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A Thirty-Something Becomes a VTuber – Chapter 280

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×月×日

「き、緊張してきた……」

私にしては珍しく休日のお出かけ。いや、休日に出かけることはあっても図書館や本屋さん、塾に通うために外出はしているので、完全な引きこもり体質と言う訳でもない。ただ、世間でもてはやされている花の女子高生と表現するには些か華が足りない気がするけれど。学校生活では内申点目的で委員長やってるけれども、別段高い意識を持ってたりするわけじゃあない。テンプレートみたいな委員長みたいな見た目してるから、推薦されたってのもあるんだけれども。

クラスメイトの他の子みたいにオシャレに詳しいわけでもないし、男性とお付き合いしたりとかそう言った浮いた話ひとつもない。親から勉強だけはしなさい、と言うお約束みたいな言いつけを愚直に守るだけの生活。ここで補足しておくと親が勉強を強要したりとかではなく、「根詰め過ぎないでよ?」や「たまには息抜きしたり休んだり遊んだりしなさい」と言われる始末。

ただ私にはやりたいこと、したいことがない。いや、なかったんだ。珍しく私なりの目一杯のオシャレな服を選んで出掛ける姿を見た親が随分と嬉しそうにしていて、私って案外親不孝してたんだなぁと思ったりなんかもした。

今日はオフ会、というやつだ。ネットでやり取りしているとは言え実際に会うのは初めて。そう言う存在、名前だけは聞いたことはあったが、まさか自分がそう言うものに参加する側の立場になるだなんて思わなかった。最近知った、VTuberと言う文化。クラスメイトの子もハマっているようなアイドルを推すのと同じように、配信する彼ら、彼女らを応援するのも同じような『推し活』と言うらしい。

動画配信サイトのYourTubeで勉強をしながら、周りの子たちの話題に遅れないように流行っていると言われている音楽を聞いたり、動物や料理の動画を見ることがあった。料理はお母さんが得意で、お休みの日に教わりながら一緒に料理をするのが好きで、そう言った料理動画を見ることが多かったのだが、そんな中でオススメの動画として流れてきたのがとあるVTuberさんだったのだ。そして今回会うのも同じその人を推している人だ。

一応相手は女性であることは事前には確認してあるが、それでも不安感は拭いきれない。ネットで調べるとこういう時に女性と偽って、いざ会ってみると男性で肉体関係云々とかそう言うマイナス方面の事例が挙げられていたから不安になってしまう。

「えぇーっと、もう着いているって話で……」

足が不自由なのでなるべく広い場所、と言う事だったが……待ち合わせ場所に到着と同時にすぐに分かった。車椅子の女性が1人いた。良かった、きちんと女性だった。待たせてはいけないと思い、駆け足で向かう。だが、彼女の眼前に辿り着いたところで何と声をかけて良いのか分からなくなってしまった。こう言うの事前に何て声掛けするかきちんと用意してからにしておけよ、私!!

「あっ、えっと、あの……」

「推しの妹ちゃんの名前は?」

「雫ちゃん?」

「はい、正解。ふふっ、初めまして。いや、お久しぶり? いやいや会う事自体は初めてだから初めましてで良いのかな?」

彼女が手にしたスマホの画面を私に見えるように、差し出される。見ると私のアカウントとのチャットのやり取りが映し出されていた。優しそうなお姉さんで良かったとまずは一安心。周りの目があるので「お姉さん」と呼んでくれれば良いとのこと。確かにネット上での活動名などをこのような往来の場で言うのは確かに無駄に注目を集めてしまうかもしれない。ちなみにこっちのは本名を少しいじっただけのものだ。よくあるものなので、そこから何か個人を特定されたりとかするものではないと思う。多分。そもそもSNSのフォロワーなんて10人くらいしかいないし。ちなみに全部がVTuber関連での相互フォロワーさん。

「そっちの名前ってもしかして本名だったりする?」

「名前はよくあるやつなので」

「セイちゃんって呼ぶね」

「はい、大丈夫です」

渾名で呼ばれるのは珍しいのでちょっぴり嬉しい。お姉さんは車椅子で恐らくこれが足が都合が悪いと言っていた事を指しているのだと察する。茶髪のショートボブで笑顔が素敵なお姉さん。ひざ掛けをしており、その脇にはバッグ。チラリと見えたのは私とお姉さんの推しである『彼』が描かれた缶バッジだった。そうだ。私が彼を知る前に発売されていたというグッズだ。発売即完売されていて入手ができない貴重なアイテムだ。あ、後でお願いしたら見せてもらえるかな……?

「おー、おー、その子が新しく毒牙にかけられてしまった被害者ちゃんか……相変わらず可愛い子ばっかりで、忌々しいなぁ…………」

「あんたどこ行ってたのよ」

「お店の方に一応電話してた」

「あー、今回のお店選んでもらったんだったわね」

「その手の伝手だけは無駄にあるからなぁ」

「でしょうねぇ」

「我が影響力にひれ伏すがいい」

「ファンスレでゴミ扱いされてるけれど」

「愛されキャラクターと言って」

随分親しい様子の女性。陽の光が逆光となってお顔はハッキリとは見えないものの、もう1人参加予定のメンバーがいたので、それが恐らくそれが彼女だろう。確か名前が独特な感じだったと記憶している。確か――

「タワマン暮らしのアリエンナーさん?」

「あれ、ワイ今そんな名前にしてたっけ?」

「あんた毎回とんでもないユーザーネームにしてるわね。結構な頻度で名前変えるけど。これの事は駄馬で良いわよ、駄馬で」

「ダバ……?」

ダバさん? と言うのがお名前なんだろうか。以前から交流のあるお姉さんが言うのであればそうなんだろう。本人も特に嫌がっているような様子もないし。一方でそう言われてダバさんが手招きするのが見えた。日陰まで案内してくれる。そこで初めて彼女の顔を直視したのだが――

「どうもはじめまして。もう駄馬でも何でも良いや。セイちゃんよろ~」

とんでもない美人さんがいた。私はアイドルとか俳優さんとかにはそんなに詳しくはないけれども、なんだか漂うオーラがまずもって普通の人のそれとは違う雰囲気があった。人を惹きつける独特の雰囲気、そして存在感があった。セミロングの艶やかな黒髪で立ち居振る舞いひとつひとつが洗練されていて、髪をかき上げる仕草に思わず同性である私もドキリとさせられてしまうくらいだった。私が今まで見た人の中でいちばんきれいな人だった。それこそ比較対象がトップアイドルや女優さんが物差しになるくらいに。いや、寧ろそう言う人たちよりも……

「おーい? どうしよう。固まっちゃった」

「ガワだけは良いからね、あんた」

「ひっどいなぁ。いっつも言ってるやろ? ワイ超絶美人だって」

「言動でプラマイゼロどころかマイナスに振ってるけど」

「うせやろ? 可愛いは正義って言うじゃん。つまりワイこそが正義」

こんなに綺麗な人がすっごい砕けた口調でお話しているのを聞いて頭が混乱してしまう。その後混乱しながらも、今回お話するカフェに向かう事となった。お店の選定とかはダバさんがして下さったらしい。なんでも親族とお店のオーナーさんがお知り合いらしく、その縁で店を押さえたとか。なんかオトナって感じだ。私的にはその辺のファミレスとかファストフード店で充分なくらいだったんだけれども、よくよく考えるとお姉さんが車椅子と言う事も考慮してゆっくりと落ち着いた雰囲気のお店をチョイスしたのかもしれない。

「お待ちしておりました。お嬢――」

「そう言うのは不要です。今回は友人とお茶しに来ただけですから」

「かしこまりました」

お店に到着したと思ったら、お店のオーナーさんっぽい人が深々と頭を下げていた。わざわざ私たちの到着を待っていたようだった。それに今明らかに『お嬢様』と言いかけていた。所作が綺麗なのも、そうした良家のお嬢様と言うのが理由になっているのかな。それにしてもまるでドラマや漫画の世界の住民みたいな世界にいるような人が、現実にいるだなんて思わなかった。

「お互い人生相談コーナーで堕とされたってわけねー。ほーん、へぇー」

「いや、言い方ぁ!」

「わー、お揃いなんですね」

「純粋さが眩しいよ、ワイ……」

「セイちゃんに少しは邪悪な心を浄化してもらいなさい」

「?」

お互いに推しになった経緯を簡単に説明する。ダバさんは主に箱推しの人らしく、特別誰か1人を推していると言う訳ではないらしい。どちらかと言うと女の子の方を応援しているみたいで、彼女のお話を聞こうかと思ったんだけれどもお姉さんが「止めた方が良い。毒でしかない」とのこと。強火のオタクさんというやつなんだろうか? 少なくとも悪い人ではなさそう。たまにこっちの表情を眺めながら口の端から涎が垂れそうになっているのが若干気になるんだけれども、多分ここのケーキが美味しいからだろうか。

「あ、あの……お姉さんがバッグに付けてるそれってグッズのやつですよね?」

「ああ、うん。小癪な事にメッセージカードがランダムだったから複数買いしたのよね」

「私、彼の事知った時もう販売してなくて。現物見たの初めてなんです」

「ああ、そっかもう再販してないもんねぇ」

「それどころか昔のボイスとかも再販してなくて。せめてそれくらいはって思っちゃったりしてます」

「あ゛ー、わかる! んー、×月以降からのやつは全部買ってるけど。それ以前のはね……」

「私なんてつい数か月前からです」

毎月のイベントやその時々の季節感に合わせたボイスと言うものが販売されている。お小遣いでも充分買えるくらいのお手頃価格で、高校生の自分としては非常にありがたい。

「あのボイスすごいですよね。本当に」

「破壊力がねぇ。お前普段そんな事言わないじゃん、みたいな」

「そうです! そうです! でもそのギャップみたいなのがすっごくよくって。普段見せてない一面を自分に見せてくれてるんじゃないかって言う、気持ち悪い妄想しちゃいます」

「それはこっちも大体一緒。でも絶対あれ普段雫ちゃんにやってそうなんだよね」

「あー……妹ちゃんへの対応の時だけ本当に違いますもんね。カッコいいお兄ちゃんであろうとしてるって本人も言ってましたね」

「普段からああ言う調子で行けば良いのに誰にでも見せないからこそ、特別感がより際立つわけよね。それを素でやってるんだから末恐ろしい男よね」

「ですね」

こんな感じのお話で盛り上がってしまった。気が付けば2時間程経過してしまっている。普段高校の友人たちとであってもこの位長時間話し込むことは珍しいのに、実際にお会いするのは初めての相手にこれだけ自然体で会話が出来ている自分にもビックリだ。そもそも私はそれほど人付き合いとかが得意じゃないし、会話の引き出しが特別多いわけでもない。でも同じ趣味を持つ人同士だとここまで話が弾むものなのかと驚かされる。

「ワイヤレスイヤホンとか持ってる?」

「ええ、まあありますけれど?」

「一緒に聞く? 聞けなかったボイス」

「聞きます!!」

この後ボイスを聞かせてもらった。マルチペアリングと言う機能で私とお姉さん2人分の機器を接続することができた。てっきり1つにつき1接続までだと思っていたけれど、こう言う機能もあるんだなぁ。

今度スーパーチャット? と言うのが投げられるような配信があったら、今日聞かせてもらった分のボイス代金くらいはしっかり投げておかなくちゃ。え? ボイスの感想? お姉さんと2人でずっと悶えていたのはここだけのお話です。ちなみにその様を愉快そうな表情で眺めながら紅茶を優雅に飲んでいたダバさん。時折何かを呟いている様子だったけれど、イヤホンしていたので内容までは分からなかったけれど。

「でも……楽しかったなぁ。また今度会う約束をしたので、その時が楽しみだ」

バッグに1つ、お姉さんにお土産と言って譲って頂いた缶バッジを指でそっと触れる。今度お姉さんにも何かお返しできるように手土産でも買ってこなくっちゃ。今日は本当に楽しかったな。

『アラサーがVTuberになった話。』書籍版7巻本日発売です。

ラノベとは初動が大事と古事記にもそう書かれているので何卒リアルスパチャで応援頂けますと幸いです。

また、現在KADOKAWAのセールで各書籍電子サイトさんで1~5巻+短編集が半額でお買い求めいただけます。BOOK☆WALKERさん辺りだと更にポイント還元、特典SSも付いてくるのでこだわりが無ければそちらがオススメでしょうかね。

秋の読書のお供にどうぞご活用頂ければと思います。

【7巻特典情報】

■メロンブックスさん

・7巻有償特典『御霊カリン 因縁のコラボの背景』

・7巻通常特典『葵 陽葵 月と太陽と私』

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=3172426

■ゲーマーズさん

・7巻有償特典『朝比奈あさひ 僕なりのケジメ』

・7巻通常特典『犬神狂衣 足止めクイズ大会』

https://www.gamers.co.jp/pd/10828486/

■アニメイトさん

・7巻特典『イラストカード』

https://www.animate-onlineshop.jp/products/detail.php?product_id=3201852

■BOOK☆WALKERさん

・7巻購入特典『アレイナ・アーレンス「わたしの出番少なくない?」』

https://bookwalker.jp/deb61346c0-6428-4589-85a7-bdd0842e8e84/

A Thirty-Something Becomes a VTuber

A Thirty-Something Becomes a VTuber

アラサーがVTuberになった話
Score 4.6
Status: Ongoing Type: Author: Artist: Released: 2022 Native Language: Japanese
After quitting a toxic, overworking job on the brink of burnout, I, a thirty-something, somehow ended up becoming a VTuber named Kanzaka Rei under the virtual talent agency “UnderLive,” all thanks to my little sister’s persuasion. “I don’t really get this VTuber thing, but I’ll give it my all!” I thought, brimming with enthusiasm. However, in the female-dominated world of UnderLive, just being a male VTuber gets me bashed by viewers. To make matters worse, on just my second day, a fellow debutant causes a massive scandal, leading to their firing! Will this thirty-something VTuber, swarmed by haters, have any future at all!? …Well, it’s probably still better than working myself to death, right?

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