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A Thirty-Something Becomes a VTuber – Chapter 99

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9月×日

「うわぁ……」

人様の家に入って一言目に言うセリフではないと思うのだが、思わずそういう言葉が出てくるくらいの惨状であった。

「いや、うん……ごめん。片付け間に合わなかった」

ゴミ袋やら掃除機が出ている辺り直前まで片付けていたことが窺える、柊先輩。以前もお邪魔した事がある高層マンション(エントランス+コンシェルジュ付き)という物件。通信販売の段ボールやら、ゴミ袋やらで溢れ返っていた。今日はオフで先輩の家で先月Vertex大会の商品として頂いた高級なお肉の引換券を利用した、焼肉オフコラボ開催となった。ちなみに朝比奈先輩は午前中事務所で打ち合わせと収録があるとかで、夕方からの合流予定だ。

私は元々暇だったのもあって早めにこちらに合流して食材の買い足しなどを先輩と一緒に回る予定だったが、昨日先輩から「片付け手伝って」というSOS信号を受け取った。そりゃあもういつもお世話になっている身としては馳せ参じるのは至極当然。それに場所を提供してもらうのだから、このくらいの仕事はしても罰が当たらないというもの。逆にこの有様だと片付け甲斐があるというものだ。幸い時間にはまだ余裕があるし。

「そう言えば、先輩いつもは夏嘉ちゃんが通い妻しているんじゃなかったでしたっけ?」

「夏休み終盤から課題やらテストやらで忙しかったみたいでなぁ……いや、マジで情けねぇ……」

妹の夏嘉ちゃんが定期的に掃除やら料理やらをしていると以前聞いたが、この現状を見るに最近は来ていないようだ。『通い妻』という表現に関して一切否定しない辺り流石はシスコン。同じ妹を持つ身として気持ちはよく分かる。

「学生さんも休み明けは大変ですからねぇ。あ、これは捨てていいやつですか?」

「あ、うん。いらないやつ」

空になったジャムの瓶を指して問うと不要という返答があったので、ビン類をまとめた袋へ。口の広いタイプで何かに使えそうだったので一応確認してみた。我が家だったら自家製のジャムとか梅干しとか入れてると思う。口の広い大きな瓶って結構使い勝手が良いのだ。

段ボールをバラしてビニール紐で纏めておく、さて次は水回りというかキッチン周りだな。幸い定期的に夏嘉ちゃんが通っているだけあって、洗剤やら掃除道具は買い置きがあったりと中々に充実している。しかも私が普段使わない様なメーカーの物で、その洗浄力や効果にワクワクが止まらない。

事前に聞いた話では『偶然持っていた』との事だったが、明らかに未使用の真新しい無煙グリルを見るに、わざわざこのために購入したとしか思えない。わざわざそれについて言及するのも無粋というものだろう。ついさっき、それが入っていたであろう段ボールも片付けたし。

「完全に主夫だなぁ……うーん、俺が女だったら告白してるわ」

「なんですか、それ。あとこれ、お貸しいただいてよかったんですか?」

「妹から貰ったやつだし、普段全然使ってないからなぁ……後、流石に服汚すと困るだろうし」

「ほぼ全身をユ〇クロとワー〇マンでコーデしてるのでそんなに困らないんですけどね。元々匂い移ること前提の服装みたいなとこはありますし」

家事等あまりしない先輩がエプロンを持っていることが少々意外と失礼なことを思ったが、どうやら夏嘉ちゃんからの贈り物らしい。表立っては色々兄に対する不満を呟きながらも、こういうところを見ると何だかんだお兄ちゃん大好きっ娘なんだなぁーと思ってしまう。一時アニメで流行っていた『ツンデレ』というやつか。我が家のマイシスターも似たところがあるし、思春期の子だとどこも同じなのかもしれない。

◇◆◇◆◇◆

「ちょっとお兄ィ! まだ片付け終わってないってどういう事?! 今日、夜にお客さん来るんでしょうが!」

ロックの外れる音がして、勢いよく開け放たれる扉。ここはオートロックで、暗証番号か指紋認証による解錠が必要になる。つまり今入ってきた人物は関係者、それも先輩のことを『お兄ィ』と呼ぶ人物。つまりは……この娘が夏嘉ちゃん、か?

「来るなら来るって言えよ。今お客さん来てんだからさぁ」

「あー、どうもお邪魔しています」

「……ぅぇ? お、客さん…………? えっ、あっ、その声……って。あっ、あっ……」

こちらをじっと見つめて固まってしまう彼女。肩を外気に晒すアウターに、ホットパンツという目のやり場に少し困る程度には露出が多い。ある意味彼女のガワと通ずるものがある。目は少し吊り目気味で口調も合わせると気の強い女の子なのだろうか、とかどうでも良い事を考えていた。目元はお兄さんとそっくりだ。思わず先輩の顔を交互に見比べて「おー」と声を上げてしまう。兄妹だ。すごい似てる! ウチはあんまり似ているとか言われないからなぁ。

「えーっと、どうも初めまして?」

「ぁぅあぅ……ちょっと洗面所借りるからー!!」

洗面所とシャワールームがある脱衣所へと慌ただしく駆け込んでいく彼女の背中を見守る。背中もパックリとえらいことになっていたが、本当に大丈夫なのだろうか。ちょっと露出多すぎない? 人様の家の事とは言え流石に心配になってしまう。妹がそんな恰好していたらお兄ちゃんお気持ち表明しちゃうと思うの。

「なんかこう……凄いですね」

「いつもあんな感じだぞ。兄としてはもう少しお淑やかになって欲しいとも思うが、そのままのああいうのもお兄ちゃん的には嫌いじゃないんだが」

「同じ兄としてはその辺の感情は分かります」

同年代年頃の妹を心配に思うシスコンの気持ちは痛いほど分かる。

「何だか悪い事をしてしまいました」

「ん……?」

「だってほら、私ってリアルがこんなじゃないですか」

私の容姿はお世辞にも整っている、世間一般で言うイケメンなどと言う言葉には縁のない顔。mikuriママの描くバーチャルの私――神坂 怜とは比ぶべくもない。これといって特徴があるわけでもない、どこにでもいるようなただの一般人だと言う自覚はある。少なくとも嫌悪感を抱かれない様に清潔感には気を配っている……つもりだ。だが、今時の若い子から見るとどう思われるんだろうか。

「毎月ボイス買って感想までくれてるのに、何だかがっかりさせちゃったりしてないかと思うと申し訳なくて……」

「てぇい!」

中指で額を軽く弾く――デコピンというやつだ。これっぽちも痛くない。そして、彼は続けて言った。

「あいつはそういうので人を判断しねぇよ。まあ、多少はガワの好みもあるんだろうけれども。外面だけの奴をあいつは、あそこまで気に入ったりはしないっての」

「お前、ほんとそう言うところだぞ」と言いながら少し気恥ずかしくなったのか、視線を逸らしてから片付け作業へと戻って行った。『そういう所、先輩そっくりですよ』なんて言いそうになってしまった。あの娘もきっと兄に似てお人好しなのだろう。そう思うと何だか微笑ましく思えてしまう。彼女の事、勝手に決めつけてしまうなんて大変失礼な話だ。猛省、猛省。

「さ、さっきは失礼しました」

脱衣所から出てきた彼女。どうやらお化粧を整えていたらしい。そりゃあ年頃の女の子が家族以外の人と対面するのだから、その辺り気になってしまうのは仕方のないことだろう。服の露出が多いのが恥ずかしいのか、或いは兄以外の他人に対して人見知り気味なのか分からないが、もじもじとアウターの裾を延ばして太ももの露出を隠すような素振りをしていた。そういうの逆効果だと思うんだけれども。まあ他に人が居ないから、良いのかな? 後々絶対兄である先輩から指導ポイントが入ることだろうし。

――ああいう服、うちの妹が着ても似合いそうだなぁ……

だとか、至極関係のないことを胸中で考えていた。

「あの、その、ずっと応援してて、あのえっと……しゅきです!」

何度かそういう類の言葉を投げかけられたことはあったが、こういう心の篭った言葉と言うのは初めてだ。なんだか、妙にくすぐったい。それも面と向かって言われる事なんて。

「神坂ァ!! SNSに書いてやるぅ! 妹があああああ、うちの妹がああああ!」

マイシスターが同様の行動を取ったら多分私も似たような反応しちゃうので、あまり茶化したりもできない。あ、何か想像しただけで胃が痛くなってきた。

◇◆◇◆◇◆

あんだーらいぶを語るスレ XXX配信目

216 名無しのライバー ID:/6VGrCYu0

昨日堂々と宣言しておいてこの有様である

――――――――――――――――――――――――――――――

柊冬夜@やっぱ野菜より肉@Hiiragi_underlive

やばい部屋の片付け終わんない。゜(゜´Д`゜)゜

――――――――――――――――――――――――――――――

217 名無しのライバー ID:Z+sg4/k4T

>>216

夜に「片付け終わんないよぉ」と弱音を吐きながら

部屋を片付ける配信をしていた模様

218 名無しのライバー ID:8LnNz8Isl

>>216

夏嘉ちゃんの通い妻で部屋は維持されているのではないのか?

219 名無しのライバー ID:Vm17cfzOO

>>216

あれ? 夏嘉ちゃんが家事をしに定期的に通ってるんじゃ……?

220 名無しのライバー ID:kWh4lbUFl

まあ学生やし休み後半から休み明けはテストとか課題やらで忙しいんだろ

SNSでもテストがんばるとかツイートしてたし

221 名無しのライバー ID:88ilK7NA+

特に画像もないただの部屋掃除配信で3000人集める男

222 名無しのライバー ID:6H4IrbfRC

ゲリラ配信+深夜から明朝というデバフ要素盛り盛りでこの数字は流石としか言えんわ

223 名無しのライバー ID:5R9x9Vcw/

果たして午後までに間に合うのか

朝になって配信一旦切って、それ以降なんの音沙汰もないが

224 名無しのライバー ID:2TcsEagUc

寝落ちしてそう

225 名無しのライバー ID:3H2bFYLn0

なんならチームメンバーで掃除するところから始めそう

226 名無しのライバー ID:MoBthread

んなああああああ?!

――――――――――――――――――――――――――――――

柊冬夜@やっぱ野菜より肉@Hiiragi_underlive

午前中暇ということで手伝いに来てくれた神坂ァ!君

世話焼きマイシスターまさかの邂逅

初対面で「しゅき」とかお兄ちゃん許しません

――――――――――――――――――――――――――――――

227 名無しのライバー ID:ZsL/4dDzl

>>226

ファーww

228 名無しのライバー ID:2yiO+L7+r

>>226

あかん、これじゃあ脱サラがまた燃えるぅうう!

229 名無しのライバー ID:PKr7qfajM

>>226

い つ も の

230 名無しのライバー ID:Lfq0hKDNf

最近なかったし逆にちょっと安心感すらあるよな

231 名無しのライバー ID:YPCYlRc+0

それな

232 名無しのライバー ID:DhYdDnXi/

しかも身内が嬉々として燃やしに行ってるのは笑う

233 名無しのライバー ID:v3tR+YmvS

下手に隠して後から発覚するよりかは、

ネタとして消化する方が結果的には丸く収まりそうではある

234 名無しのライバー ID:/yjcJmu06

初対面で「しゅき」とか実質告白なんですが、それは

235 名無しのライバー ID:OV2QXtlk4

夏嘉ちゃんが脱サラガチ恋勢なのは前からだろ

236 名無しのライバー ID:XehwmKg0t

ガワなしのリアルでその言葉が出るってまさか、お前イケメンなのか……?

237 名無しのライバー ID:V7vVS/8K3

言動はモテそうだが、雫ちゃん曰く滅茶苦茶『普通』らしいから……

238 名無しのライバー ID:GqrfoCQto

ええー? ほんとにござるかぁ?

239 名無しのライバー ID:gckineki/

ぶっちゃけ中の人スペックが高いからなぁ

・料理◎

・声◎

・性格◎

好きになるのも頷ける

このスペックで見た目普通って現実として見れば良物件すぎるし

わざわざ早めに来て朝から片付け手伝うくらいだし

ハッスがイベで会った時感想が『良い人すぎる』だし、それが逆にネックになってそう

240 名無しのライバー ID:RFrL91Tt+

典型的な良い人止まりな人だー

でも漫画ならメインより人気が出るキャラ

241 名無しのライバー ID:zamQZEKqu

彼は人気ですか……?

242 名無しのライバー ID:I8/Iyjt9Y

人気は……ナオキです

243 名無しのライバー ID:zKSQV0TMn

ぶっちゃけ小火だろうが名前が売れるならお得だからなぁ

炎上すらしなくなったらマジで空気だぞ、あいつ

244 名無しのライバー ID:YR93PRqNn

食材調達のためにお買い物へ行く一行

245 名無しのライバー ID:MoBthread

――――――――――――――――――――――――――――――

神坂怜@妹大好き@kanzaka_underlive

なんだかんだ言いつつ、車道側は必ずキープする先輩

文句を言いつつずっと会話続けている夏嘉ちゃん

うーん、これ私いらなくない?

――――――――――――――――――――――――――――――

246 名無しのライバー ID:wjX96xQw0

>>245

この兄妹も大概よな

247 名無しのライバー ID:uVowdTDen

>>245

脱サラ実はブラコンの隠れ蓑にされている説

248 名無しのライバー ID:L8VcDv0lp

>>245

うーん、このシスコン&ブラコン

249 名無しのライバー ID:4C3IRotzX

ツンデレ妹キャラとか古の属性やな

嫌いじゃない

250 名無しのライバー ID:MoBthread

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柊夏嘉@natsuka_hiiragi

馬鹿兄「やだ、野菜嫌だぁ!」

怜くん「ダメです、お肉だけじゃバランス悪いでしょ」

馬鹿兄「ぐぬぬ……」

怜くん「デザートも入れるから、お野菜は食べましょうね」

馬鹿兄「わーい」

なんだ、この糞ガキ

どっちが先輩なんだ、これ

ママみを感じる

――――――――――――――――――――――――――――――

251 名無しのライバー ID:oZcQtqzNW

>>250

ただのオカンやんけぇ!

252 名無しのライバー ID:06nUrghnN

>>250

ママやん

253 名無しのライバー ID:XX/qXrzxE

>>250

レイちゃん(脱サラバ美肉のすがた)に新たな属性が追加されてしまった

254 名無しのライバー ID:2TbHBgth3

これにはお姉さま方もニッコリ

255 名無しのライバー ID:K13m7xrYd

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柊冬夜@やっぱ野菜より肉@Hiiragi_underlive

会計時に流れるようにどこからともなくマイバッグ取り出すのすこ

後会計金額全部計算してるのすげー

けど電子マネー決済初めてらしくて手間取るのかわいい

――――――――――――――――――――――――――――――

256 名無しのライバー ID:AdBpS+CKa

>>255

257 名無しのライバー ID:vH8ZEczsR

>>255

中身ただの中年主夫やん……

258 名無しのライバー ID:lfw/P5EKZ

>>255

電子マネーで手間取るとかおじいちゃんかよ!

259 名無しのライバー ID:rJseXDfJQ

現金派はまあいるからな……

260 名無しのライバー ID:BzpqkzyED

女子力というよりオカン力が高いだけなのでは……?

261 名無しのライバー ID:MoBthread

mikuri@C9X新刊委託販売中@mikuri_illustrator

ラフ画だけど電子マネー決済に苦戦する神坂怜君を描きました

pic.vitter.com/rakugaki

262 名無しのライバー ID:o65zjXJsx

仕事早すぎて笑う

263 名無しのライバー ID:RP2sqCEp+

楽しそう

264 名無しのライバー ID:J72/KYFxR

マジで仲良いな、この2人

265 名無しのライバー ID:W96ttowqE

実は箱内でナンバーワンカップリングはこの2人説

266 名無しのライバー ID:gckineki/

あ゛?!

最高かよ

ブックマーク、☆など頂けると今後の活動の励みになります。

A Thirty-Something Becomes a VTuber

A Thirty-Something Becomes a VTuber

アラサーがVTuberになった話
Score 4.6
Status: Ongoing Type: Author: Artist: Released: 2022 Native Language: Japanese
After quitting a toxic, overworking job on the brink of burnout, I, a thirty-something, somehow ended up becoming a VTuber named Kanzaka Rei under the virtual talent agency “UnderLive,” all thanks to my little sister’s persuasion. “I don’t really get this VTuber thing, but I’ll give it my all!” I thought, brimming with enthusiasm. However, in the female-dominated world of UnderLive, just being a male VTuber gets me bashed by viewers. To make matters worse, on just my second day, a fellow debutant causes a massive scandal, leading to their firing! Will this thirty-something VTuber, swarmed by haters, have any future at all!? …Well, it’s probably still better than working myself to death, right?

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