A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 581

「ああ、それで来たんだね。

エッシュは私を見つけるのが上手いから」

きっとエビアスに、私がチェリア家の事に首を突っこまないよう言ったに違いない。

となると……スリアーダだけじゃなく、国王も私の行動を制限しようと動くはず。

ロナの反応から、ロナの姉が動いたのは今日かな。

となれば実際に動くのは、数日以内？

いや、私が神殿で流民達に貼りついていると思いこんでいるはずだ。

本当に動くのはもっと後……１ヶ月以内か。

「ベル、それだけじゃない。

王太子から得た情報の中に、この辺りの治水工事をベルにさせて、手柄を横取りするというものがあった」

概ね予想通りだ。

スリアーダの治水工事にかこつけた本当の狙いは、ついさっき完了した。

王城の地下を通って流れる生活排水は、ロベニア国内を縦断して海へ繋がる本流ではなく、支流に流れるようになっている。

支流の水は、幾らかは自然の自浄作用を伴う。

普通の生活排水くらいなら、問題ない。

支流は平民の中でも、納める税が無いに等しい者達が住む層に流れていて、井戸水と併用して使っている。

ただその先、貧民街になると井戸がない。

その上、支流の水は貧民街で一旦せき止められる。

毒の症状が流民達の間だけで流行る内は、スリアーダも無視できた。

けれど神殿には、貧民街近くに住む平民達も駆けこみ始めている。

平民達の大半は病だ。

元々、食生活が貧しい事もあって病にかかりやすい。

けど何人かは、毒の症状が出てる。

とは言え病だと思いこんでいる神官達では、毒だと特定するのに時間がかかる。

まあ特定されるのも困るだろうけど。

スリアーダも城にいる状態では、毒と病の症状の違いに気づけないんじゃないかな。

だから私を使おうと思ったんだろう。

私が毒の可能性に気づく事を加味しているはず。

私に浄化魔法で水質を改善させた上で、毒の存在を誤魔化す為に治水工事を最短で終わらせたいんだろう。

でも貧民街付近の治水工事は、今更なんだ。

問題提議は随分前に、ベリード宰相へ上げている。

実行されていないのは平民が学べる学校の建設と、治安改善も同時進行で行う事を提議していたから。

どれか１つを改善しても、結局どれかに足を引っ張られて設備の修繕や、計画の修正が余計にかかる。

貧しいからこその、不要な人災を招きかねない。

貧民街で過ごしている内に、今まで貧民街の整備ができなかった理由が見えた。

そして、もし私がそれを成し遂げる事があれば。

その先を考えた国王とスリアーダは、権威が揺らぐかもしれないと、決して許可しなかった。

本当に今更。

けどスリアーダが動くと、色々スムーズに事が運ぶみたいだ。

私の魔力がどこまでもつかにかかっているけど、これはこれで好都合だね。

だとして国王は国王で、政治的に結びつく自分の正妃の裏の顔をどこまで把握しているのだか。

「それから……」

更に話を続けようとするエッシュが、ロナをジロリと睨んだ？

「どこで目をつけられたのか知らないが、王太子がチェリア嬢に興味を示した」

「そ、それは少し前に学園でリリといた時に……でも、ベルジャンヌ様の仰る通りに撃退しました！」

なるほど？

エビアスとの接点はわかった。

ロナとの付き合いも随分と長い。

私とエッシュが話す内容から、いつしか王家における私の立場を理解するようになっていた。

私達が学園で話す事は１度もない。

表で見かけても、決して話しかけるなと伝えてある。

まさかリリが滅多に行かない学園でロナと遭遇し、その上エビアスとも……考えるだけで面倒臭いな。

「王妃が王太子の側室を、どうしてかチェリア家から選ぼうとしていた事に端を発している。

だが王太子には少なからず理由があったが、王妃もまた、妹の方を選ぶ事を了承している。

姉妹の学力差など、まともに成績上位をキープする人間からすれば大して変わらない。

だが王妃なら、息子の為に少しでも優秀な方を選びぞうなものだが……」

「ああ、それは良いんだ。

チェリア家から選ぶのも、妹のロナを選ぶのも、理由はわかってる」

神殿でスリアーダと教皇の話を聞いていたから、すぐに合点がいく。

姉妹のどちらを選ぶかなんて、瞳の色で一目瞭然。

アシュリーと同じ色の瞳を、国王の側に置くはずがない。

「…………そうか」

エッシュの瞳が煌めく。

私から情報を視ようとしているんだろう。

ミハイルとラルフ、特にロブール公爵家と血縁関係のミハイルの事がバレるのもまずい。

エッシュが読み取れないよう、ポチを撫で回したり、リリとポチとで一緒に寝ている、私でも微笑ましいと思える癒やしの映像を頭に流して阻害しておく。

「……チッ、ベルの周りに雄が増えすぎだ」

エッシュは何を言っているんだろう？

私の周り……多分、良く接するという意味だよね？

雄？

ポチくらいしかいないよ？

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

ベルジャンヌは、ラビアンジェに転生して教皇となったリリと対峙するまでの約100年間、侍女リリは女の子だと勘違いしっぱなしでした。

ラビアンジェが勘違いに気づいた瞬間はNo.365に。

よろしければご覧下さいm(_ _)m