「ル、ルスお兄様?!
もしかして襲われてるエメ兄様を叱ったの?!」
「あ、兄上?!
襲われてません!」
お孫ちゃま達がたじろいで、それぞれが掴んでいた私の手を更にギュッと握る。
まあまあ、王女がそれとなく私のすぐ隣に移動して、盾にしたわ。
お祖母ちゃん、お孫ちゃま達の可愛らしさに悶絶しちゃう!
そうよね、お孫ちゃま達の反応もわかるわ。
だって第1王子ってば、負のオーラ全開ですもの。
きっと私と同じく寝不足なんじゃないかしら?
全学年主任て立場も大変ね。
具体的に何をしているのか知らないけれど。
それより誰が襲われているの?
まさか例の不審者が近くに?
思わずキョロキョロと見回すけれど、誰もいない。
その上第1王子が私達4人の周りを、防音と目くらましの魔法で囲ったわ。
不審者対策?
「何を企んでいる?
老若男女問わず、手を出すなら敵と見なすが?」
お孫ちゃま達の企みは、単なるかくれんぼのお誘いでしょうね。
けれど敵と見なすって誰を?
随分不穏だけれど、やっぱり不審者が近くにいたの?
老若男女……ハッ、そんなにたくさん潜んでいたの?!
可愛らしいお孫ちゃま達ですもの。
長兄としては気が気でないのも頷けるわ!
お祖母ちゃんも注意しておかなくっちゃ!
「公女は退くんだ。
なんなら俺がエメアロルと場所を変わろう」
「「お兄様(兄上)……」」
「あらあら、結構でしてよ」
そういえば、うっかり庇われて下敷きにしたままだったわ。
少しはしたなかったわね。
顔を引きつらせて長兄を見やる第3王子の上から退き、掴まれていた腕を逆に掴み返して立たせてあげる。
「チッ、羨ましい事を……」
「「お兄様(兄上)……」」
第1王子が舌打ちしてボソリと呟けば、第3王子はビクッと体を竦ませ、ササッと私から手を離す。
お顔が更に引きつって、声も怯えが混じっている。
王女はどうしてか呆れたお顔。
声からも、どことなく呆れ感が漂う。
羨ましいってどういう意味?
ハッ、まさかお孫ちゃま達には不審者ではなく、ファンも隠れ潜んでいたという事?!
わかる!
人気急上昇中のアイドルは一部の人から嫉妬されてしまうものですもの!
きっと弟妹の人気爆上がりな事態に、お兄ちゃんはついつい嫉妬したのね!
ヤンデレ兄の内心を綴ったエッセイ風小説もチャレンジしてみたくなっちゃった!
【僕の天使な弟妹観察日記〜溺愛と嫉妬のブルース】なんてタイトルに……。
「違う」
「へ?」
「何を考えているかわからないが、絶対それは違う」
「……左様ですの?」
「そうだ。
俺は公女限定だ」
それはつまり、私に嫉妬したと?
そういえば、場所を変わろう発言もあったし……。
「違う。
そうじゃない」
「ルスお兄様がポンコツ?!」
「兄上の一方通行だけど、意思疎通が!?」
長兄にざわつく弟妹達。
皆が皆、小説のヒーローやヒロインになれそうな麗しい姿ですもの。
これはこれで絵に……。
「ふわ……」
あら、欠伸がついうっかりと。
さすがに24時間不眠不休耐久レース中だから、睡魔に襲われてしまったわ。
「それで、お前達は何故こんな人気のない場所で公女と?
控え室で大人しくしているはずでは?
まさか俺に隠れて好感度を上げようとしたのか?」
「「どうしてそうなる……」」
私の小さな欠伸に気づかないまま、孫達がワチャワチャしているわ。
ふむ、と考えて自分の気配をそれとなく薄くする。
お孫ちゃま達は好奇心に負けて、こっそり学園探索していたようだし、学園であっても護衛くらい付いていたはず。
つまりそれをまいたって事だから……王族達のお話にこれ以上付き合って、何かしらの巻きこみ事故なんて、ご免だわ。
「そろそろ行きますわね」
「……そうか」
「「いつの間に!?」」
そっと第1王子の魔法のギリギリの範囲まで移動してから、断りを入れる。
第1王子は気づいていたみたいだけれど、お孫ちゃま達はそうじゃないみたい。
「うふふ、楽しみましょうね」
可愛いお孫ちゃま達には、暗にかくれんぼしているわねと意味をこめた声かけをして、その場をサッと離れた。
まずは秘密の小部屋で仮眠よ。