そう言えば前回書くの忘れてましたけど、別にMPを無駄に使う銃とか使わなくてもサイコキネシス使って全力で黒い本を当てたらもっと早く終わってました……
天使を倒した伊奈野。
その後は特に誰かが襲ってきたり、伊奈野が攻撃していたことがバレて騒がれたりするということもなくゆったりと勉強することができた。
ただ、その勉強が終わったあたりでマターが帰ってきていることに気が付き、
「あっ。マターちゃん。もう終わったの?」
「ん。出場停止」
「え?出場停止?どういうこと?」
「やりすぎで、2人とも出場停止」
「……………へ?」
伊奈野の思考が停止する。
マターが出場停止になったというのだ。やり過ぎが原因で。
しかも、マターは2人という言葉を使っていることから、
「も、もしかして、私も出場停止になってるってこと?」
「ん」
「……………そ、そっかぁ」
さすがにそれはないだろうと思いながらも一応確認してみれば、あっさりとマターに肯定されてしまい伊奈野は精神的にダメージを受ける。
(毒をばら撒くのはそんなに駄目だったかな。銃くれた人も考えてたっぽかったし、やる人多いと思ったんだけどなぁ……………今回出場停止になったし、次他のイベントに参加するときも今回とおんなじことするのは駄目ってことだよね)
今回プレイヤーを大量にキルできて本人の中では上位者までキルできたことになっているため、意外と悪くない戦い方だと考えていた。そして、もしできるのならば似たようなイベントがあったとき次も同じようなことをしようと考えていたのだ。
だが、それがダメだった。
「良い感じだったと思ったんだけどなぁ~」
「私も思った」
「ダメだとは思わなかったな~」
「ん。私も。運営、頭固い」
マターと共に伊奈野は愚痴を口にする。そうしてしばらくその場で、運営の誹謗中傷にならないギリギリのラインで話が行なわれることになるのだった。
「頭が固すぎ。頭皮もガチガチ。将来禿げる」
「問題の傾向が古かったし、古臭い人ばっかりなのかな~」
ちなみに、この会話は運営の多くの者達が聞いており少なくない精神的ダメージを与えたという。
恐ろしい子たちであった。
「古い、臭い……………フ、フフフフッ!」
「あぁ。壊れちゃった。娘に臭いとか言われてるんですか?」
「先輩、そういえば最近生え際が……」
「やめろぉぉぉ!!!言うなそれをぉぉぉ!!!」
そんなこともありつつ、数時間が経過し。
伊奈野と違いログを確認しているマターの前に、
《イベントが完了しました。貢献度により報酬が獲得できます。アイテムボックスをご確認ください》
というメッセージとアナウンスが流れた。
これが伊奈野にも共有され、
「アイテムボックスかぁ……………まあ見るのは今度で良いかな」
「私は見る」
伊奈野はアイテムボックスの確認の仕方もあまり分かっていないし、きっと見れるようになってもどれがイベントのアイテムなのか分からないと思われるので先延ばしにする。
ただマターが見てくれるということでもらえるアイテムの傾向などは分かり、
「蘇生アイテム、ねぇ」
「ん。たぶん共通」
「そうなの?別に死ぬ予定はないしいらないんだけどなぁ」
群を抜いて貢献度合いが高いだろう2人。ならば共通のアイテムが送られている可能性が高いだろうと思われるわけで、その筆頭候補が蘇生アイテムなわけだ。
貴重な品ではあるのだろうが、あまり伊奈野はありがたみを感じない。
「……………試して、みる?」
「え?どうやって?」
「私がキルする」
「いやいやいやいや!怖いからやめて!?」
マターがどこからかナイフのようなものを取り出して見せてきたため、慌てて伊奈野は首を振る。
邪神の使徒でなくなっているとはいえ、彼女の狂気が失われているわけではないのだ。そこそこ仲のいい相手を何食わぬ顔でキルするくらい呼吸をするのと同じように簡単にできるのである。
「怖いな~全く」
「気になるなら、試すのが1番。私なら安全安心」
「キルされるのに安全安心とかないと思うんだけど?」
今までで1番くらいに良くしゃべるマターに本気の狂気を感じ、伊奈野はあきれるほかない。
そんな不穏な空気はありつつも、特に何も問題は起きないまま時間は過ぎていき、
「師匠!大丈夫ですか!!」
「何か問題はないですか!?」
「ん?魔女さんにうるさい人。仕事に行っていたんじゃなかったんですか?」
「いや、天使が攻撃を仕掛けてきたと聞いて急いで駆けつけてきたんですよ」
「一応信用できる者達を残してきましたから多少あけるのは問題ありませんよ」
魔女さんとうるさい人の弟子コンビが確認をしてきたり。
「図書館は無事ですか!?本に傷はついていませんか!?」
「あっ。司書さん。そんなに本が心配だったんですか?」
「ええ。それはもう心配しましたよ!思わず仕事を少し抜けてきてしまいました」
イベントでアナウンスを担当していた司書さんが図書館は無事なのかと戻ってきたり。
そんなことはありつつも、危険はないままに伊奈野の勉強とマターの睡眠は穏やかに進んでいくのであった。
もちろん時間の進み方が穏やかであっても、伊奈野の勉強の様子が穏やかであったかというのは完全に別の話ではあるのだが。
「ご主人たま~。僕頑張ったから、ご褒美とか欲しいな~」
「ご褒美?何か欲しい物でもあるの?……………まあおかげでちょっとシナリオも進んだし、私のDPで交換できるものなら交換してあげようか?」
「本当!?じゃあお願い!!」
「分かったけど、やけにテンション高いね……………」