A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 182

『私はその理由が如何様なものからであったとしても、あの方以外には不可能だったと思いますわ』

続く言葉に無表情すらも崩されそうになる。

例の合同討伐訓練から暫く経って、新緑の季節にレジルス第１王子が学園に全学年主任として王家始まって以来の異例の赴任をした。

シュア様の休学を知ったのはその日の全校集会で周知された、他の学生達と同じタイミング……。

どうして?!

私は次の婚約者として望まれていたのよ?!

すぐにシュア様に手紙を出したけど、今までと同じく返事すらなくて、また無視。

けれど最側近とシュア様自ら仰っていたヘインにも休学の事は知らされていなかった様子に、自分だけではないと少しだけ安堵した。

彼もあの公表を聞いて、愕然としていたものね。

『ふふふ、随分不服そうなお顔ですこと。

けれど第２王子殿下からも距離を取られた貴女も、そろそろ立場を自覚されてきたという事かしら？

最近では第２王子殿下の最側近などと愚かにも殿下共々誤って認識されて、本来何の関わりもその権利も無かった身でありながらあの方を蔑み、貶めていたアッシェ公子もやっと本来の立場を自覚されたようですわね』

『酷い……』

思わず本音が漏れるけど、目の前のこの女はやっぱり歯牙にもかけない。

『まあ、つい。

どうしても貴女方に同情の類が起こらなくて。

きっとそれ以上に酷くて見苦しい仕打ちを長期に渡ってあの方になさってきた方々だから、ですわね』

心からの悔し涙が浮かんできたけれど、唇を噛んで堪えたわ。

いつもの嘘泣きとはわけが違うもの。

それにしてもおっとりとした口調とは裏腹に、目には怒りを宿しているわ。

アイツと何の関わりもないのにどうして？

ヘインはある日突然、欠席し始めたの。

その理由は誰も知らなくて、後日、本人に聞いても教えてくれなかった。

お兄様だけは知ってらしたみたいだけど、口が堅いから……。

やっと登校したと思ったら学生寮で生活していて、顔を合わせても私とも他の生徒会役員とも私的な会話をしてくれない。

ヘインと愛称で呼ぶのも本当は断られたの。

寮の事も他の人が噂していたのを聞いて知ったわ。

卒業後の騎士団入団の推薦が取り消されたというのは、本当かしら？

今は他人の噂話に聞き耳をたてるくらいしか情報が得られないのがもどかしい。

シュア様が休学した詳しい経緯までは公表されていないけど、それについてはヘインに詰め寄って聞き出したわ。

シュア様が心配で夜も眠れない、何があったのと寮に押しかけて泣き落としてね。

まさか心底嫌っていたアイツへの婚約者としての責任を果たす為だなんて……そんなの誰が想像できる?!

色々と王家からは口止めされてるみたいだし、誓約魔法か何かで王家から縛られているのか、あまり詳しくは語ってくれなかった。

時々痛みに堪えるような素振りもあったし、かなり強力な誓約なんでしょうね。

でもヘインが一緒に行ったとは言わなかったから、きっとシュア様は衝動的に１人で入ったのね。

仮にヘインと一緒だったとしても無謀だわ！

愚か者よ！

何でアイツなんかを助けようと思ったの?!

結局箱庭から連れ出せたのはエンリケの取り巻き２人だったと噂で知ったけど、本当の理由はアイツを助ける為……私への裏切り行為よね?!

第１王子は合同討伐訓練中に起きた事故の原因究明の為の赴任だと周知していたけど、実際に取りかかったのは主にＡ・Ｂクラスの生徒が犯した落ちこぼれクラスへの事故を装った危害についての調査。

どうやら全学年のＤクラスに渡っていた、危害を加える上位クラスの生徒名簿の存在をアイツのグループが蠱毒の箱庭に転移した事件をきっかけに第１王子が知り、入手までしたらしいの。

お陰で大規模な聞き込みで加害者と、泣き寝入りしていた被害者がいた事が発覚したわ。

王家の秘宝の１つである魔法具も特例として使用されて、嘘を吐いていても見破られた。

その話が出回ると、我が身可愛さに正直に話して情状酌量を求める根性無しが次々出てきたんですって。