A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 37

「そうそう、パッチワーク。

ふふふ、服飾関連の事業を手掛ける生家の人達も今回の件で商魂に火がついたみたい」

「どういうこと？」

ああ、キョトンなキャスちゃんの可愛いが爆発だわ。

「今月からシュシュのパッチワークキットとしてゴムを入れて販売し始めたんですって。

下級貴族の御婦人向けね。

刺繍糸って意外に高いし、お手軽だから高位貴族のような嗜みよりも好まれるかもしれないわ」

でもちびっ子王女の事件で引いた箝口令が綻んで広まっているでしょうから、今後は高位貴族の淑女の嗜みとして流行るかもしれないわね。

それにいくつかの商会にはパッチワーク生地の問い合わせもきているらしいの。

元々は半端な切れ端ならＤクラスの補助金でも安く仕入れられると思ったのが発端だし、この世界はあちらの世界のような機械化もない。

だから繊維業なんかも量産には限界があるわ。

つまり布１つ作るのもそれなりの手間がかかるの。

服飾関連の布の廃棄は色々な意味で損失だから、パッチワークが流行るのは悪くないはずよ。

少しあちらの世界で流行ったサステナブルとかＳＤＧｓみたいよね。

綿と組み合わせればキルト生地になって防寒性も上がるし、汚れた部分を取り換えられるから小さな子供の衣服なんかにも良さそうね。

ふふふ、ドレスデザイナーとして有名な月影。

あまり知られていないけれど、売れっ子になる前から懇意にしてくれていた商会のお願いがあれば平民向けの服もデザインするのよ。

平民の富裕層向けに可愛らしいパッチワーク生地のスカートなんてあったら流行りそうじゃないかしら。

「それよりラビ達Ｄクラスはどこまで研究発表するつもりなの？」

「そうねえ……魔獣被害、孤児院の自営による脱貧困効果、各地域の新たな雇用と生活の質、塩害地域の復興速度、その他商業の活性化をある程度の数字で成果として発表するはずよ」

「難易度高そう。

そういうのＤクラスは苦手なんじゃない？」

「ふふふ、それぞれの生家の力を借りれば問題ないわ。

そもそもそんなのは税金申告や運営に必要不可欠な数字よ？」

「親に聞けば簡単に出てくる？」

「そういうこと。

数字の開示請求は発案者側である私達学生の当然の権利であり、あちら側の速やかな開示は当然の義務として先に契約書で締結させているわ」

「ズル……」

「言ったでしょ？

ヒエラルキーの上位者の気分を味わって欲しかったって。

そういう数字は上位者が出すものじゃないの。

その数字を見て最終判断するのが義務であり、特権でしょ」

それに子供が関わって研究成果として国王の前で発表するのよ？

卒業までの４年間は不正をしようとしても難しいでしょうね。

こんな風に物事を腹黒く考える私は悪女の素質があると思わない？

稀代の悪女が再び降臨したりして。

これぞ高位の貴族が大半を占め、それぞれが個人プレーの範囲で頑張らねばならないＢクラス以上とのクラス構成の違いよ。

点と点ではなく、それを繋いで線にしたチームプレイがＤクラスには可能なの。

「教会にはヘアゴムを納めたんでしょ？」

「そうよ。

教会が当初何もしなかった被災地域の孤児達と一緒に、最初に刈り取った綿花で作ったシンプルな黒のヘアゴムね。

ちゃんと昨年の４年生が研究成果として発表してくれてるわ」

「嫌がらせ……」

「やあね。

教会が当初は何もしなかった、なんて一言も発表していないわよ？

災害からかなり経過してたけれど、土地の祈祷や炊き出しもしてくれたお礼を兼ねたその地域の孤児達と一緒に作ったヘアゴムの寄付じゃない」

「何も疑問に思わない、ある意味純粋なＤクラスの学生が国王の前で成果として発表したんでしょ」

「Ｄクラスの良いところは、ヒエラルキーの上位者のように裏の裏を読まない純粋なところよ？」

「……そうだね」

あらあら、そんな目で見ないで欲しいわ。

王立の学園名義で教会に寄付もしたし、飾り気のないヘアゴムだったけれど商会には寄付の後で教会として注文したくらいには便利だったはずよ。

だって神官て男女共に髪を伸ばす人が多いの。

神官の髪には神聖な魔力が宿るって言われているのだけれど、下級神官や見習い神官ほど神殿の奉仕活動に駆り出されるからあれば絶対使うわ。

だから教会は色々と王族側に怠慢がバレたとしても、学生側を表立って責めたりできなかったの。

ふふふ、今後はちゃんと教会として機能してくれる事を願うばかりよ。