A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 36

「ふふふ、去年は影を潜めながら暗躍したけれど本当に楽しかったわ」

「生き生き暗躍してたよね」

ニコニコと合いの手を入れてくれるキャスちゃんが可愛いわ。

そのふわふわの尻尾をモフりたい。

「表向きは綿花の収穫とゴム作りの時の低出力魔力プレス、それから前世で娘にせがまれて習得したヘアアレンジの伝授だったけれど、そういう裏方も楽しめたわ。

特にヘアアレンジを教える時に若い女の子達とキャッキャしてるとお肌に張りが出た感じがするもの」

「ラビ、発想がオバサン。

君もまだ16才だからね。

でもそれで同じクラスの女の子達とは距離が少し縮まったみたいだし、売り子やヘアアレンジ部隊になると絡まれて面倒になるって事が理解してもらえて良かったね」

「ええ。

孫とお供君達の私への日頃の態度が悪くて良かったわ。

私の立場上、絡んで来るのが高位過ぎるやんごとなき身分の方々だって事を伝えられたただけでも御の字だもの」

特にどこぞの孫とその取り巻きとか、身内とかね。

予想通り私を探していたみたいだけど、いつもの特別室でごろごろしたり、聖獣ちゃんと愉快な仲間達とお茶会をしてゆっくりと花火を見て、うたた寝してから帰ったの。

前世も合わせて半世紀以上ぶりの学生らしいひと時に感無量よ。

それに前世の独身時代に経営コンサルタントをしておいて本当に良かったと思うわ。

ほら、企業には先の事を考えたコンサルティングを求められるじゃない？

きっと普通に王女や公女だけの人生しか送っていなかったら、卒業後の身分の低い彼らの生活まで想像すらできていなかったわ。

むしろ目先の事だけ見て彼らの将来を先の未来で潰したかもしれない。

食材と引き換えだけど、綿花栽培の補助を塩害地域の孤児院にお願いすれば、私達の卒業後に手を離れて事業としてスタートした時に経験者としての彼らは将来の雇用に有利になる。

子供達も慣れている分、離職率は下がるわ。

それにあちらでいうところの読み書きソロバン、お針子仕事も孤児達に教育しているから、もし移住しても何かしら役立つの。

加えて平民の富裕層よりも実は金銭的に困窮しているのが塩害地域と近隣の下級貴族。

綿花を収穫した際の販売ルートの確保は彼らの将来的な収入元になる。

領民が職について懐が潤えば税収が増えるもの。

あと昨年と今年の綿花の栽培量だけではまだ判断しきれないけど、恐らくこちらの世界の綿花は塩分濃度がある土地の方が成育が良さそうなのも強みね。

月影は懇意にしてある商会に高額でゴムの製法を売りつけたわ。

元を取るのにあのやり手の商会長なら必ず流通させるし、売れない物には投資しない確かな目を持つ人よ。

私の知る天然ゴムが見つからない限り、綿花は売れるわ。

ただし私達学生が卒業するまではアメーバやグリーンスパイダーの巣は貧困地域、つまりＤクラスの下級生の多くの生家が治める領の孤児院から食材と引き換えに優先的に受け取る事を約束しているの。

アメーバの内は子供でも捕獲できる安全魔獣だから少なくとも４年間孤児達が食いっぱぐれる事はないわ。

既に卒業した４年Ｄクラスの研究発表で公表してあるから、約束は反故にできないでしょうね。

だって国王陛下もその場にいたんだもの。

ゴムが私達の手を離れて流通し始めれば、恐らく一部の地域だけの捕獲では間に合わなくなる。

その場合も王都の孤児院も含めて他の地域でも孤児院を中心にお願いするはずだから、孤児達の良いお小遣い稼ぎになるわ。

王都はインフレの影響が少ないからギルドを経由してお金でのやり取りになるでしょうけれど、それも４年間、もう３年間だけれど、孤児院へ依頼がいくようにしてくれる。

真水に漬けて取り換えるだけで今までの水路詰まりのアメーバを駆除する時よりわずかながらの収入アップになるから喜んでくれるはず。

何よりアメーバに核が出来上がるとスライムになって時々人も襲うし、今後水路を詰まらせる事も無くなるんじゃないかしら。

草食系のグリーンスパイダーの糸もアメーバと同様だけれど、密かに蚕のような養蚕ならぬ養緑蜘蛛はできないかと考えているの。

正直グリーンスパイダーの巣は自然風化した後に良い土になるのよね。

昔邸の庭師をしていたお爺ちゃんにハーブを育てる時の土についてレクチャーを受けた時に知ったわ。

あまり自然界の物を不自然に手をつけるのは良くないと思うの。

まあこれについてはアメーバの影響も合わせておいおいよね。