なんか先の展開読んでる人がいるんですよねぇ～
予想を裏切りたいところではあるんですけど……………うっ、頭が働かないｗ
嫉妬と強欲が暴れまわり、その暴れた結果を怠惰が利用し。現在のイベントフィールドは混沌を極めている。
誰一人として、イベントでの優勝に自信があるようなプレイヤーはいなかった。
一般のプレイヤーたちが絶望するのは当然と言えば当然だが、やはり大罪持ちの方にも不安要素があるのは間違いない。特に、同じ大罪持ちに出てきていないものが大勢いることも不安要素としては大きいだろう。
それこそ最強と呼ばれる嫉妬の所持者であっても恐怖を感じてしまうような何かが、まだ中央には控えているのだから。
それこそ、まだ本番は始まっていないと言ってもいい。
本当の大罪所持者の戦いというのはこの程度では収まらないのだ。それこそ、戦いの次元が違うのである。
「……………ふぅ。とりあえずこんなもんか。多少は骨のあるやつらを集められたな」
「おいおいマジかよ最強。このメンツみて多少とか、どんな奴と戦うんだって話だぜ？」
「ふむ。最低限は集まったと言ってもいいですかしらね。さすがにこれ以上待たせるわけにもいきませんし、そろそろ行きましょうか」
「悪役令嬢？お前は何を望んでいるんだ？これだけの豪華メンバーをそろえて最低限というのは我々に対して失礼だろう？」
外周で暴れていた２人はその中でそこそこ自分たちについてこられるようなメンバーを集めた。
流石にここまで集まると自分たちであっても勝利できるかは分からない、というか相当確率は低くなるようなメンバーである。
しかしそれだけのメンバーがそろったのにもかかわらずまだどこか２人は満足していない様子。
集まった面々はその様子に首をかしげるのだが、それぞれアンデッドの集団を突破して中央へと移動すればすぐに理解できて、
「なるほどなぁ？悪役令嬢と戦うための戦力ってことかよ。しかも、集団戦の」
「おいおい。悪役令嬢と最強じゃ盛り上がりに欠けるから俺たち誘って集団戦かよ」
「ふんっ。それならそうと言ってくれればもう少し気合を入れてきたものを」
「言ってくれたらもうちょっとアンデッドに使う魔法の消費抑えたんだけどぉ？」
率いてきた２人を先頭に、２つの集団がお互いにらみ合う。
どちらかと言えば悪役令嬢の方が連れている人数は多いが、それでも相手の最強の名も伊達ではなくそれくらいの人数差であればどうにかなりそうな程度の差でしかない。ほぼほぼ戦力は拮抗していると考えてもいいだろう。
いつでも戦闘が始まったとしても対応できるような状態になっており、
「いや、違うぞ」
「違いますわよ？」
「「「「え？」」」」
即座に否定が入り全員が困惑した様子を見せる。先ほどまでの張りつめた空気も一瞬にして霧散し、戦意をむき出しにしていた相手へと今はお互いアイコンタクトをとって何か知らないかと確かめ合っている。
ただもちろん誰もそんな事情を知るはずもなく、そうなればやはり事情を理解している２人へと視線が集まるわけで。
「ここからやるのは、襲撃だ」
「襲撃？」
「誰を襲うんだよ。こんなにメンツ揃えて。もしかしてアンデッド操ってるやつか？」
「ん～。それは分かりませんわ。ただ言えるのは、間違いなく強いということですわね。大罪持ちですし」
「大罪持ち？……………ふぅん？そういうこと？」
「あれか？今まで出てきてなかった大罪の連中に攻撃するってことか？」
２人が話をしていけばある程度事情は理解されていく。
大罪持ちが相手というならば、ここまで揃えても対応できる相手がいるかもしれないとは思うわけだ。
ただ、それはそうとしてそうだとしても、
「おいおい何だよそれ。テンション下がるぜ」
「こんだけ呼んで、やるのは数人の相手かよ」
「もうちょっと盛りあがることしようぜぇ。いくら大罪持ちっつっても、大罪持ち２人に加えて俺たちだろぉ？過剰だ過剰」
そうだとしても過剰。さすがにこれだけ数を揃える必要はないと考えたのだ。
一応ここまで来たのだしやるにはやるつもりなようだが、それでも不満があるといった様子である。
ただ、そうして不満がいくつも出てくる中だからといってそれに押されて考えなおすなんていうことをすることはない。
呼んできた２人は、特に表情を変えることなく目的の個室がある地域へと視線を向けていた。
そのまま周囲のプレイヤーたちの動きを見て、
「ん？な、何だこれ！？」
「お、おい！どうなってる！？」
「……………来ましたわね」
「来たな」
表情を真剣な物へと変える。
プレイヤーの一部が驚愕した表情を浮かべており、何か変化が起きそうな雰囲気になっていた。これを、２人は予想していたのである。
だが、
「お、おい！どうなってる！体が動かないぞ！？」
「なんだよこれ！状態異常か！？」
「……………ん？」
「何だ？思ってた反応と違ぇぞ」
その反応が予想していたものとは違い困惑した様子を見せることになる。
２人としては、自分たちが感じたものを他のプレイヤーたちにも体験させたかったのだ。あの、声を上げ逃げ出し近づくことすらできなかった恐怖を。だが、反応を示したプレイヤーたちは動けないという風に声をあげていた。まったく別のものを感じ取っているのである。
「さすがに大罪だけあって、１つの効果だけでは終わらない、ということなんですの？」
「さてな。それも考えたいがそれよりも前に……………おい、とりあえず助けてやれ。同じようになるかもしれねぇし近づかずに、できれば何か投げてひっかける感じで」
「「「「了解」」」」
嫉妬の所持者による指示でプレイヤーたちは動けなくなった者達を回収に向かう。
ここで活躍するのが鎖鎌や鞭、暗器などを使う者達であり、それらを丁度良くひっかけて固まった者達を回収していった。
そこから固まった状態のプレイヤーたちのことを詳しく調べてみれば、
「うげぇ。『凍結』になってるな」
「おいおい。凍結ってことはあれか？この間のメインシナリオの時にイベントにいたっていう」
「え？何の話だ？」
凍結の状態異常になっていたことが確認された。
これでもここにいるのはかなりプレイヤーの中でもトップの方にいるような者達であり、各種耐性もそれなりに上がっているはずなのだ。
だがそれでも状態異常となり完全に動きを止められているのだから、相当凶悪な何かがあることは間違いない。
「耐性上げられるだけ上げとかないとマズいかもな」
「うげ～。俺とりたいスキルあったのに」
「凍結の耐性のためにスキルポイント使いたくねぇ。せめて燃焼ダメージとかにしてくれよぉ」
スキルポイントを使えば耐性のレベルをあげられるのだが、だからと言って無限にあるわけではないスキルポイントをこんなところで使いたくはない。
皆頭を抱えながらステータスとにらめっこをすることになるのだった。
だが、良いのか悪いのかは分からないが、その問題は少しだけ先送りにできそうで、
「ん？おい！誰か出てきたぞ！」
「え？……………うげ！本当じゃねぇか！何だよあれ！？」
何だよあれとは言うものの、それには見覚えがあった。
なぜなら、
「あいつ大罪持ちだろ！？なんでもう死んでんだよ！しかもアンデッドになってるし！」
「……………悪役令嬢、やったか？」
「いや、やってませんわ。やってたら報告しましてよ。そっちこそやったのではなくて？」
「いや、やってない。となると、誰かあいつを倒せるくらいには強いのがいるってことになるが……………」
「そうですわよね。ただ、私の目が少しおかしかったのかもしれませんけど、あれって今個室から出てきたように見えたんですのよねぇ」
