A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 162

「ゴホン、それでだな……」

再び席に座った王子の頑張りで説明された事を要約すると、こんな感じね。

第２王子は心身の療養を兼ねてしばらく休学という形になる事。

これは実際言葉そのままの意味で療養みたいね。

何でも体には蟲の毒で軽い麻痺と痛み、それから見えない所だけれど皮膚の引き攣りと変色痕が残っているんですって。

精神的には予想通りよ。

金髪組との命のやり取りが絡んで自信喪失、呆然自失状態。

これまでの言動がいかに愚かで無責任だったのかを、彼らの無惨な状況を前に身につまされたらしいわ。

でも、それだけ？

彼らはポーションがあればどちらも生きられたのに、残ったのは金髪君だけ。

どんなやり取りになって、何をどこまで感じたのかしらね？

もちろん面倒だから掘り下げてまで聞かないけど、案外ワンコ君共々、悲劇のヒーローに酔いしれていたりして。

ちなみに私との婚約解消はすんなり受け入れたらしいわ。

ただ喜々としてではなく、粛々と受け止めていたんですって。

第１王子の印象だから実際はわからないけど、多分本当じゃないかと感じているわ。

ほら、孫は罵詈雑言を垂れ流し、私は聞き流してきた浅からぬ間柄よ？

それくらいは信じてあげてもいいわ。

きっともう会う事もないでしょうし。

孫は次の婚約者を療養後に改めて探す事には同意したけど、大好きなはずのシエナは候補から外して欲しいとお願いしたみたい。

お似合いだったのに、残念ね。

側近候補から脱落したワンコ君の処遇について、全て自分のせいだとお手紙で国王陛下とアッシェ家の当主に情状酌量を訴えたらしいわ。

どちらも取り合わなかったみたいだけど。

まあこれも予想通りね。

それ以降は特に何もしていない……言ってみればお願いのお手紙送りつけただけで、ハイ終わり……まあそれも予想通りね。

最後に第１王子は特例で全学年主任として、第１王子の身分を隠さずに城から派遣勤務にあたるんですって。

今後は王族の権限によってＤクラスの危険人物リストを精査し、何らかの沙汰を下すらしいわ。

ワンコ君の課題の１つは彼に引き継がれてしまったわね。

でも最初から誰によってそれが成されるか、指定はしていなかったの。

うまくいけば孫とお供のワンコで起死回生を得る機会になったのに、残念ね。

ピンチはチャンスだったと思うのだけれど。

まあいいわ。

彼の課題は残りあと１つよ。

ワンコクン、ガンバ。

「まあまあ、それでは王子が保健医さんだったのね。

いつぞやはお世話になりましたわ」

なんて心にもないワンコ君へのカタコトエールを脳内で送りつつも、わざとらしく驚いておくわ。

保険医勤務について秘密にしておいて欲しいと言われたの。

そもそも私、王子が保険医勤務してたの知らないはずよね？

「あ、ああ。

そういえば教えていなかったな」

「ええ。

存じ上げませんでしたわ」

あらあら？

気づいてなかった事に驚いたようなお顔をしないて欲しいわ。

一応初耳のはずよ？

細工眼鏡もかけて変装していたのに、無才無能な公女が気づくはずないじゃない？

「……そうか。

全学年主任だから、以前よりは話す機会もあると思う。

もし学園で何かあれば言ってくれ」

「ええ、そう致しますわ」

ふふふ、絶対関わらないようにしましょう。

もちろんいつもの微笑みで適当に相槌ね。

「それでは妹への話も終わったようですし、お帰りいただこうか。

ラビアンジェ、疲れただろう」

まあまあ、今日のお兄様は気が利く男ね。

素敵よ。

「ええ。

色々と情報過多気味で……」

ちゃっかり困り顔で乗っかるわ。

やる事もあるし、ドーピング効果なんてとっくに切れているから嘘ではないのよ。

キャスちゃんのいうゾンビ顔が復活してなければ良いのだけれど。

「そうか、すまなかった。

求婚は本気だが、愚弟と婚約を解消してすぐで混乱させたな。

それから婚約期間中、学園でそなたを愚弟から庇う事もせずに傍観していてすまなかった」

まあまあ、視線を落としてしまったわ。

お兄様もまた申し訳なげになったから、そろそろ他所でやってくれない？

確かに２人共傍観していたのは間違いないけれど、それは私が統制していた部分もあるのよ？