前回誤字が多かったようです。すみませぬ
今週はそういうことが多いかもしれないです(いつも
決して伊奈野が間抜けだとか、そういう話ではない。
どちらかと言えば与えられた情報を基に最善とまではいわずとも決して悪くはない行動を選択しているのである。
しかし、そのどれもが裏目に出てしまっているのだ。
「なぜこんなにも私はアイテムに踊らされているんでしょうか。結構な数のアイテムの被害を受けてるんですけど」
「し、師匠。元気出してください」
「たまたま、今回はたまたまですから」
落ち込む伊奈野に、魔女さんたちが後悔のにじむ表情でなだめる言葉をかけていく。
効果が出る向きはアイテムの形から何となくわかるなどという話をしていたしその効果も似たようなものまでは予想できたのだが、残念ながら予想外な効果により向けた方向はことごとく伊奈野へ被害が出る位置となってしまったのだ。
例えば、発射される向きだと考えていた方向は、そこから跳ね返るようにして地面をせり出させるような効果があったりだとか。
完全なアイテムの解析というのは不可能であるからこうなってしまうのもある意味仕方ない話ではあるのだが、それでもこう連続して被害が出るとやるせない気持ちになるものである。
とはいえそこでなだめるのは数人。
逆に残りのメンバーは集まって、伊奈野に聞こえないくらいの声量で、
「あれって、結構ダメージの大きいのあったはずだよね」
「ですね。結構な広範囲に被害を出せるようなものも多かったはずですし、それを近距離で受けるとなれば相当なダメージ量になるはずですが」
「それにしては随分と何というか……………ピンピンしているように見えるねぇ。お嬢ちゃんは金属製だったりするのかい?」
「おそらく一般の人の体を持っているとは思うのですが。確かにゴーレムなのではないかと疑いたくなるような耐久性ではありますよね。あれだけの色々なものを受けて今はすでに無傷ですし」
「耐久性もそうだけど、それよりも回復能力が尋常じゃないと思うよ?何回か怪我してたけど、一瞬で治ってたし」
伊奈野の防御力と回復能力に関して話をしていた。
純粋に防御力に関してはステータスの部分が主となっているのだが、回復能力に関してはスキルや称号などで底上げされていて、さらに言えばかなりのペースでレベルアップもしているため尋常ではない回復力を持っているのだ。それはもう、同じくらい転職していて同じくらいレベルが高い相手であったとしても負けないくらいには。もしかするとレベル差が2倍以上あってもまだ伊奈野の方が上かもしれない。
「人間やめちゃってるよね。体改造して再生能力高い生物を体に埋め込んだ学者いたけど、あれよりも再生能力上なんじゃない?人間の再生能力超えちゃってるって」
「フェニックスの回復力でもあそこまでではないですからねぇ。人の踏み入れられる領域ではないところまで確実に進んでますね。間違いなく」
「ん~、私もあそこまで回復が速いうえに効果が高い人もモンスターも見たことないねぇ。例の触手を大量に出してくるあの触手を切り落としたときも、再生にはもうちょっと時間かかってたよ…………お嬢ちゃんの髪とか爪とか煎じて、万病に効く薬として売れないかねぇ」
「「大商人様!?」」
人間じゃないと屈辱さんや司書さんは驚くだけなのだが、さすがに店主さんは商人なだけあって視点が違う。
たとえ相手がお得意様であってもそれを利用して商品が作れないか、そして高値で売れないかと考えてしまうのだ。
2人はその発言を聞き、こっちは人間をやめたのではなく人の心を捨てたのかもしれないとドン引きすることになるのだった。
ただ、その割には、
「じゃあ僕もご主人様の体の一部使って実験とかしたいね。ご主人様の再生能力なら指とか切り落としてもすぐに治りそうだし、素材回収は簡単そうだね」
「その体のデータはしっかりと取らせてもらいたいですね。とりあえず再生する範囲がどこからどこまでなのかということは調べたいですし…………」
それに影響を受けてもっとえぐいことを考えたりそんなこともなかったり。伊奈野は自分が実験対象や素材として見られていることなど考えてすらいなかった。
ただそれはそれとして、いくつもことごとく使い方に失敗したり驚異的な再生能力を見せつけたりはしたが、伊奈野が効果を確認したアイテムの数々に有用なものがあったのは間違いない。使うかどうかは別として。
「この周りの温度を下げてくれるアイテム類は組み合わせたらかなり強そうですよね」
「そうですね。1つだけでも十分効果はありましたし、それがいくつもとなると相当な強さになるでしょうね」
特に使いやすいのが、似たような効果を持っていたりそこからの派生効果を出せたりするようなアイテム類。運が良い事にそういうものが一定数あって、特に相手を凍らせたり凍えさせたりするアイテムやそうなった相手に追加効果を与えるようなアイテムはかなりの数そろっていた。
現在最新の街が雪のフィールドということもあり凍結系に関してはある程度プレイヤーも手に入れてしまっているのだが、ここまで数がそろったのであれば話は別だ。
耐性を貫通して凍らせることもできるだろう。
「問題は私まで効果を受けちゃうことではあるんですけど」
「それならこのお守りの類を使えば良いのではないでしょうか?」
伊奈野はそこまでの効果を持つアイテムの数々を使うと逆に自分がその効果の影響を受けて悲惨なことになるのではないかと考えた。さすがにここまで様々な被害を短い間で経験した伊奈野は考えることが違うのである。
実際伊奈野がアイテムを使えばそのアイテムの1番近くにいるのは伊奈野となるし、強く効果を受けてしまうだろう。
だが、魔女さんは問題ないと考えているようで、
「お守り、ですか?」
伊奈野は聞いたことのない名前に首をかしげる。
お守り自体は知っているがゲーム内で見たことはないし、具体的な効果さえも知らない。
ただ、
「ほら、師匠の持ってるなかにお守りあるじゃないですか?今回は実演が難しいので試さなかったですけど、ちゃんと効果を発揮してくれると思いますよ」
「へ?私が持ってる?」
どうやらお守りは伊奈野が持っているものらしい。
今回試す中では効果を見ることが難しい類のものであったため使わなかったらしく、入れていた袋の奥底の方に埋まっていた。
「これは、アーティファクトの中では比較的効果を知られているものですね。昔の権力者などがよく作らせて持っていたという、自分の身を守ってくれるお守りというものです」
「は、はぁ。昔の権力者、ですか」
「そうですね。作るのに非常に手間がかかるため現在は作られていないんですが、効果自体は間違いなく高いですよ。それこそ国王陛下なども昔のお守りを身に着けておられるようですし」
「へぇ?」