「さあ、ドレッド隊長!
心おきなく、トリック・オア・トリートしてちょうだい!」
「トリィ〜ック!
オ〜ア!
トリィートじゃ〜ん!」
「もちろん、トリート!」
教皇の質問は完全に無視し、更に残りの酒をバシャバシャと葉っぱにぶちまけた。
……やっぱりトリックオアトリートの意味も、何がどうして酒をぶちまけるのかもわからない。
が、さすが俺の想い人だ。
この場の混沌とした雰囲気は、完全に掌握しきっている!
「ふ〜い!
音波狼の翼ヒレ酒もどきはオイラの好物ジャ〜ン!
オ〜ケ〜!
のってきたじゃ〜ん!
カモン!
マイ・ワ〜イフ達!」
ポポポポポン、と植物と公女を囲むように5つの植物らしき芽が発生した。
かと思えばグンと膝立まで成長し、白い蕾がつき、それが花開く。
花の中心に……人?
開花した途端、かなり強大な聖属性の魔力が流れ出てくる。
その上、淡く発光していた。
その光を見ていると、胸に巣食ったドス黒い嫉妬が、想い人に取り残されているかのような焦燥感が和らぐ。
ミハイルのどこか苦しげだった目元も弛み、瞳の透明感も消えている。
もしかしなくても、あの花は口伝で伝え聞く……。
「……聖獣、ドラゴレナ」
「はあ?!
しかしあれはどう見ても、魔獣アルラウネでは?!」
「確かに目も魔獣独特の赤だし、複数存在する理由がわからないが……」
言葉を区切って魔法で鑑定しても、魔獣だ。
だが俺の知るアルラウネとは根本的な何かが違うと勘が告げるのだ。
それより……公女は瓶……多分酒瓶とジョッキを地面に置き、かがんだ公女が合わせる形で、アルラウネ達とハイタッチだと?!
どう見ても、アルラウネ達とも知り合いだ!
俺も公女とやりたい!
「「「「「トリック・オア・トリート!
トリック・オア・トリート!
トリック・オア・トリート!」」」」」
公女に向かって口々に叫ぶアルラウネ達。
自分達から伸びた蔦と葉っぱを絡ませて作った、即席のジョッキらしき物を公女に見せて……これは催促か?
公女がスカートのポケットから、自前のラップとかいうのに包んだ何かを取り出した?
相変わらず便利なポケットだ。
ラップの中の……あれは黒い……カピカピに乾燥させた、音波狼の蝙蝠らしき翼の一部か?
すると公女は魔法で手の平に小さな火を起こして、それを炙る。
かと思えば手際良く適度な大きさに割って、植物製のコップに入れて……瓶を手に取り、酒を注いだ?
「イッツ、トリート!」
「「「「「ふ〜い、カンパ〜イ!」」」」」
魔獣っぽい聖獣達と公女が、酒宴を始めた?!
「「「「「あなた〜!
ゴー、ライブ!
ゴー、ライブ!
ゴー、ライブ!」」」」」
するとそこの植物は、ジャラララ〜ンとまるで三つ編みを編みこんだような葉っぱを揺らして擦り、音色のような音を奏でた。
「オーケー、愛するワ〜イフ達。
ラビ〜、準備はできてるじゃ〜ん?」
「ふふふ、レッツ・オン・ハロウィンステージね!
バロメッツのお腹部分の蔦を硬化乾燥させて作った天神と棹と胴!
蹄で撥!
竜の脱皮した皮で作った皮張り!
グリーンスパイダーとアメーバを使って、弾力性と耐久性を兼ね備えた弦を張って、調律もバッチリ!
これぞ三味線!」
「「「「「キャー!
噂の三味線ー!」」」」」
アルラウネは黄色い声で合いの手を入れる。
「奥様方にも多種多様な楽器を製作して、隊長から預かった亜空間収納に納品済みよ!」
「「「「「素敵〜!」」」」」
「オ〜ケェ〜イ!
引っこ抜くじゃ〜ん!」
すると公女は遠慮なく三つ編み仕様の枝を根本から纏めてムンズと両手で引っつかみ……。
「公女!
待って下さい!
その植物は……」
「イッツ!
オン!
ステェ〜〜〜ジ!」
あんぐりと口を開けていた教皇は、慌てて止めようとしたらしい。
翼をはためかせて今にも公女に向かおうとする。
しかし植物のかけ声に合わせるかのようなタイミングで、公女がズボッと引っこ抜くのが早かった。
公女は手にした植物を、そのまま宙に放り投げた?!
細長い根菜のような、形が足のように二股に別れた植物。
「イッエェェェェェイ!!!!
ヒャ〜ハァァァ〜!!!!!!
ハロウィ〜ン!!!!
デェ〜ス!」
耳をつんざく高音かつ大音量、音波も出して叫ぶ、その植物は……。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
ブックマーク、ポイント、感想に励まされ、次回からのラビアンジェ視点開始を含めて、やっと私が1番書きたかったシーン突入です!
長らくのレジルス視点にお付き合いいただき、ありがとうございました(*^^*)