「加護の細かい仕様については置いておいて……先程ティシアちゃんも言っていたが探究神の加護は異世界人に分かりやすいように調整されているんだろう?」
「ええ」
「このコボルドは加護の内容を理解する以前に、加護を授かっている事すら認識できないんじゃないか?」
「……デミトリが作業してる間に色々と確認したって言ったでしょう?」
「? ああ?」
「この子の加護をデミトリが干渉出来るように細工がされてたわ」
いよいよ意味が分からなくなってきたな……。
「……どう言う事だ??」
「ある呪文を唱えると、デミトリがこの子の進化先を選ぶ事が出来るの」
まさか……。
「ちなみにデミトリが出会ってきた異世界人の中には、授けられた加護の影響で似たような事が出来る子が何人かいたわよ?」
「嘘だろう……」
頭の中に一つの単語が思い浮かんだが、とてもでは無いが口に出す気にはなれない。
「保護だけして、加護の存在を忘れるのはーー」
「デミトリがそうする事も予想してたみたいよ。進化に必要な力が溜まった状態で放置したら……器が力に耐えきれなくなるわ」
「……人の心がないのか?」
「人じゃなくて探究神だから……言い訳にならないけど」
「……」
探究心を満たすことさえできれば何をしても良いと考えているのか? 余りにもふざけている……。
「デミトリ、あまり急かしたくは無いんだけど……この子の進化先を決めてあげたほうがいいわ」
「な……? 進化に必要な経験値がもう溜まっているのか??」
「ごめんなさい……途中からデミトリとワイバーンの戦闘を見守ってたんだけど、リスコはその時もう加護を授けてたみたいなの」
『なんで途中半裸になったんですか?』
確かに探究神は、途中からワイバーンとの戦闘を見ていたような口振りだった。
仲間が敵を倒した場合でも経験値を一部得られるなら、ワイバーン討伐の経験値をコボルドが得てしまったのか……。
「デミトリに手を出されないように意識しすぎて、この子の事をちゃんと見てあげることが出来なかったわ。ごめんなさい……」
「ティシアちゃんのせいじゃ無いだろう……謝らないでくれ」
いくらトリスティシアが「並」の神と評しても神は神だ。探究神がその気になれば、俺の事など象がアリを踏むが如くあっさりと始末できてもおかしくは無い。
守ってくれただけで有難いのに謝られてしまうと流石に心苦しい。
「ティシアちゃん。俺はティシアちゃんが俺との関わり方にかなり気を遣ってくれている事と、見守ってくれてる事に感謝してる。ありがとう」
「デミトリ……? 急にどうしたの?」
「感謝している事と信用している事は態度で示していたつもりだが、言葉にしないと伝わらないだろう?」
「……ありがとう」
少しはトリスティシアの気が楽になったみたいで良かった。残す問題は……。
「……その、探究神の加護に干渉するための呪文は……」
「心当たりがありそうだけど、「すてーたす」って唱えるみたいよ」
「はぁ……やはりそうか……」
気が重い……改めて考えてみるとおかしすぎる。
呪文を唱える事自体が、この世界とこれまで歩んできた人生を否定するような……まるでただのゲームか創作の一部と認めているような違和感をどうしても拭えない。
「えっと……今すぐじゃなくて、明日でも多分大丈夫だと思うわよ?」
「放置してコボルドが苦しむ可能性があるなら早めに越したことは無いだろう……」
大きく深呼吸して、心配そうに見守るトリスティシアに軽く頷いて覚悟を決める。
「……ステータス」