「お待ちどうさま!」
ドン!
「『これが……SSS定食……』」
まあまあ、オネエ様のハスキーボイスとリアちゃんの念話が重なったわ。
まずはガルフィさんの目の前に置かれた定食を前にどことなくのけ反って驚いているのを見ると、貴重な皆勤賞の賞品を他の人に使って良かったと思えるわ。
ちなみに皆勤賞を取った学生と同伴する場合に限り、賞品を他の人も食べられるの。
学園外部の人でも食堂に入る許可を得られれば可能よ。
『これ、美味しそうだけど……食べ切れるのかい?』
「バラエティ感は素晴らしいけど……量が……」
ふふふ、念話も直の言葉も驚きに満ちていて、いたずらが成功したような高揚感ね。
無理もないわ。
目の前にはあちらの世界のフードファイターもびっくりなサイズ感のプレート料理。
メニューはあちらの世界では馴染みのある大人の為のお子様ランチ!
コンソメスープも添えられて、1つのプレートで量も種類も大満足ね!
「どうかしら、ガルフィさん。
婚約解消&監視任務完了記念という名の、ラビアンジェの私生活を長年ご愛顧いただきありがとうございますの意味を込めた、うちの学園で皆勤賞を取った者だけが掴み取るマリーちゃんのSSS定食は」
「きゃー!
やめて!
暗に女子児童の私生活のぞき見してた変態っぽく聞こえちゃうから!」
首に入園許可証をぶら下げて焦りながらしーっ、と人差し指を口元に持っていきつつ、キョロキョロしているわ。
心配しなくても長期休みな上に、時刻はお昼過ぎよ。
広い食堂で利用者は見える範囲では私達だけだから、誰も聞いていないわ。
スカートはタイトスカートになっていて、慌てていても色気のあるできる女風である事に変わりはないの。
いつでもどんな時も素敵なのがオネエ様よ。
ユストさんとお別れした後は今日という日のハイライト。
SSS定食を食べる為に2人で仲良く学園の食堂に直行したわ。
もちろん見えないけれど、ド派手な赤基調のカツラ鳥様は私の頭に鎮座し続けている。
暑い外気に晒されて、私の頭は絶賛蒸れ蒸れ中ね。
「ラビちゃんもお待ちどうさま!」
ドン!
「ありがとう、マリーちゃん」
「あいよ!
お残しは許さないよ!」
「ふふふ、望むところよ」
御年46才のマリーちゃんは今日も元気ね。
「あっはっは!
あの時の芋剥きと皿洗いの小っちゃいお嬢ちゃんが言うようになったね!
アンタの賄い料理が有名になったから、こうして定期的に下町の元食堂のオバチャンが王立学園の学食に派遣されるようになったんだ!
プリンもオマケ!」
ドン!
「バケツプリン!
懐かしいわあ」
「食べ切れなきゃ持って帰りな。
じゃあ、ごゆっくり〜」
きびきびと奥の調理場に戻っていったわ。
そんなマリーちゃんを見て何か気づいたのね。
ハッとするオネエ様。
「ねえ、もしかしてSクラス給仕オバサンて……」
「ええ。
ガルフィさんがユストさんをナンパした飲み屋さん。
お昼は娘さん夫婦で食堂を営んでいたでしょう?
入り婿の旦那さんの浮気がマリーちゃんにバレて追い出してからは、お昼の営業はしていないのだけれど」
「え、急にお昼の営業を止めた理由ってそれ?!」
「それなりに有名なお話よ?
5年ほど前かしら。
浮気しましたっていうプレートで局部だけ隠して、裸で近所の公園の木にくくりつけられた男性のお話。
知らないかしら?」
「もしかして、縄でくくられた男の顔が誰かわからないくらい腫れ上がってたっていう、あの?」
「そうそう、それ。
ちなみにプレートの裏側はヤスリで荒く削ってささくれをわざと作ったらしいわ。
以来真似する下町のご婦人達が続出した伝説のドSプレートなの。
マリーちゃんがSクラス給仕オバサンと呼ばれる由縁ね」
「…………ツッコミどころしかないわ、その話……」
あらあら?
それとなくオネエ様の素敵なおみ足が内股に……。
「見るんじゃないわよ」
まあまあ、シャープな頬が何だか赤くなってしまって、何だか可愛らしさが倍増ね。