いつもご覧いただき、ありがとうございます。
昨日、No.546を飛ばしてNo.549を投稿しておりました。
修正しておりますので、まだご覧になっていない方はNo.546からご覧下さい。
「どうしてかな?
この壁の奥から知ってる魔力を感じる」
黒髪の少年を追いかけたものの、壁に突き当たってしまう。
周囲に人の気配もなく、念の為に索敵魔法を展開すれば、壁の奥に怪しい気配を感じた。
この魔力はスリアーダの魔力だ。
「ベル、誰か来た」
「キャス、眷族に頼んで、私達の姿を隠して」
場所は隠れる所もない通路。
さすがに魔法で気配を消しても、私達の姿は見つかる可能性が高い。
キャスの眷族に姿そのものを隠して貰うのが一番だろう。
言うが早いか、とある人物が来る前に眷族達は姿を隠してくれた。
「はて?
人の声が聞こえていたように思ったが……先に来られたのか?」
そう独り言ちたのはヒュシス教の教皇。
そのまま壁の前へと歩を進めた。
教皇にぶつかる前に、足音をさせないよう注意して横に避ける。
教皇は壁に両手を突き、自身の魔力を壁へと流す。
どうやら魔力承認式の鍵らしい。
索敵魔法くらいなら透過させても問題なかったけれど、無理に魔力を通さなくて良かった。
私の魔力量だと、適切な量を見誤った瞬間、鍵を壊しかねない。
壁を物理的に壊すのならできるけれど。
キャスが時々、私を脳筋と言ってくれていて良かった。
下手に鍵や壁を壊したら、病んだ流民ごと神殿から追い出されていたに違いない。
壁が左右にスライドして開く。
壁だと思っていたけれど、でっかい扉だったみたいだ。
中へと入る教皇。
すぐ後をついて入る。
間髪入れずに扉が閉じた。
躊躇わなくて良かった。
「これはこれは、スリアーダ王妃。
ここへいらっしゃるのは、随分と久しぶりですね」
中は応接室のようにあつらえられていて、既に明かりが灯っていた。
教皇が声をかけたように、中で待ち受けていたのは索敵した通り赤紫の瞳をしたスリアーダだった。
普段は1つにまとめている真っ赤な髪は、ローブの下に隠れている。
明らかに隠密行動だ。
この場所は寂れた神殿の中に、更に隠されていたらしき部屋。
部屋の場所や壁の細工から、教皇が個人的に使っている秘密の部屋……だと思う。
私が学園の旧校舎内にこっそり作った秘密の小部屋のような人避けはしていないけれど。
「聞きたい事があってきました」
スリアーダは、早くも本題に入りたいのかな?
「随分と急いでいらっしゃいますね。
お茶くらい飲まれては?」
教皇もそれに気づく。
けれど急ぐ事なく、スリアーダの脇を素通りする。
そのまま1つしかない執務机の奥にある椅子に、深く腰掛けた。
「ここは流行病の温床でしょう」
「ふむ」
カチャリと音がする。
教皇が机の引き出しから茶器を取り出した。
まずは、魔法でポットに水を満たしてお湯にする。
更にティーポットと茶葉、2つのカップを取り出す。
紅茶を淹れてから、カップに注ぐ。
教皇はスリアーダに、カップを1つ差し出してから、自分のカップに口をつけた。
「流行病ではないとおわかりでしょうに」
教皇の言葉に、やはりと思った。
もちろん、ある意味では流行病も発症している者が出ているのは間違いないけれど。
「戯れ言は控えられよ」
「流民達も気の毒に。
本当は毒。
それも元は……」
「教皇」
スリアーダが低く唸って話を遮った。
「その口を今後も閉じねば、いかに我が国の国教主たる教皇であろうと……」
「ふふふ、口が過ぎたようですね」
スリアーダを全く恐れていない様子で、首だけを竦ませる。
この国では王家と四大公爵家、そして神殿とで権力が分かれている。
王家と四大公爵家の力配分はその時々、聖獣の契約者が一族にいるかいないかで変わる。
しかし神殿は長らく国教として建国当初から権力を保持してきた。
神殿は政治に関しては不介入としているが、その権力を侮るわけにはいかない。
「して、私に尋ねたい事とは?」
「悪魔の正体」
私の肩で、何なら興味なさげに丸まっていたキャスの体がピクリと動く。
毛が少し逆立った。
悪魔……ピヴィエラが言っていた存在だ。
調べた限り、悪魔の力は異なるもの。
対して聖獣の力は非なるものと定義されていた。
キャスが落ち着くよう、ポンポンと白い体を……何だろう?
初めての経験だ。
今、どうしようもなくキャスの真っ白な腹毛に顔を埋めて、ポヨンとした腹肉ごと吸ってみたい衝動が……。
__もぎゅっ。
あれ、手をキャスに踏まれた。
肩越しにつぶらな瞳と視線が交わる。
本能的な回避行動?
キャスも自分の行動が無意識だった事が、表情から察せられた。
お互い前触れなき、おかしな本能的衝動に目を丸くしてしまう。
いつもご覧いただき、ありがとうございますm(_ _)m
作者:ラ、ラビ様や?
ラビ:そこにモフモフとやわ肉があるのが悪いと思うわ。