副会長としても見過ごす事はできません」

まあまあ？

それってワンコ君への課題の１つなのだけれど？