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A Thirty-Something Becomes a VTuber – Chapter 25

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5月×日

兄が炎上した。またか。もういっつも炎上してるじゃん……もう5月も終わりだというのに、デビューして2ヶ月経つというのに……何をやっているのやら。とは言え勧めたのはわたしなのでちょっと心苦しくもある。でも理由を知って「また、いつものやつか」なんて安堵したのはここだけの話。

6月×日

「ねー、どーして最近寄り道しないん?」

「そう?」

仲の良いオタク友達から学校帰りにそんな事を言われてしまう。本人曰く「中途半端な関西弁」。ぴょこぴょこと後ろで一纏めにした髪の毛が揺れる。髪留めは随分昔にわたしがプレゼントしたものだった。

「そーだよ、カレシでもできたん?」

「できてない、できてない」

言えない。兄の作るおやつ目的で寄り道せずに帰るなんて口が裂けても言えない。以前まではよく喫茶店やファストフードでこの子と時間潰していたが、最近はご無沙汰。無駄に何でも出来るあの人が悪い。

「じゃあ今日家行っていい?」

「……え?」

「前はよく行ってたじゃん。ウチの家はあれなの知ってるっしょ?」

「まぁ、うん……何となく」

色々複雑な家庭環境らしく「とてもじゃないが家に招けない」とのこと。その辺深入りするのは避けるようにしている。誰だって人に知られたくないことの1つや2つある。わたしだってそうだから。

あまり気乗りはしないが「交友関係は大事に」と昔パパに言われたような気がするので、兄にこっそり連絡を入れる。

既読  今から友達 家 来る

うん。わかった

既読  すがた

みせるな

レスポンスが早い。ものの数秒で返信来たんだけど……こわっ。まさか後とかつけられてないよね?

振り返って確認するも特にそれらしき人影はない。彼女が「なにしてんの?」と問いかけてきたので「なんでもない」とだけ答えて歩みを進める。

こうまでしてわたしが彼女と兄の接触を避けるのには勿論理由がある。単純に恥ずかしいから、というのもあるけど……この子あんだーらいぶ推しなのである。それも畳――じゃなかった柊冬夜さんが1番の推し。

身バレは不味い。この界隈身バレや前世が誰であるか、なんてのはファンスレやら覗けばすぐに分かるし、何なら検索エンジンのサジェストでも分かっちゃう人だっている。しかーし、基本的に身バレは避けるべきなのだ。あくまで兄は神坂怜、と言うライバーであってわたしのお兄ちゃんであるあの人とはまた別に区別しなくちゃなんない。これはわたしの持論なんだけどね。

家に到着してキッチンを見たら「お友達と食べてね。紅茶は冷蔵庫」と書置きと、木製のプレートに綺麗に並べられたフィナンシュとその脇にはアイスティー用のグラス。更にはお手製のコースターまで添えてある始末。

相変わらず無駄に気の利く人。お人好し。そんなんだからいっつも貧乏くじ引かされるのに。いい加減自覚して、賢い立ち回りすればいいのに……まぁ、わたしを甘やかす分には幾らやってもらっても構わないんだけど。

「なにこれ、すごいおいしい」

「でしょ」

友人が兄お手製の焼き菓子を食べて一言。

ふふん。そうだろう、そうだろう。兄の作るものは大体美味。そりゃ高級専門店のそれに比べると些か劣るかもしれないが、その辺の有名メーカーが大量生産するような代物よりは遥かに美味しい。

「手作り? 前までこんなの出てきたことなかったような……」

「前言ったでしょ、今兄が家にいるって」

「あぁ、テレワークだっけ? あれで在宅勤務してるっていうお兄さん」

「そそ、これは兄が趣味で作ったやつ」

趣味、というよりわたしのために作っているんだろうけれど。

「すごっ。いーなー、ウチもお菓子作ってくれるお兄ちゃんほしい」

「シスコンな兄を持つと苦労するわよ……」

「いうて自分もブラコンじゃん」

「はぁ?」

「だって毎日お兄ちゃんの作るお菓子食べたくて直帰してんでしょ? ブラコンじゃん」

「違う、解釈違い」

「あっ、そう言えばこの前言ってたんやけど、あれ応募しちゃった」

「はぇ?」

焼き菓子頬張りながら間抜けな声を上げてしまった。

「大手Vtuber企業って大体どこも今演者募集してるじゃん?」

「うん」

「応募した」

「は……?」

思わず手に持ったフィナンシュを皿に落とす。

いや、確かに以前「ウチあれ受けよっかなぁ。いっしょにうけよーよ」とかやり取りした記憶がある。勿論わたしは断った。流石に兄と同じように企業Vtuberデビューは流石に……もっとも、神坂怜のガワを担当したmikuriママからめちゃくそ可愛いキャラデザしてもらった手前、あの手の活動するとしても個人で細々やる程度だとおもう。少しでも兄の登録者が増やせるなら尽力するのもやぶさかではない。えっへん。

6月×日

「何してんの?」

昨日事務所でのお仕事を終えてこちらに戻ってきた兄が、倉庫代わりに使っている部屋で何やら探し物しているので尋ねてみた。会社に勤めて一人暮らしだった時の荷物を中心にまとめられたダンボールを漁っているようだ。

「んー、ちょっと探し物」

いや、その内容が気になるんだが?

「あー、あったあった」

気になって覗き見ると、女性物の服やらメイクポーチらしきもの。兄に女装趣味があるとは思えないし、ぶっ倒れる半年くらい前まで女性と同棲していたとかいう話をママからチラッと聞いたから恐らくその女の私物なのだろう。

「東京でモトカノにあったの……?」

「ただの後輩だよ、後輩。事務所行く途中でばったり会ってな、そういえばあいつの私物まだあったなぁって思って」

いや、ただの後輩は男の一人暮らしのアパートにそんな私物持ち込まないでしょ。正直兄の女性関係に関してわたしが知る限り失敗続き。最初の一人目が特に酷かった。思い出すだけで胃がむかむかしてくる。小さい頃は姉のように慕っていたのに……今では顔も見たくない。

兄曰く後輩の女、うちの両親とあちらの両親でやり取りしたこともあるらしい。何ならお歳暮とかお中元が届く。理由をママに聞いてもはぐらかされて「いつものやつよ、いつもの」としか教えてくれない。その口振りから察するに、いつもの無駄なお節介焼きが発動したのだろうということは容易に想像できる。断片的な情報を集めると向こうの両親に明らかに気に入られているし。

なんかもやもやする。

人の機微は見逃さないし、心まで読んできそうな勢いなのに自分のそういうのだけは全然見せない。ひきょうだ、なんかくやしい。

6月×日

例の友人から連絡が来た

友人

1次審査通った!

面接受けてくる!

ちょっと待って!


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A Thirty-Something Becomes a VTuber

A Thirty-Something Becomes a VTuber

アラサーがVTuberになった話
Score 4.6
Status: Ongoing Type: Author: Artist: Released: 2022 Native Language: Japanese
After quitting a toxic, overworking job on the brink of burnout, I, a thirty-something, somehow ended up becoming a VTuber named Kanzaka Rei under the virtual talent agency “UnderLive,” all thanks to my little sister’s persuasion. “I don’t really get this VTuber thing, but I’ll give it my all!” I thought, brimming with enthusiasm. However, in the female-dominated world of UnderLive, just being a male VTuber gets me bashed by viewers. To make matters worse, on just my second day, a fellow debutant causes a massive scandal, leading to their firing! Will this thirty-something VTuber, swarmed by haters, have any future at all!? …Well, it’s probably still better than working myself to death, right?

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