ネタのような印象もあるが、伊奈野の現状はかなり深刻な状況だった。
カシューナッツから小籠包に喋る言葉は変更され、また同じように頭にアイテムを当てればカシューナッツに戻る。これでしゃべることができる単語が２つに増えたなんて喜ぶこともできず、効果時間に比べたら少しだとは言え、効果が切れるまでの期間が延びた。
原因は別ではあるが、黒い本に攻撃してしまったことも仕方のない話である。
ただ、黒い本を叩いたからと言って治るほど簡単なモノでもない。
壊れた家電のように叩けば治るというものでもなく、そもそもそちらがおかしいわけでもないため黒い本をどうにかすれば現状が変わるというわけでもなく解決手段は他に探さないといけないわけだ。
薬も色々と服用し黒い本も情報を探し回り上位存在さんにも教えを請いに行ったりはしているようだが、それでも解決の兆しは見えてこない。
幾らなんでもこのまま筆談などで会話をすることは不便すぎるという事で伊奈野は一度ゲームからログアウトして他を頼ることにして、
「読み上げ機能がないか、ですの？」
「うん。状態異常みたいなものだと思うんだけど、１か月くらい普通の会話ができなくなっちゃったんだよね。だから、そういう機能があったら便利だなと思って」
「なるほど。聞いたことがない事例ですけど、納得はしましたわ。そういうものもあってもおかしくはありませんわよね」
ゲームの上位勢にして使用人である瑠季の知恵を借りることとしたのだ。
伊奈野は直接的な解決ではなく、文章読み上げ機能などにより会話に近いことを再現するという形で解決しようと考えたのだ。
そういう時に頼りになるのは、やはり伊奈野に比べて良くゲームのシステムなどを理解している瑠季である。
ここで頼らない理由がなかった。
ただ、瑠季としても音声読み上げ機能となるとあまりなじみがない。
あったとしてもおかしくはないように思えるのだが、使う機会が存在しないためあまり気にしたこともなかったのだ。何せ、伊奈野とは違って特定の単語しか喋れなくなるなんてことにはなったことがないのだから。
もちろん喋れなくなると言った状態異常も存在はしているが、そういったものもそこまで長く効果が続くなんてことはない。せいぜい長くても１時間程度経過すれば勝手に治るのだ。
だからこそ、そうしたものの解決につながるようなものを瞬時に思い出すという事は難しかった。
だが、それで分からないからと言って諦める瑠季ではない。
自分ではわからないのなら他人に聞けば手っ取り早いだろうという考えで、
【薬】総合スレＰａｒｔ６５８２【安くない？】
２１８：ロキ
ということで、読み上げ機能とかありませんこと？
２１９：名無しのプレイヤー
＞＞２１８
脈絡がなさ過ぎて草
２２０：名無しのプレイヤー
＞＞２１８
ヌルッと現れる悪役令嬢
２２１：名無しのプレイヤー
＞＞２１８
どういう理由？
２２２：名無しのプレイヤー
＞＞２１８
言われてみるとありそうだけど、聞いたことないかも
２２３：名無しの情報屋
＞＞２１８
なんてこった
俺の情報にもない、だと！？
２２４：名無しの考察班
＞＞２１８
これはもしや私が出るところですか！？
なぜ今までその話が出なかったのかをゲームの世界観から考察して見せましょう！！
２２５：ロキ
＞＞２２４
何でもいいから早く情報を出せですわ
２２６：名無しの考察班
＞＞２２５
(´•̥ ω •̥` )グスン
２２７：名無しのプレイヤー
＞＞２２５
読み上げ機能っていう認識で良いのかは分からないけど、確か古文書解読に使うアイテムは読み取った文字を読み上げてくれなかったっけ？
２２８：ロキ
＞＞２２７
情報提供感謝ですわ！早速伝えてみますわぁ！！
２２９：名無しのプレイヤー
＞＞２２８
あっ誰かに伝えるためのものだったんだ！？
「…………ということらしいですわ！」
「へぇ。そんなアイテムがあるんだ。そんなことを知ってるなんて、掲示板の人も物知りだね」
「ですわね。ほとんどは使えないですけど、たまに有能なモノもいるから面白いのですわ～」
こうして瑠季を挟んで掲示板から情報を取り寄せ、伊奈野は１つのアイテムを知った。
伊奈野はその詳細などを瑠季に調べてもらった後、再度ゲームの世界へと飛び込んでいく。
アイテムを購入するならば店主さんのところに行くべきなのだろうが、できれば人と交流をするのは問題を解決してからがいいという思いもあるため一旦ダンジョンのあるサーバの方に行き、ダンジョンで交換できるアイテムの中からそうしたものがないか探すことにして、
「おや、ダンマス。お久です」
『久しいなダンジョンマスターよ』
「どうも…………ん？」
違和感に気がついた。
何気なく挨拶を返したのだが、返せたのだ。
予想外なことに、小籠包としか話せない状態が解消されている。
（サーバを変えればそもそもあのアイテムの影響はなくなるってこと！？）
こうして、またしばらくこちらのサーバで活動することが決まるのであった。
もちろん、並行して直接的な解決手段を探すなどもやってみるわけだが。
短編「殿下に婚約破棄をされましたけど、おそらく婚約者を間違えてます」を投稿しました
衝動的に書きたくなったため実験も兼ねての新作です
今後の作品の参考にしたいので是非ともご意見ご感想頂けると幸いです
