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A Thirty-Something Becomes a VTuber – Chapter 259

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5月×日

無事、ココネちゃんとの配信を終え、SNSやコメント欄での反応を見るに賛否両方意見はあったものの、単純な割合で言えば概ね好意的な意見の方が高いように見受けられる。匿名掲示板やSNSで私をブロックしているユーザーさんの分は数値としてカウントしていない。後者に至っては別アカウントでも利用しない限りはブロックされたユーザーは、ブロックした側のユーザーの書き込みを見ることは出来ない仕様となっている。多分私には見えないだけで相当数の苦情がある事は容易に想像出来る。目に見える形で誹謗中傷する人と比べると、こちらの目に入らないよう対策した上でやっている人の方が幾分かマシだろうか。どっちにしろ私は気にしないが、一部関係先に気にかける人がいらっしゃるのでね……

「おや……?」

反響をチェックしていたところ、丁度その当人から連絡があった。『今から通話できますか?』と言うものである。先程の配信に関する事だろうか。特に断る理由もないので、ひとまず問題ないという事を返信すると、即座に通話がかかって来た。

「こんばんは」

「お、お疲れ様です! に、兄さん。わざわざお時間ありがとうございます」

「ココネちゃ――猫撫さんも先程はお疲れ様」

「呼び方……」

「あくまで企画ってことで視聴者の皆さんも納得してくれるだろうから、配信後にまで無理して貫く必要はないと思いますよ」

「いえ、今のままが……いい、です…………兄さんって呼ばれるの迷惑だったら――」

「いや、別に迷惑ってことはないよ。義理とは言え同じ母を持つ兄妹じゃないか。まあ、距離感はその人それぞれだからね」

あくまで『兄さん』『ココネちゃん』という呼び合いは配信内限定に留めるつもりだと思っていたが、どうやらこのままの呼称で継続することになりそうだ。批判のコメントだって彼女の目に入っていないわけはないと思うのだが、それ以上に今回好意的な意見の方を重く受け止めたと言う結果なのだろうか?

ただし、この辺りの折り合いが難しいもので……得てしてこうした場合に批判する人、異性との絡みを極端に嫌う人たちほど熱心に推してくれる傾向にある。その分スーパーチャットやグッズの購入に期待出来るので商業的な観点、今後の活動を見据えていくとそうした方が正しいと言う事にもなりかねない。所謂『ガチ恋勢』と言う人々の支援を得られるか否かだ。本人の活動方針や、目指す先によっても優先順位は変わって来るだろうし、ガチ恋勢の中には本人が幸せなら良いと言うような人も当然いらっしゃる。過激な人ばかりではないと言う点だけはしっかり伝えておきたい。今回彼女がそれを望むのであれば、私の方から一方的に断る理由もないだろう。変に距離を取って不仲と思われるのも、彼女の活動上イメージが悪くなる恐れもあるし。

「えへへ、じゃあ今後も仲良しの兄妹ってことで大丈夫ですよね」

「不仲よりはずっとずっと良いだろうね。君のファンから嫌われちゃうだろうから、適度な距離感は必要だとは思うけれども」

「アタシは別にそう言うのは気にしないですけれども。それに今更距離を取ったところで、ほとんどみーんなアタシの『前世』については知っているわけですし」

「前世、か……」

まさか彼女の口から直接前世について触れられるとは思わなかった。あれだけ騒がれては当人の耳にもそりゃあ入るだろう。大手のバーチャルタレントグループ所属のVTuberの大半は大手検索エンジンで活動名を入力すると、サジェストとして『前世』という単語が登場する。神坂怜の場合は一番上が『炎上』であるのは皆さんご存じの通りであろうが、そんな私ですらそれに次いで表示されるのが先述した『前世』だ。

当然私にVTuber以前にネット上で活動した実績などは一切ないものの、それを知りたいと思う人は相当数いるようだ。新しい子がデビューすると言う情報が発信されれば、まず前世が誰かを推測するのがこの界隈のディープなファンの人たちなのである。直近で活動休止した配信者がいないか、その時の相互フォロワーや関係者などフォロー、フォロワーのメンバーから推測したり……初配信前から既にそう言った予想を立てている人すらいるのだ。

「アタシは以前まで――『降旗 白愛』として活動してた……んです。歌い手ってやつ……です」

「昔、フォローしてくれていたのは覚えているよ。色々応援してくれていたのも勿論」

「お、お、覚えててくれたんだ。え、えへへ……あ! べ、別に兄さんがいるからこの事務所選んだって訳じゃないんですよ? で、出会い目的とか全然まったく、そう言うのじゃないですから! これだけは絶対に、断じて!!」

「わざわざ早口で弁明しなくたって、そのくらいは分かっているよ」

「この子……猫撫 心猫としてどうしてもデビューしたくて――」

「そう言えば、あんだーらいぶでは珍しくガワが先に公開されてのオーディションだったって話だよね」

「はい……mikuriママのイラストが、VTuberになるならmikuriママじゃなきゃ絶対嫌だって思っていたから。そもそも兄さんを知ったのもママがイラストを担当していたからって経緯なんです」

どうやらmikuriママの担当するVとしてデビューするのが目的だったようだ。私が言っても身内贔屓に聞こえるかもしれないが、彼女のイラストは本当に素晴らしい。男性も女性も繊細な描写と色使いで作り上げられたキャラクターは本当に魅力的だ。個人で活動されている同業者の中には、自分の気に入ったイラストレーターさんに依頼してガワを作ってもらうと言う人もいらっしゃる。ただし人気な絵師さんほど個人からの依頼を受注していなかったり、他の仕事でお忙しいなどの事情があって実現するケースはそんなに多くはないとは思う。

「個人で依頼して作ってもらうのも選択肢としてあったのかもしれないけれど、最近は個人からの依頼は受け付けていなかったから、アタシにはこのガワありのオーディションに縋るしかなかった」

「昔は個人で依頼受けていたんだね、初耳だな」

「兄さんがデビューするよりも前の話だから」

彼女の話す雰囲気から思い付きやその場の勢いと言う訳ではない。個人依頼してガワを作ってもらうことすら視野に入れていたほどだ。先程も少し触れたがイラストレーターさんの中には個人からのリクエストを受ける人もいらっしゃる。メールで直接やり取りする場合もあれば、多くは外部サイト経由での仕事を依頼する場合が多いようだ。有名所で言えば『CANVAS NOTE』と言うサイトで、依頼のやり取りから報酬の支払いまで全てサイト経由で行えるため、ハンドルネームのみでのやり取りが出来るなど個人情報保護の観点からも有用なのだ。今個人で活動しているVTuberさんの多くはこう言ったサイトなどからキャラクターデザインを依頼する事が大半である。ごく限られた中には自分で自分のガワを描くと言うケースもあるのだが……本当にそれは稀なケースだ。

ちなみに酢昆布ネキは1枚単位でお仕事の募集を行っている。実際に寄せられる依頼の大半がR指定のもので、流行りのキャラクターやシチュエーションを指定し、その要望に合わせたイラストを納品しているようだ。納品イラストは彼女がSNSに投稿しているのをよく見かける。それを見て新規受注に繋がり、知名度向上、次の大きな仕事に繋がる――ようは営業活動的な側面もあるのではないだろうか。

「兄さん……アタシにはね現実で姉がいるんだ」

「お姉さん。ああ。デビュー発表後、SNS始動したばかりの頃言っていたよね」

「うん。その姉はねVTuberだったんだ」

「だった……?」

「とある企業のVとして活動していたんだ。まあ、すぐに運営している事務所自体がなくなっちゃったから、今はもう活動していないんだけれども」

Vとして活動の根幹となっている運営事務所側が解散することで、引退せざるを得ないケースがままある。個人の判断で引退するよりも、悔いが残ってしまう。今もそうだが成功した一部の事務所の波に乗ろうと新たに様々な企業がV界隈に参入しているが、結局収益が見込めず撤退するのは少なくはない。そう言った際にアーレンス嬢のように事務所と協議してガワの使用権を獲得するのは本当に一握りだ。彼女のお姉さんもきっと不本意な形での引退を迫られたのだろう……

「その姉は遥 久遠と言う名前で活動していたの」

「遥 久遠……」

その名には聞き覚えがあった。mikuriママの1人目のVTuber。神坂 怜の言わば姉にあたる人物の名であった。

◇◆◇◆◇◆

あんだーらいぶを語るスレ XXX配信目

736 名無しのライバー ID:C5R6Dcj6o

昨日のコラボは質でしたね

737 名無しのライバー ID:h+9EqZ6jq

一定数批判されるコメントは相変わらずだが……

738 名無しのライバー ID:3bOzjDb4M

ああ言うコメ投げてる連中は最早

脱サラの固定ファンみたいなもんやろ

739 名無しのライバー ID:B8YcYIXMj

文句言いながらも配信はチェックしてるのな

740 名無しのライバー ID:ae7CUw0ew

アンチスレで実況してっからな

741 名無しのライバー ID:nsu6XvHri

とは言え実際に配信見てるのってごく一部だよ

時折不正確な嘘情報バラまかれている模様

742 名無しのライバー ID:S+IRLql82

えぇ……

743 名無しのライバー ID:zh1TQpT39

アンチスレって大体そんなもんやろ

744 名無しのライバー ID:A2rOgpK/3

運営君仕事して、どうぞ

745 名無しのライバー ID:miQswEMJm

直接的な誹謗中傷でもない限り

多分動くことはないでしょ

746 名無しのライバー ID:5q/PSG7rf

もうアンスレトークはどうでもええよ

747 名無しのライバー ID:MoBthread

猫ちゃんはリアルお姉ちゃんいる情報あるし妹属性

脱サラは言わずもがな兄属性

相性が悪いはずがないんだ

でもワイの心の中の獣がそれを認めようとしないんじゃが

748 名無しのライバー ID:gckineki/

獣ってそれユニコーンだろ?

でも義理とは言え身内のせいか口調が少し砕けて

声色も気持ち優しめになってて大変良きだった

749 名無しのライバー ID:juki7mbSK

雫ちゃんと話してる時に比べると流石に段違いだがな

750 名無しのライバー ID:OgZGxMwcM

リアル妹を口説いてるのかってくらいに

良い声で語りかけてるからな

751 名無しのライバー ID:34wakY6DJ

未だにマンスリーボイスの台本書いてもらってるしな

そして妹は妹で収録にも口出ししている

752 名無しのライバー ID:4DbiffOT8

猫ちゃんリアルお姉さんの事って

配信内で話題にしてるの?

753 名無しのライバー ID:Rxd4FR45a

Vになったキッカケが

そのお姉さんってことらしいが

754 名無しのライバー ID:su33/EAiG

嘘だな

前世で歌動画が伸びなくなったからやろ??

よくあるパターンだ

どうせ長続きしない

755 名無しのライバー ID:I4aj+NVtV

お姉さんがVになるの勧めたって話じゃねぇのか

756 名無しのライバー ID:ncWEK7IM6

なお相方

コンちゃん「ゲームで生活したかったから」

757 名無しのライバー ID:FAunCnFP0

>>756

素直でよろしい

758 名無しのライバー ID:aA0cLsmcq

>>756

誰もが夢見るやつ

759 名無しのライバー ID:kLBPqS/wG

>>756

変なブログに取り上げられてたな

その台詞

760 名無しのライバー ID:XPDNHGkCD

前後の話すっ飛ばして

その部分だけ切り取った動画拡散する奴おるよな

761 名無しのライバー ID:Vo2wyZzeG

この件に関しては前後見ても

心の中からのコメントではある

762 名無しのライバー ID:ivrfSk1lu

好きなこと仕事にしてる人は世の中には結構おるけど

こう言う系は批判されがち

763 名無しのライバー ID:LnA4sosHW

でも好きな事仕事にしない方が良い

みたいな言葉は聞くが実際どうなんやろね

764 名無しのライバー ID:Mbja8qLIT

仕事にすると義務感になると言うが

765 名無しのライバー ID:RJ/ThlaY/

畳とか毎日配信してるけど

義務感と言うより最早習慣化してっからな

766 名無しのライバー ID:qv2VZzUha

畳は配信モンスターだからな

1日10時間を1週間とかザラやで……

767 名無しのライバー ID:n4l6mD+oK

義務感と言うより

もはや習慣化だからな

768 名無しのライバー ID:TfZAeL3lT

たまに休む理由:夏嘉ちゃんとお出かけ

769 名無しのライバー ID:OrKVdlF0X

うーん、このシスコン

770 名無しのライバー ID:RoR+2TEGJ

同じくシスコンの脱サラも

割と配信モンスターではある

771 名無しのライバー ID:xAGyf0Iw6

アイツの場合はガッツリ義務感でやってそう……

772 名無しのライバー ID:ZRRXGadGJ

だろうな

773 名無しのライバー ID:Fj4yAZ49R

昔はそうだったかもしれんが

今は活動楽しんでそうでワイは嬉しいよ

774 名無しのライバー ID:gckineki/

過去が異常すぎたせいで

今の環境が心底幸せと思っているんだ……

だからそれを守るために平気で自己犠牲しちゃうんだ

775 名無しのライバー ID:mQMKjPvTL

更生は順調に進んでいるはず……

776 名無しのライバー ID:GAXd1KU0P

あんらいは脱サラ更生施設定期

777 名無しのライバー ID:HSYEQn331

話は少し戻るが

もっと不純な理由で活動してる奴がおるじゃろ?

778 名無しのライバー ID:cr0LqG1KH

あ……(察し)

779 名無しのライバー ID:ETYlJHc7G

ニート「働かずに生きて行きたい」

780 名無しのライバー ID:eyEza6SXa

実際なんでお前生きていけてるんだってなるけどな

781 名無しのライバー ID:C7kCEw14s

ろくに配信もしてないのに

遊び呆けてるからな

782 名無しのライバー ID:3jMrCkfhv

ボイスやグッズがあるとは言え謎だよな

783 名無しのライバー ID:Ub6WXieft

悲報 ミカ、事務所でニートとエンカウント

784 名無しのライバー ID:iU6DoUyHc

あいつよく遭遇するなぁ

785 名無しのライバー ID:47U7qOaUJ

悲報 ミカ、飯をたかられる

アラサーがVTuberになった話。書籍版6巻、コミカライズ版2巻発売中。

リアルスパチャよろしくお願い致します。

また、次にくるマンガ大賞エントリー受付中です。

本作コミカライズ版もエントリー対象ですので、是非Webマンガ部門へ投票お願い致します。

https://tsugimanga.jp/

コミカライズ版次回更新は5/10更新予定です

【6巻特典情報】

■メロンブックスさん

・6巻有償特典『女帝とニートの雑談』

・6巻通常特典『霧咲季凛 冬のお出かけ』

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2858940

■ゲーマーズさん

・6巻有償特典『柊冬夜と新戸葛音の立ち話』

・6巻通常特典『酢昆布 犬の散歩』

https://www.gamers.co.jp/pn/pd/10784300/

■アニメイトさん

・6巻特典『イラストカード』

https://www.animate-onlineshop.jp/products/detail.php?product_id=3061427

■BOOK☆WALKERさん

・6巻購入特典「で、結局誰なの……?」

https://bookwalker.jp/de20f47faa-f6af-4423-9e02-a85d519691a4/

コミカライズ版連載開始しています。

次回更新は4/26更新予定です。

https://comic-walker.com/detail/KC_005559_S?episodeType=first

コミカライズ版2巻の表紙は月太陽コンビです

こちらも限定版の特典付きがございます

■メロンブックスさん

ルナ・ブラン アクリルフィギュア

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2885514

■ゲーマーズさん

日野灯 アクリルフィギュア

https://www.gamers.co.jp/pn/pd/10786794/

これで1巻の特典だった脱サラをサンドイッチすれば炎上再現できます(多分)

リアルスパチャ何卒よろしくお願い致します!

A Thirty-Something Becomes a VTuber

A Thirty-Something Becomes a VTuber

アラサーがVTuberになった話
Score 4.6
Status: Ongoing Type: Author: Artist: Released: 2022 Native Language: Japanese
After quitting a toxic, overworking job on the brink of burnout, I, a thirty-something, somehow ended up becoming a VTuber named Kanzaka Rei under the virtual talent agency “UnderLive,” all thanks to my little sister’s persuasion. “I don’t really get this VTuber thing, but I’ll give it my all!” I thought, brimming with enthusiasm. However, in the female-dominated world of UnderLive, just being a male VTuber gets me bashed by viewers. To make matters worse, on just my second day, a fellow debutant causes a massive scandal, leading to their firing! Will this thirty-something VTuber, swarmed by haters, have any future at all!? …Well, it’s probably still better than working myself to death, right?

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