明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします
瑠季から聞いた話によれば、英雄や準英雄たちの頼みごとを聞いていくと英雄や準英雄たちは強化されるということであった。その頼みごとがクエストのような役割になっているという予想らしい。
その予想があっているか間違っているかはともかくとして、英雄や準英雄をどうすれば強化できるかは分かった。これまでとりあえず司書さんには罠だったり警備システムだったりを教えたので、それ以外の者達の強化をそうした方法で強化してもいいのではないかと考えたのである。
もちろん他の方法での強化も考えてはいるが、(内容は兎も角やることは)簡単な方法があるというのならばそれを使用しない理由はない。
ということで早速、
「何かお手伝いすることとかありますか?」
「師匠にお手伝いいただくこと、ですか?」
翌日、ゲームへとログインし一度勉強をはさんだ後に伊奈野は図書館のメンバーへと問いかけてみた。
誰が英雄で誰が準英雄なのかはいまだに分からないため全員へと問いかけることになるが、全員分の頼みごとを聞けばとりあえず少しは強化できるだろうと考えたのである。
瑠季が言うようにクエストのような形式に近いのであればゲームとして間違いなく頼みごとが出てくると考えられて、
「ん~。何かあるかな?今のところこの面子が普段から集まってるから手が足りないってこともほとんどないしねぇ」
「そうですね。師匠にお手伝いいただくほど困ったことはないですねぇ。困りごとがないわけではないですけど人員は十分確保できていますし」
「あっ、あんまりない、ですか?」
「そうですね~。今のところないです」
「特にって感じですね。お気遣いいただきありがとうございます」
間違いなく出てくると考えられたのだが、伊奈野の予想を見事に裏切って頼み事は出てこなかった。伊奈野が動く必要のない程度の問題しかないらしい。
伊奈野としてもそのくらいのことを手伝ったところで強化ができるとも思わないため、おとなしく引き下がることにする。
(……………いや、引き下がってどうすんの!?強化しないと図書館が危なかったりするでしょ!クエストこなさないと絶対私の勉強場所が危なくなるじゃん!強化イベントをふめずにストーリーが進むって明らかに失敗ルート、とまではいわないけど最高のハッピーエンドには進めないパターンだよね!?)
このままただ引き下がるだけではなにも良い事は起きない。それどころか悪い結果につながる恐れすらある。
できることなら何か別の手を打っておきたい場面であり、
「……………あぁ。そうだ。これ渡そうと思ってたんでした」
「ん?何ですか?」
「今回のは魔女さんとうるさい人用なんですけど……………この間司書さんにだけプレゼントしたのに不満を言われたので一応用意してきたんです。良い物かどうかは分かりませんけど、よければ目を通してみてもらえれば」
「っ!?良いんですか!?」
「すみません気を使っていただいて」
伊奈野が取り出すのは2冊の本。
1冊は魔女さん用の学術論文をまとめたもので、もう1冊はうるさい人用の近頃確認されている宗教勧誘の手口などに関するものだ。うるさい人に渡したものはどちらかと言えば引っかからないように気を付けましょうといったことを呼びかけるためのものであるため、
「できれば他の人を勧誘するというよりは、他の変な宗教から守る目的で使ってもらえると良いかなって思うんですけど」
「了解しました。できるだけそうしましょう」
伊奈野は宗教勧誘に使うのではなく、あくまでも他のNPCなどが勧誘される際に引き留めたりする目的で使って欲しいと告げてその本を手渡す。
ただうるさい人は努力をするといった様子ではあるものの、決して使わないと明言はしなかった。
もしうるさい人が英雄でも準英雄でもなくただのNPCだった場合は危険な可能性が高いが、背に腹は代えられないというのが正直なところだ。
うるさい人を信用するしかないだろう……………名前に『うるさい』という単語を入れられている時点で伊奈野が信用できるかどうかというのは非常に怪しいところだが。
そうして2人にプレゼントを贈れば2人は当然喜ぶし先にもらっていた司書は全く心が乱されることはないという雰囲気だけでなく後方師匠面までしているのだが、逆にマイナスな方向の雰囲気を見せる者達も当然いて、
「俺には?俺にはないのか!」
「ボクは何貰えるの?クッキー?やっぱりクッキー!?」
「いや、なにも用意してないけど?」
「「えええぇぇぇぇぇ!!!!!!!!????????」」
「そんな驚かなくても……………」
新入りコンビが不満を述べるどころか信じられないといった風に驚きの声を響かせた。伊奈野としてはなぜ用意してあると思うのかが信じられないところだ。
それからしばらく2人の文句を右から左に聞き流し続けることになるのだが、予想外なことに、
「……………そういえば、屈辱さんからは文句とか出てこなかったですね」
「ああ。そういえばそうですね。この状況で騒がないなんて考えてみると信じられないです」
「確かに。今までの事を考えれば真っ先に騒いでもおかしくはないと思いましたけどね」
「これは周囲に似たようなことをしたものがいて我が身を省みた、といったところでしょうか。成長したんですね」
何かあった場合には『うるさい』なんていう単語を名前に入れられている人以上に騒がしい印象がある存在。それが屈辱さんだった。
しかし、今回驚いたことに一切屈辱さんは騒いでいないのである。
意外過ぎる事態に伊奈野だけでなく魔女さん達も驚き、何があったのかと屈辱さんへ視線が集まって、
「え?そんなに驚くこと?僕の印象ってどうなってんの?心外だな~全く。僕だって、今回はもらえなくても流れとしては次くらいにご主人様から何か貰えるって分かってるんだよ。まだ教えてもらったこととか全部を理解できたわけでもないし、それまでにやることがたくさんあるって考えれば別に焦る必要性も感じないし」
「あぁ~。なるほど。確かに順番的には次にもらえるのは研究狂いだものね。その可能性はあるかしら」
屈辱さんは信じているのだ。伊奈野の事を。
絶対にどこかのタイミングで自分にプレゼントを贈ってくれる、と。
「あぁ~……………うん。いつか渡すかもしれないですね。いつか。渡せたら渡します」
「え?ちょっと待って?その反応渡さない時のやつじゃない!?僕だけはぶられる感じ!?」
なお数時間後。
伊奈野はとっくにログアウトして図書館に集まっているメンバーも各々の仕事やらなにやらに動き始めようとしているタイミングでのこと。
「さて。それではせっかく師匠から素敵な勧誘の方法が描かれた本をもらったわけですし、さっそく実践してきましょうか」
「はぁ。師匠にはできるだけ使わないとか言っておきながら、全然渋るそぶりも見せないじゃない。相変わらずね、教皇」
「ハハハッ。できるだけやりたくはないのですがねぇ~。現在は邪神から世界が侵攻されているという緊急事態ですから仕方ないですね。いや~。本当は使いたくないんですけどね~」
「……………なんで神はこいつを英雄に認めたんだ?絶対英雄よりも詐欺師とかの方がお似合いだろ」
「ハハハッ。ひどい言いぐさですね、魔王」
新年最初に見た動画がね○ね○ねるねの動画でした
詳しいことは書きませんが、アウト過ぎる内容で脳を破壊されましたし今年は厄年かと思われますね(白目)