「そう?なら良いんだけど……………私も攻撃力の高い『必殺』技みたいなのがあれば、もうちょっと簡単に死体とか作れるんだけどな~」
「……………」
伊奈野がそんなことを言って、マターから何故か疑うような視線を向けられる。
直後、伊奈野の目の前に、
《赤チームのプレイヤーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《赤チームのプレイヤーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《白チームのプレイヤーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《赤チームのプレイヤーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《白チームのプレイヤーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《白チームのプレイヤーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《赤チームの……………
「うわっ!?」
「っ!?どうしたの!?」
伊奈野が驚き、マターが珍しく表情を変化させ少し大きな声を上げて伊奈野へ心配そうな様子を見せる、
伊奈野が驚いたのは突然現れたメッセージであり、特に心配されるようなことはなく、
「あっ。大丈夫。なんか、思ったより早く他のプレイヤーキルできたみたいで」
「ん?……………本当だ。MP減ってる」
「え?MPが?」
「ん。自動で支配の設定してる」
「あぁ。なるほど。周りでキルが起きたら勝手にアンデッドになるようにしてるんだ」
「そう。じゃ、私寝る」
「え?あぁ。お、おやすみなさ~い」
マターが、MPの消費量がきついということでどこかへ消えていく。おそらく先ほどまでいて司書さんからの説明を受けていた場所に戻って寝ようとしているのだろうと伊奈野は理解できたため、止めることはしない。
それよりも、マターに約束したことができたということであとは伊奈野の方の目的を達成するだけであり、
「えぇと。これだけたくさんキルできたんなら1人くらい上位者がいてもいいと思うんだけど……………無理だね」
無理だ。素直にそう感じた。
それは実力差がありすぎてどうしようもないといったような話ではなく、伊奈野の目の前には、
《赤チームのプレイヤーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《白チームのプレイヤーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《白チームのリーダーをキルしました、黒チームへ1PT追加》
《赤チームの……………
「この中からメッセージ探し出すとか無理。失敗したな~」
ここまで一気に大量にメッセージが来るとは思っていなかった。
そのため、狙っていたメッセージを探し出すなど無理な話なのだ。上位者を倒せてシナリオが進展したのか、それとも倒せていないのか。それが分からない。
「こんなことなら普通にフィールドで使えばよかった………」
通常のフィールドで使うのであれば、今のようにイベント用のメッセージは出てこない。
その行為がPK行為になることを除けば、フィールドで毒をまいた方が良かっただろう。何せ今のままでは、プレイヤーをキルしてシナリオが進展するのかどうかも分からないのだから。
「まあ、こうなったらもう進展してるって信じるしかないよね。やれることはやったし、早く退出して勉強しよう」
伊奈野は諦めをつけておとなしく帰っていく。
そんな伊奈野のログには、イベント関連のログで流されてしまっているが、
《称号『毒運び』を獲得しました》
《称号『酸運び』を獲得しました》
《称号『滅殺者』を獲得しました》
《称号『生を許さぬ者』を獲得しました》
色々と獲得していた。
当然それに気づくことはなく、伊奈野はすでに勉強を始めてしまっているが。
さて、伊奈野はいなくなったがイベントフィールドでは、
「毒消しポーションを飲め!またさっきみたいに死ぬぞ!」
「状態異常になったらすぐに回復だ!どこで即死になるか分からないから気を付けろ!」
声を張り上げて周囲に注意を促すプレイヤーたち。
そんな彼らの周りには、いまだに伊奈野の残した状態異常などを引き起こす霧が次々と現れていた。伊奈野は消えても霧は消えないのである。
彼らは状態異常を放置したからこそ死んでしまったのだと考えており、今はひたすらにその解除に力を入れている。
しかし、
「うげぇ!?敵にネクロマンサーがいるぞ!!」
「おい!聖属性攻撃持ってるやつ出てこい!」
「こんな時にアンデッドの相手なんてしてられるかよ!!」
彼らの目の前に敵が現れる。
それは状態異常など気にする様子もなくお構いなしに敵へと攻撃を仕掛けるアンデットであり、
「来るぞ!盾部隊いったん防いでくれ!一気に浄化する!!」
「「「「おぅ!!」」」」
残念ながらアンデッドの攻略法は確立されている。
盾を持った防衛部隊が前に出てそのアンデットたちの前に立ちふさがり、アンデッドに大ダメージを与えられる聖属性の攻撃ができるものがアンデッドをまとめて討伐しようとしている。
アンデッドを討伐するのに非常に適した、実に完璧と言って良いほどの動きだった。………ただしこれが、普通のアンデッドであればの話ではある。
とある小屋の中。
1人の少女が眠りながら、
まるで機械に動かされるようにしてポツリと、
「『死霊爆破』」
つぶやいた瞬間、プレイヤーたちが死亡した。防御など一切の意味をなさずに。
アンデットたちの、自爆に巻き込まれて。
「あれ?なんか、キルがたくさん起きているらしいですわよ?」
「みんな死んだと書かれているでござるな」
「大丈夫?私たちがこれから黒チームとか言って出て行っても、インパクト薄くない?……………ニャ~」