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Alchemist Startover – Chapter 379

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ハーディアとミネルヴァの見送りに、アルフェと共に講堂前の広場へと移動する。

避難していた生徒たちが講堂から移動したことで、随分と静かになっている印象を受けた。一方の校舎の方では、生徒たちの声が聞こえてくる。魔族の脅威が去ったとあり、明るい笑い声が混じるのを聞き取ろうとしているのか、ハーディアは暫く黙していた。

「……もう復興に向けて動いているか……。こういうときの人間は、強く逞しいな」

「戦うばかりが強さじゃないんだよね。大事なものを守ることだって、すごく大切なことだから」

アルフェがハーディアの言葉に頷きながら、自分の考えを述べる。アルフェの言葉を聞いたハーディアは満足げに微笑み、僕へと視線を移した。

「その通りじゃ。益々勉学に励むのだぞ、お前たち」

この学園で学ぶことの意義を改めて感じながら、頷く。ハーディアがわざわざ僕たちに学びを促したことは、僕たちが思っている以上に、重要な意味があるはずだ。

「しかし……。見送りのひとつもないとは、寂しいものだな」

ハーディアが校舎の方を見上げながら、所在なさげに翼を動かしている。その気になればいつでも羽ばたけるのにそれをしないハーディアに、アルフェは嬉しそうに微笑み掛けた。

「そんなことないよ」

そう言うと、アルフェは拡声魔法を発動させ、校舎に向かって声を張り上げた。

「みんなー! 黒竜神様がお帰りになるよーーー!!!」

アルフェの合図で、校舎の窓が一斉に開き、生徒たちが姿を見せる。それと同時に、鮮やかなフラワーシャワーをこちらに向けて振り撒いた。

風魔法で優しく運ばれる花びらは、龍樹のものだ。ハーディアへの敬意を表すそれらは、折り紙でひとつひとつ丁寧に作られている。きっとアルフェたちが計画し、ハーディアたちが学園を去る前に間に合わせたのだ。

「ありがとうございます!」

「助けにきてくれて、本当に嬉しかった!」

「黒竜神様!」

生徒達が声を張り上げ、大きく手を振り、或いは何度も会釈したり両手を合わせて拝む仕草を繰り返しながらそれぞれに感謝の意を述べる。

「生徒会のみんなも、ありがとう!

「すげーぞ、リゼル! ライル!」

「1年F組は学園の誇りだよーーー!!」

生徒達の声が、ハーディアへの感謝の言葉から生徒会のメンバーへと広がっていく。なにかと思えば、校舎から生徒会の皆がハーディアの見送りのために姿を見せたのだ。皆、それぞれに籠いっぱいに入れた龍樹の花を撒きながらハーディアに近づくと、恭しくその場に跪き、頭を垂れた。

「はははっ、これはまた派手な見送りじゃな」

目を輝かせるハーディアは、これまでにないほど上機嫌な笑顔を見せると、ヴァナベルたちに立ち上がるように促した。

「へへっ、祭りの最後なんだ。こんくらい派手にやったって罰は当たらないだろ」

「サプライズ大成功~~!」

ヴァナベルとヌメリンが嬉しそうに龍樹の花を空に向かって振り撒く。それらはどこからともなく吹いている優しい風に運ばれて、講堂前の広場を中心に広がっている。

「こんなにたくさんの花……。これは一体……」

不思議そうに宙を舞う花びらを見上げるミネルヴァが、手を伸ばしてその中のひとつを摘まみ取った。

「みんなで黒竜神様にお礼をしたくて、準備したんです。龍樹の花は季節的に手に入らないから、折り紙を使って作りました」

「ほうほう。なかなか上手く出来ておるぞ」

ハーディアが手を伸ばして花びらに紛れていた花を引き寄せる。

「記念にひとつ貰っていこう」

髪に差し込んだハーディアが微笑みかけると、アルフェが嬉し涙に目を潤ませて頷く。

「「アルフェの人!」」

また柔らかな風が吹いたかと思えば、今度はリリルルだ。二人はいつものようにくるくると踊りながら僕たちに近づいてくる。

「うん!」

リリルルが何を言わんとしているのか真っ先に理解したアルフェが、リリルルと手を取り合って、くるくると踊り出す。楽しげなその輪にヴァナベルとヌメリン、ファラも加わり、リゼルとグーテンブルク坊や、ジョストも負けじと踊り出す。

楽しげに踊る面々に校舎の生徒たちから手拍子が起こると、ハーディアもうずうずとした様子で身体を動かし、皆の輪の中に飛び込んでいった。

「おお、余興だな! わらわも混ぜろ!」

その様子を咎めるでもなく、ミネルヴァは目を細めて見つめている。足がハーディアが踏むステップのリズムに合わせて動いているのを見つけて、僕は穏やかな気持ちになった。

「……止めないんですね」

「水を差すと機嫌を損ねるからな。それに、あの楽しそうなお顔を見たら、とても……」

ミネルヴァの表情は優しげで、ハーディアへの尊敬に溢れている。それだけではない、もっと特別なものを感じ取り、僕は思わず問いかけた。

「ハーディア様のことが、好きなんですね」

「好き? ……ああ、そうだな。好きという言葉では生温い。私は、この世の誰よりもハーディア様を愛し、お慕い申しあげている。この寵愛の証を頂いた頃から、ずっとな」

ミネルヴァはそう言いながら、愛しむように額の紋章に触れる。

優しい表情のミネルヴァには、ある種の親近感を覚える。普段こうした顔を見せないのは、それだけハーディアへの想いが特別であるからなのだろう。黒竜将という大役を務め続けるにあたり、時にその感情を押し殺さなければならない場面もあるに違いない。自由に振る舞いたがるハーディアに厳しく釘をさしつつも、今のようにハーディアが好きに振る舞える時間を設けているのがその証なのかもしれない。

ああ、それにしても愛する人の笑顔を見るのは本当に嬉しいものだな。僕がアルフェに抱いている気持ちもミネルヴァがハーディアに抱いている気持ちも、同じ『愛』なのだ。

くるくると踊る生徒会の面々に、校舎から飛び出してきた生徒たちがいつの間にか加わっている。いつもは眺めているだけのホムも、今回は一緒だ。

生徒達の手拍子に、演奏が得意な生徒たちの楽器が合わさり、即興で優しく明るい旋律を紡いでいく。それはやがて『感謝の祈り』に変わっていき、花びらを巻き終わるのに合わせて余韻を残しながらゆっくりと止まった。

誰ともなく起こった拍手は、やがて万雷の拍手へと変わる。その拍手と笑顔がハーディアへと集中すると、示し合わせたように静寂が訪れた。

「うむ、実によい余興であった! やはりこれくらい派手な方がわらわ好みじゃな!」

ハーディアが笑顔で話し、生徒たちに向けて拍手を贈る。皆、サプライズの成功と、ハーディアからの称賛に深く頭を垂れた。

「さあ、今度こそ帰りますよ、ハーディア様」

余興を楽しむハーディアを見守っていたミネルヴァが、いつもの少し険しい表情に戻り、ハーディアを急かす。

「まあ、待て。ミネルヴァ。わらわに祭りの余興を用意した子供たちに、一言述べさせよ」

ハーディアは柔和な笑顔でそれを受け流すと、優雅に翼をはばたかせて、宙に浮かび上がった。

「カナルフォードの子供たちよ。此度の行い大儀であった。今日、ここで体験したことは必ずやお前たちの将来の糧となるだろう。困難に立ち向かう勇気を胸にこれからも精進するがいい。汝らの行く末に黒竜の加護があらんことを!」

凛とした声が、拡声魔法とは全く異なる響きで僕たちへの祝福を伝えてくれる。心に響くその声に僕たちが頷くのを満足げに眺めたハーディアは、ミネルヴァと共にそのまま宙に掻き消えた。

「……行っちゃったね」

ハーディアのエーテルの気配を追っていたのだろう。暫く虚空を眺めていたアルフェが、寂しげに呟く。

「うん。でも、きっとまた会えるよ」

別れの言葉を最後に紡がなかったのは、ハーディアにもその心づもりがあるからだ。何故かはわからないが、そんな確信があった。

「外は冷えます。そろそろ校舎へ戻りましょう、マスター」

「そうだね。生徒会の仕事もたくさんあるだろうし」

「にゃははっ! そりゃもう山積みってヤツだぜ」

ホムと生徒会の面々が合流し、僕たちは校舎へ向けて歩き出す。日が落ちて冷たくなった風に遊ばれる龍樹の花びらが、ハーディアを名残惜しそうにまだ見送っている。

「どうしたの、リーフ?」

「綺麗な景色だから、エステアにも見せたかったな」

アルフェに問いかけられ、僕は宙を舞う花びらのひとつを手に取る。

「間に合わなかったのは残念ですが、その分話をしましょう。きっと喜びます」

ホムも僕に倣って花びらを手に取ると、目を細めて眺めた。報告書作成のために校舎を離れているエステアも、きっともうすぐ戻ってくるだろう。そんなことを考えていた、その時。

「リーフ殿!」

「大変だ! エステアさんが!」

アイザックとロメオの悲鳴のような声が、僕たちを引き止めた。

「エステア殿が、イグニスを追いかけて地下道に入ってから戻らないでござる!!」

Alchemist Startover

Alchemist Startover

Alchemist Startover ~The unloved alchemist that died alone was reborn as a little girl~, アルケミスト・スタートオーバー ~誰にも愛されず孤独に死んだ天才錬金術師は幼女に転生して人生をやりなおす~
Score 7
Status: Ongoing Type: Author: , Released: 2021 Native Language: Japanese
Once an orphan turned street child, and later almost killed by a foster father, the genius alchemist Glass Dimelia had walked a life of misfortune. Ravaged by illness at a young age, Glass devoted himself to his final research in a desperate bid to defy death, only to be sentenced to execution by a Kamut, the agent of the goddess, for touching the forbidden. Unable to resist, Glass was condemned, but was praised by the goddess Aurora for his achievements in alchemy during his lifetime and given the opportunity to “reincarnate.” Although he was supposed to be reborn as a new life with all memories erased, due to the unilateral decision of another goddess, Fortuna, he was allowed to reincarnate while retaining his memories. Glass reincarnated three hundred years after his death. Born as a baby girl, Glass was named Leafa by her parents and embarked on a new life. This is the story of a lonely alchemist who didn’t know what happiness was, coming to know love, and seizing happiness with her own hands.

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