A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 513

「ベルジャンヌ。

いや、ラビアンジェ」

「あらあら」

目にも止まらぬ速さとは、この事ね。

魔法呪を食らって顕現した悪魔に、正面からぶつからかるのは得策ではない。

私の首をいつでも捻り折れるように、首に手を添える。

「さあ、どうする」

「そうね。

どうしようかしら」

瞬間、転移して距離を取る。

けれど愚か者の側に転移した途端、お腹に蹴りが入る。

「ぐっ」

思わず片膝をつきそうになったところに、下から魔法の圧。

愚か者の首根っこを右手で掴んで身体強化し、地面を蹴って後ろに転がった。

愚か者がいた場所には、黒い蔦。

シエナの力に似て……。

左腕にズキリと痛みが走る。

見れば腕の肉が抉られたような傷。

避けたはずなのに？

更に２撃目、３撃目と蔦が襲う。

「はっ、何が?!

ぐえっ」

愚か者がやっとお目覚めね。

愚か者の首根っこを掴んで蔦を避けていたけれど、起きたなら自分で避けてくれない？

と言っても、今放すと愚か者は避けきれないでしょうね。

地面を縫うように下から出てくる蔦は、さっきより距離を取って避けている。

にもかかわらず、さっきより小さいながらも擦過傷のように皮膚を抉った見えない攻撃が続く。

下手に結界を張っても、原因がわからないと防げないかもしれない。

「ひっ、ひぃっ！

頼む、見捨て、グッ、なっ、ガッ」

愚か者は喋ると舌を噛むわよ？

もう噛んでいるけれど。

「くっくっ。

結局お前は甘い。

ベルジャンヌだった時もそうだ。

お前を虐げてきた異母兄を、お前は最後に助けて身代わりとなった。

だがあの時のようにはいかない。

俺はもう、この肉体を手放さない。

ほら、早くその馬鹿王子を見捨てないと、お前が死ぬぞ」

「それもそうね」

愚か者を掴む手を放し、空間の出入り口へと走る。

「そ、そんなっ」

絶望した声を聞いて、クルリと振り向いた。

ポケットに隠していたグリップに魔力を通して、ザ・鞭を発動させる。

けれど蔦は愚か者ではなく、愚か者に巻きつこうとしていた鞭の先を狙った。

鞭と蔦が接触する直前に鞭が弾け飛んだ。

「凶悪超音波を纏う蔦」

「ふん。

超音波が何か知らんが、仮にカラクリがわかったところで、どうする」

私の背後に、ジャビ。

蔦を囮のように使って、自分は転移してきたのね。

「んっ」

ジャビは私の左腕の傷口に、グッと爪を立てて握る。

痛みに思わず声が漏れた。

「体を焼くのを進行させないよう、魔力を消費していて魔法が発動できないのだろう。

無理はするな。

なあ、ラビアンジェ。

諦めろ。

俺の力を使え。

そうすれば俺がお前を助けてやれる」

私の左腕を掴んだまま、背後からもう片方の手で抱き締め、耳元で囁いてくるジャビ。

「残念ね。

あなたじゃ、ときめかないわ」

右手で私を抱く手を掴み、吸収してあった聖獣ラグォンドルの力を解き放つ。

「ぐあっ、放せ！」

「そこで放すはずがないでしょう」

聖獣の力で作り出した水が、酸のようにジャビの腕を焼き溶かす。

ジャビが私の左腕を握っていた手を放したのを、痛みを無視して身体強化を自分にかけ、掴み返す。

「このっ」

「何の為にわざわざこの空間に入ったと思うの」

吸収したベルジャンヌの魔力を使って、空間に命令する。

「何をするつもりだ！」

「この空間は特別な空間。

いえ、１つの世界よ。

この世界を作ったのは私。

ここではどれだけジャビが有利かなんて、関係ない」

＿＿ガラガラ、ドーン！

＿＿ガラガラ、ドーン！

＿＿ガラガラ、ドーン！

途端、雲がたちこめ、雷をジャビにへと落とす。

「ッガァァァァァ！」

雷に狙い撃たれたジャビは、野太く叫んでドサリと崩れ落ちた。

「そんな……自分ごと？

何でアイツは立っていられるんだ……」

答え、この空間の創造神が私だから。

もちろん神だから無傷だし、ズキズキ痛んでいた傷も既に癒したわ。

愚か者の疑問に、胸の中で答えると、不思議なパッションが心の奥底からムズムズと。

「ふっはっはっは！

吾輩は、神なりー！

頭が高い、控えおろうー！」

「はっ、ははー！」

すごいわ！

テンションが高くなって、ついやっちゃった時代劇風のふんぞり返ったお代官様（私の事よ）の無茶振りに、愚か者が応えたわ！

「あなた、やる奴だったのね」

「やるって……いや……え？」

親指を上に突き出してグッと握って、微笑んで愚か者を褒めておく。

ここで褒められると思っていなかったのか、愚か者は戸惑った表情になった。

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そろそろ今章も終わりに近づいております、という報告ですヾ(*´∀｀*)ノ

今章は長々と時間がかかりましたが、あと少しお付き合い下さい。

次章は最初と終わりを決めているだけの状態なので、開始するまで少し（１ヶ月くらい？）時間がかかるかなと思いますm(_ _)m

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