前半現実の話ですが、後半からゲームに移行します
誰かが土下座していることなどつゆ知らず。
伊奈野は１階へと降りており、
「瑠季ちゃ～ん」
「な、何ですの？」
伊奈野は使用人である瑠季へと話しかける。
声をかけられた瑠季の方は何なのか分からないとでも言いたげな演技をしているが、口元は緩みまくっており何かを期待しているのは丸わかりである。
「お誕生日、おめでとう！！」
「ありがとうございますわぁ！！」
本日。１１月２８日。
金野奈瑠季１８歳の誕生日である。
「成人おめでと～ついに私と並んでしまったね」
「お嬢様と並んでも、また来年には１歳差になりますわよ」
「まあね。確かにそうなんだけどさ……………」
伊奈野はすでに誕生日を迎えていて、先に１８になっている。瑠季より先に成人を迎えているのだ。
……ただ、こうして２人とも１８になったとしても見た目が成人相応かと言われるとそんなことはなく。
誰かさんの身長は相変わらず中学生か小学校高学年と間違えられそうなところである。
「まあ、私がちょっと先に行っても、隣に並んでくれるでしょ？」
「………………え？プロポーズですの？」
「え？なんで？……………まあそれは良いとして、はい」
あまり瑠季の考えが分からなかったが、伊奈野はとりあえずそれ以上考えることを放棄して小箱を取り出す。
赤い包装紙に包まれ、リボンで結ばれたそれは、
「はい。ちょっと早いけどクリスマスプレゼント」
「わぁ～。お嬢様はサンタさんでしたのねぇ～……………って違いますわよね！？誕生日プレゼントですわよね？」
「………ちぇ～。バレたか」
「バレますわよ！私を何だと思ってますの！？」
誕生日にもかかわらずからかわれる瑠季。
見た目があれがあれであれなので、その様子はかわいそうはかわいいタイプの不憫〇リである。
「………ま、まあ、良いですわ。とりあえずプレゼントを開けさせてもらいますわね」
「おっ。どうぞどうぞ～」
ダ〇ョウ倶〇部のようなノリで促しつつ、瑠季にプレゼントを開けさせる。
こういったプレゼントは朝っぱらから渡すようなものではなく夜にパーティーなどをしながら渡すようなものだと思われるのだが、伊奈野はそう考えていない。
「っ！？こ、これは！？」
「どう？私が作ってみたんだけど、結構うまくできたんじゃないかな？」
伊奈野がプレゼントとして渡したもの。それは、手袋である。
何かとおしゃれでゴテゴテした手袋だが、伊奈野のお手製だ。
「ちょっと勉強の休憩時間とかに作ってたんだよねぇ。そろそろ寒くなってくるだろうし、時期的にも丁度良いかなって思って」
彼女の勉強時間を削ったわけではないが、それ以外のプライベートな時間をかなり削って作った一品だ。
そこまでしたのは、当然瑠季と言う存在が伊奈野にとって大切であるからに他ならない。
とうぜん伊奈野のその時間の貴重さは瑠季も理解しており、
「う、うれしいですわ！今日からつけていきますわね！！」
「いや気に入ってくれたならいいけど、今はさすがに要らないでしょ。もっと寒くなってからでいいって」
１１月後半で寒いことは寒いが、まだ手袋をはめるような季節ではない。
まだ朝ご飯すら食べていないにもかかわらず手袋をはめて着替えまで始める瑠季。その様子に苦笑しつつ、伊奈野は夜のパーティーに向けて料理を作りに行くのだった。
その後適当に学校生活を過ごして休憩時間には瑠季を甘やかし、あっという間に放課後。
夕食の手伝いなどはあるのだが微妙に時間が空いたタイミングでゲームへとログインし（当然のように海外サーバ）、
「………………あっ。また邪神の使徒っぽいのいる。攻撃しとこ」
墓場の中のダンジョンへ行く途中で、伊奈野は光を発見。
昨日のように『牽制魔弾』の『連射』と本の角アタックによって不可視化を解除させ、
『あぁ。来たかダンジョンマスター。待ちわびたぞ、あとはこちらで受け持つから、他のものも不可視化だけ解除してくれればいい』
「あっ。骸さんこんにちは。じゃあ、あとはよろしくお願いしますね」
やってきた骸さんの配下に後のことは任せる。
なんだか骸さんの配下も強そうなものが増えていたような気がしたが、気づかなかったことにした。
そして気づかなかった新鮮な気持ちのまま、
「あっ。入り口は特に変わってないんですね」
『まあさすがに入り口はな。とはいえ、入り口付近も変わっていなくはないのだが、それに関しては今は良いだろう。まあ、好きに見て回ると良い。ダンジョンマスターなら罠の類は発動しないはずだ』
「了解です。まあ、適当に見て見ます」
その後何が起こったのかは言及しないが、
《スキル『圧縮耐性１』を獲得しました》
《スキル『火耐性１』を獲得しました》
《スキル『麻痺耐性１』を獲得しまった》
《スキル『水中呼吸１』を獲得しました》
《スキル『水耐性１』を獲得しました》
《スキル『毒耐性１』を獲得しました》
《スキル『酸耐性１』を獲得しました》
《スキル『風耐性１』を獲得しました》
《スキル『光耐性１』を獲得しました》
《スキル『暗視１』を獲得しました》
《スキル『闇耐性１』を獲得しました》
《スキル『土耐性１』を獲得しました》
《スキル『鈍足耐性１』を獲得しました》
《スキル『……………
まあいろいろあった。
『す、済まない。何も言っていなかった余が悪かった』
「さ、災難でしたね………」
「…………………………」
何があったんだろうなぁ～
一応補足で書いておくと、使用人ちゃんは金持ちなのでお金かけて何か買ってもあんまり喜ばせられないです。
というか、主人公より先に誕生日が出るキャラって……………
