A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 463

「久方ぶりよな」

「ええ、国王両陛下、側妃殿下。

お久しぶりでございます。

王子殿下、王女殿下におかれましては、初めてお目にかかります」

場所は貴賓控え室。

在学する生徒のいる侯爵家以上の貴族と王族、教皇とお付きの神官だけが集まっている。

もちろん生徒会役員はそんな高位貴族達のアテンドで出入りしている。

副生徒会長なのに、生徒会長のような役割で忙しそうなロブール公子の姿を見かけては、シュア兄上が迷惑かけてごめんなさいと思うばかりだ。

兄上は全学年主任だからか、ここには１度も顔を見せていない。

裏方に徹しているのかな？

あと小一時間程で学園祭の開会式が始まる。

そんな中、一国の王たる顔をした父上が最初に声をかけたのは、ロブール前当主夫妻。

他の四大公爵家の面々は、護衛任務に就くロブール家とアッシェ家の現当主、そして生徒会役員のロブール家次期当主の３人だ。

学園祭の場という事もあって略式ではあるものの、恭しく陛下に拝礼するロブール前当主夫妻。

噂通り、公女は夫人とよく似ている。

チェリア家の血筋かな？

公子と魔法師団長は間違いなくロブール家の血筋の顔つきなんだろうな。

「息災でしたか？

ソビエッシュ殿、シャローナ夫人」

「もちろんにございます」

王妃が微笑んで尋ねると、公爵が答えて夫人は頷く。

夫妻はどちらも微笑んでいて、運命の恋人達って未だに呼ばれているくらい、お似合いの夫婦に見える。

両陛下が並び、一歩後ろに下がっていた私達と横並びでいた母上。

学園祭の貴賓として相応しい礼装の両陛下と違い、茶会に出る時によく見るようなドレス姿だ。

もちろん、これまではその姿でも問題なかったよ。

でも今年は違うと思う。

王妃はジェナの分も合わせて評判のデザイナー、月影にお願いしたらしくて、その装いだと明らかに母上が浮いている。

ジェナと王妃は高い詰襟で刺繍をあしらったシンプルなドレスなんだ。

ジェナは裾にレースがついているから、子供らしさもある。

ジェナはローブ・モンタントって言っていたけど、初めて聞いたよ。

２人共陛下の髪色に似た青を基調に、王妃とジェナの瞳とおなじ翡翠の刺繍をあしらっている。

ジェナは短め、王妃は長めだけれど、ケープドレス仕様だ。

陛下の礼装のジャケットは黒基調で詰襟と袖に紫の刺繍が入っているから、王妃の髪色を連想する。

ジェナはラップコート風よって言ってたけれど、絶対月影の受け売りだと思うんだ。

母上を連想させる色は今のところ見つからない。

多分いつものように中に着ているシャツには碧色の刺繍をしてあると思う。

妻が２人いると色々大変だよね。

私の服の刺繍は朱色。

陛下とルス兄上、自分と同じ瞳の色だ。

型は間違いなく陛下とお揃いだね。

昨夜、王妃から届けられたんだ。

今までにないスタイルなんだけど、素材がベルベットなのもあって、気品がある。

シンプルな装いだからこそ、余計にそう感じさせるんだ。

月影は平民だって噂もあるんだけど、私は貴族じゃないかと睨んでる。

斬新なデザインもあるけど、ちゃんと社交界のルールも押さえてるからね。

対して母上なんだけれど……レースや刺繍をふんだんに使っていて、良く言えば年齢を感じさせないデザイン。

見た目は確かに若く見えるから、似合ってはいるよ。

例年なら両陛下はもう少しゴテゴテした服装だしね。

もちろん両陛下は学園の貴賓として逸脱しない装いだけど。

いつもの茶会と比べれば、少し可愛らしさを落としてもいるのに……うん、今年は悪目立ちだ。

青みがかった金髪、碧色の瞳の母上らしい配色だし、陛下の色が全くない。

多分ドレスを仕立てるのに十分な時間を見て、王妃からどんな装いになるか通達はあったはず。

昨日、装いについて王妃と話してるって言ってなかった？

魔法があるから寒空の下でも問題はないけど、私達の詰襟に対して母上のデコルテを見せる装いは、どうにかならなかったのかな？

「ソビエッシュ殿。

折りいって……」

そんな私の隣にいた母上が、何を思ったのかな？

公爵にロックオンして１歩前に出ようとした。