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Alchemist Startover – Chapter 333

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露店エリアを進むにつれ、賑わいが増していくのを実感する。まだ昼時には早いということもあって、訪れた人々はまずはスイーツや飲み物を目当てに列を成している。

特にリゼルとグーテンブルク坊やが呼んだ綿飴屋は、本物の果物を使った色とりどりな見た目も相まって、早くも黒山の人だかりが出来ていた。

「すごい人気だね~」

「あれではどこに何があるかわかったものではないぞ。わらわが迷子ではないことが、これでわかったであろう?」

額に手を水平に当てて声を上げるアルフェの横で、ハーディアが不機嫌そうに腕組みをしている。出会った時に手にしていたアイスクリームは、歩いているうちにいつの間にか食べ終えたようだ。

「ちょっと並ばないとだね。ハーディアちゃん、大丈夫?」

学園の生徒だけではなく、外部の一般客も入っているため、かなり待つことが予想される。日差しが強いと思われるエリアにはあらかじめ大きな日除けを渡してあるのだが、綿飴の列の最後尾は既にそこからはみ出してしまっている。

「せっかくわらわが直々に食べに来てやったというのに、並ばされるとはな……。まあいい、空いているうちに他を案内してもらおうか。お前たち、詳しいのじゃろう?」

そう言ってぷいと綿飴の露店に背を向けるハーディアは、どうやら並んだり待ったりするのが苦手のようだ。

「元からそのつもりだったし、もちろんいいよ」

アルフェが優しく応え、僕とホムも頷いた。僕としても貴重な時間を綿飴の列に並ぶことに費やすよりは、F組のクラスメイトや他の生徒たちの露店を見て回った方が良いと思っていたので、助かった。

「ではあの、射的とやらを見せてもらおうか」

「射的?」

ハーディアが指差す方を見ると、店先に立つアイザックの姿が目に入った。

「ああ、そういえば機兵を景品にしたゲームを行うという話だったね」

「ワタシたちの機兵もあるんだよね。行こ!」

アルフェが笑顔で僕とハーディアの手を引き、ホムがその後ろに続く。

「アルタードもあると聞いたのですが、どうも箱にしか見えませんが……」

最も視力の良いホムが遠くから露店の様子を窺いながら不安そうに呟く。機兵そのものの展示を打診されていたのだが、少なくともここにはないらしく、あるのは景品のミニチュアだけだ。

「そのままだと、射的とやらで落とした時に壊れてしまうからじゃないかな?」

見れば、初等部の少年とその保護者がゲームを楽しんでいるところだ。射的という名前からも推測出来るように、どうやら模擬の小型魔導砲を使って景品の的を狙い、撃ち落とすことが出来れば自分のものになるというルールらしい。

「あ! でも、あっちにホムちゃんのアルタードが飾ってあるみたいだよ」

アルフェが示した先には、会計を担当するロメオの姿があり、レジの隣に塗装されたアルタードが飾られている。その隣には、アルタードの前身であるナイルの機体も並んでいた。

「ほうほう。子供の玩具にしては上等上等。なかなかのものじゃな」

ハーディアが腕を組み、感心したように小さな機兵に目を細める。

「おお、誰かと思えばリーフ殿!」

僕たちの姿に気づいたアイザックが、嬉しそうに尻尾を振りながら駆け寄ってくる。

「……おや? そこのご令嬢は……?」

「ご令嬢ではない、わらわにはハーディアという名があるぞ」

ハーディアはアイザックの問いかけに、ふんと鼻息を吐くとロメオの方を指差した。

「おい、そこのお前。わらわはその格好いいやつを所望する」

「こ、これは売り物じゃなくて……。景品はあっち……」

いきなりハーディアに指をさされたロメオが、動揺を隠せない様子で階段上の台に並べられた箱の景品を指差す。

「ほうほう。箱の中に入っているのじゃな?」

「あ……えっと……、話せば長くなるのでござるが、ちょっと手を入れる必要があるでござる」

テーブルの上の模擬魔導砲を手に取ろうとするハーディアを慌てて制しながら、アイザックがもごもごと口を動かす。

「簡潔に説明しろ。わらわは、あれと同じものがほしいと言っておるのじゃぞ?」

「つ、つまりこういうことでござる!」

険しく眉を寄せるハーディアに、アイザックが箱の蓋を開けて中身を示す。

「なんじゃこれは!?」

ハーディアが叫んだのも無理はない。中に入っていたのは、塗装もされていないうす灰色の細かなパーツの寄せ集めだったからだ。

「これが欲しいと言っているのに、こっちを寄越すのか!? なぜバラバラにしている? さっさと組み立てればいいものを!」

意味がわからないと言いたげにまくし立てるハーディアに、アイザックとロメオは顔を見合わせ、それから思い直したように堂々と口を開いた。

「これを組み立てること……。すなわち自分の手でこのアルタードを始めとした機兵を組み立てること、それこそが浪漫なのでござる」

「そう。機兵なんて早々自分で組み立てることは出来ない。けれど、僕たちが考えたこのパーツを組み合わせれば、自分で機兵を完成させる喜びを味わうことができるんだよ!」

ああ、なるほど。言われて良く見てみれば、設計図に記したパーツと似たような部品が沢山あるな。本物の機兵を自分で製造するような機会に恵まれることは、皆無といってもいいぐらいだが、こうして趣味のものとして小型・軽量化されていればその楽しみだけを享受することが出来る。

「ははん。なるほどな。その浪漫とやらでこの作業すら楽しめるというわけか……。わらわには理解できぬが、お前たちが心から好いてやっていることぐらいはわかるぞ」

「おお、わかってくれるでござるか、ハーディア殿」

少女ハーディアからの理解が得られたのがよほど嬉しかったのか、アイザックとロメオが嬉しそうに肩を抱き合う。

「しかも、どうやらここもリーフたちと強い関わりがあるようだ。お前たちもせいぜい励め。その励みを楽しみにさせてもらおう」

ハーディアがそう言って微笑むと、その場の空気がさらに温かく和やかなものに変化した。

「あ……ありがとう……」

ロメオがアイザックと揃って頭を垂れ、ハーディアを見送る。ハーディアは二人の見送りに片手を挙げて応じると、遠巻きに射的屋を見ていた少年たちに目で何かを伝えた。

「……ありがとう、お姉ちゃん!」

「すげー! アルタードとレムレスがある!」

「ねえねえ、エーテル遮断ローブは~!?」

遠巻きに見ていた少年たちは、どうやら僕たちに遠慮していたようだ。ハーディアの目配せを合図に、わっとアイザックとロメオに駆け寄った。

「もちろんあるでござるよ~! エーテル遮断ローブは数が用意出来なかったので、早い者勝ちでござる!」

「セレームサリフもあるから、是非狙ってよ」

「うぉー、すげー!」

会話の内容から、かなりの機兵好きの少年たちということが僕にもわかる。アイザックとロメオは未来の同志とばかりに、彼らを手厚くもてなしている。少年たちは目をキラキラさせ、射的そっちのけで機兵談義に花を咲かせはじめた。

「なんだなんだ? 楽しそうだな」

通りすがりの一般客がその様子を見て、集まっていく。最初は空いていた射的屋は、瞬く間にたくさんの人だかりが出来た。

「ありがとう、ハーディアちゃん。みんなを案内してくれて」

「そわそわと話したそうにしていたから、チャンスをやっただけだ」

「素晴らしい観察眼とお見受けします」

アルフェとホムに褒められたハーディアは、少し得意気な笑みを浮かべ、僕をちらりと見遣った。

「このくらい出来ねば、わらわの仕事は務まらぬのじゃ。さて、そろそろ腹が減ってきたぞ。なにか旨いものを喰わせてくれ」

ハーディアが尻尾を揺らしながら、辺りをぐるりと見回す。ちょうど、またしょっぱいもの系を出す青のストライプが目印の露店エリアに差し掛かっていた。

「それじゃあ、ヴァナベルちゃんたちのカオス焼きにしようよ。ちょうど今、空いてるみたいだし」

「わたくしもそれが良いと思っていました。一走りして参ります」

アルフェの提案にホムが頷き、露店へと駆け出して行く。露店の中では、ヴァナベルとヌメリンが忙しそうにカオス焼きを焼いている姿が見えるが、客は疎らだ。

「なんだ? そのカオス焼きというのは?」

「出汁の利いた小麦粉の生地の中に、いろんな具材が混じって入ってるの。たくさんの味が楽しめるし、何が入っているかはお楽しみだし、とっても楽しいんだよ」

アルフェの説明にハーディアは首を左右に傾げ、不思議そうに空を仰いだ。

「それで混沌か……。よくわからぬが、あの綿飴の生みの親であるお前たちが言うのであれば、まずくはないのだろう。どれ、喰ってやろう」

ハーディアが露店の近くにあったベンチに腰かけ、催促するように手を出す。その手には、あまり見たことのない古い硬貨が乗せられていた。

Alchemist Startover

Alchemist Startover

Alchemist Startover ~The unloved alchemist that died alone was reborn as a little girl~, アルケミスト・スタートオーバー ~誰にも愛されず孤独に死んだ天才錬金術師は幼女に転生して人生をやりなおす~
Score 7
Status: Ongoing Type: Author: , Released: 2021 Native Language: Japanese
Once an orphan turned street child, and later almost killed by a foster father, the genius alchemist Glass Dimelia had walked a life of misfortune. Ravaged by illness at a young age, Glass devoted himself to his final research in a desperate bid to defy death, only to be sentenced to execution by a Kamut, the agent of the goddess, for touching the forbidden. Unable to resist, Glass was condemned, but was praised by the goddess Aurora for his achievements in alchemy during his lifetime and given the opportunity to “reincarnate.” Although he was supposed to be reborn as a new life with all memories erased, due to the unilateral decision of another goddess, Fortuna, he was allowed to reincarnate while retaining his memories. Glass reincarnated three hundred years after his death. Born as a baby girl, Glass was named Leafa by her parents and embarked on a new life. This is the story of a lonely alchemist who didn’t know what happiness was, coming to know love, and seizing happiness with her own hands.

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