A Notorious Villainess Enjoying a Life of [Talentless and Incompetence] in Her Third Life – Chapter 641

「今回、学園の制服製作にあたり、月影が選出されたわ。

もちろん王家と学園は、月影の正体が私だとまで確証していない。

けれど、あなたは違うようね。

なのにロベニア国四大公爵家の嫡女である私の指名を、留学関連国として許可したのは、どうしてかしら？

ベルジャンヌ王女を稀代の悪女とした人達の、直系子孫が私よ？

何より、無才無能で魔力が低く、責任から逃走ばかりする公女だと報告を受けていたでしょう。

監視するあなた達からすれば、私が周囲の王侯貴族に侮られても、蔑まれても、自業自得と捉えたはず」

「確かに。

しかし四大公爵家嫡流の中で、君だけは毛色が違っていた。

平民に混じり、平民側に立って経済を回し、自身はリュンヌォンブル商会を貴族との裁判沙汰から守りながら大きくなるように貢献している。

なのに公女は決して表に出ない。

手柄は全て平民や下位貴族に譲り、自分は王侯貴族に蔑まれるのを良しとしている。

もちろん魔法の実力を隠している事も知っている。

ルカルドから報告を受けた時は、さすがに驚いたよ」

ルカルドはお祖母様の護衛よ。

私が学園祭で、お祖母様からベルジャンヌの魔力を取り出すのを見られてしまった。

「学園祭で何が起こったのかは、知らない。

もちろん表向き、公表された内容は知っている。

しかし、それが事実だとは信じていない」

学園祭で魔獣達が暴れた出来事は、真実を伏せて公表されている。

けれど公表する前に、私の意志を確認された。

まさか国王が、お父様と一緒にロブール邸へ直接転移して、ログハウスに突撃訪問してくるとは思わなかったわ。

「信じていないのに、公表を受け入れたと？」

「もしもロベニア国が聖獣の名を語り、再び保身に走っていれば、近隣諸国と厳正に対処したかもしれない」

あらあら。

言外に侵略も辞さない考えだったと言わんばかりね。

公表された内容は、偶然にも危険度Ａの魔獣であるシーカーモンキーが、他の魔獣達を引き連れて学園の敷地内に侵入。

結界を張る前に紛れ込んでいたところに、薄赤い結界が学園を含む敷地全体を覆い、やがて魔獣集団暴走へと繋がった。

シーカーモンキーの知能が、他の魔獣達を統率するほど高く、ある意味、災害級の魔獣である危険度Ｓに匹敵する猿型魔獣の亜種と見解を示した。

薄赤い結界については、原因不明とし、目下調査中と公表している。

実際、王妃の話ではシーカーモンキーが他の魔獣を操作していたし、悪魔の力で通常より攻撃力も増していた。

あながち嘘ではなかったりする。

ちなみに第２王子と側妃だけれど、どちらも魔法は使えない状態。

第２王子は、エビアスが即位後に暮らしていた離宮に閉じこめられたとか。

側妃は地下牢に収監されている。

ちなみに第２王子は私が直接手を下して魔法を封じたけれど、側妃には何もしていないわ。

側妃は私がロベニア国を発つ頃には、ある意味で精神崩壊していた。

あと少しすれば、ある種の廃人同然になるわ。

というのも、側妃の体に宿っていた魅了の力が悪さしているの。

元々側妃の魅了は、リリの魔力に宿っていた。

ジャビが体に取りこんで、異なる力で変質させた魅了を、側妃に移植。

さらに魅了の力を得た側妃は、国王への強い妄執が引き金になったのか、それとも異なる力がそうさせたのか、更なる変容を促していた。

つまり側妃独自の魅了の力となっていた。

私が時逆で時間を巻き戻した事で、側妃も生き返ったわ。

けれど非なる力である聖獣ちゃん達の力を織り混ぜて行使した時逆だったからかしら？

それとも元々、異なる力で変質した力だったのが影響したのかしら？

よくわからないし、調べる気もないのだけれど、魅了の力が側妃自身を蝕むようになった。

つまり自分が好きで好きでたまらない、自己愛の権化！

自分自身を愛し、自分自身を慈しみ、自分の目には自分しか入れたくない、とんでもナルシストが爆誕！

しかも自分で自分を追い求める、ある意味では中毒性増し増しの、絶対に満たされない自己愛を突き詰め、多重人格者となった。

魅惑のアイドル人格、側妃Ａ。

側妃Ａの取り巻き人格、側妃Ｂ。

更に取り巻き人格は増えて、国王がログハウスを訪れた時点で側妃Ｑまで確認しているとか。

この取り巻き人格がアイドル側妃Ａを取り合い、脳内で争いが起こり、時に自傷行為にまで発展する。

けれど側妃に治療が施される事はない。

表向きはスタンピードに遭って心を病んだ事で、表舞台から排除される形を取っている。

異世界日本で過ごした知識があるから、側妃の状態はある程度状態を理解できる。

けれど、こちらの世界では理解されていない。

そのせいで城内では側妃を悪魔憑きと揶揄し、親しかった女官達ですら地下牢には近づきたがらないとか。

この場合、側妃が自然に朽ちるのを待つ方が、北の強制労働施設や研究所預かりとなって、短く一生を終えるより、側妃の罰となる。

そう判断された。

側妃は心に飢餓感を抱えたまま、残りの一生を地下牢で過ごす事になる。