本日2話目です
前話の簡単なまとめ
・『濃度変化』のスキルが活躍!
・なんかまた凄そうな称号GET!
・金属を入れるだけで魔力を回復できる装置ができたよ!
・収入源が増えたぜ!
以上(異常)!!
『む?ダンジョンマスター。今日は随分と浮かない顔をしているな』
「あっ。骸さんこんにちは。そうですか?私はいつも通りだと思いますけど」
いつも通りに海外鯖でダンジョンへと入った伊奈野。だが、なぜか骸さんから心配されてしまう。
この日は休日で1日中勉強(学校での授業は意味を感じないため勉強と認めていない)できるということで、逆に機嫌は良いくらいである。
『何か悩みがあるなら聞くが』
「いえ。特にそんな悩みとかもないので大丈夫ですよ」
話聞こか?を骸さんからされるものの、伊奈野はあっさりと断る。
実際大した悩みもないし、あるとしても今のところ勉強関連の悩みくらいである。骸さんに聞かせるようなものでもない
そんなに今の自分は変な顔をしているのかと不思議に思いつつも、伊奈野は机に向かって勉強を始める。そうしていると、すっかり疑問のことは頭から消えていった。
『………くっ!悩みを聞くという策は上手くいかなかったか』
「まあ、元からあまり成功確率は高いとは思ってなかったじゃないですか。悩みを聞いて、その代わりにこちらのお願いを聞いてもらうなんていうことは」
『確かにそうなのだがな。とはいえ、できるならそうした方が無条件に話を進められただろう?』
「そうですねぇ」
伊奈野からあっさりと断られてしまった骸さんとそれに協力していた炎さんはそんな会話を行なう。
伊奈野に何かがあったわけではなく、2人が何かを企んでいるようであった。
『素直に話すしかないな』
「そうですねぇ。ただ、ダンマスのことですから素直には頷かないと思いますよ。条件を付けるとしても、何なら承諾してくれるのかも分かりませんし……………」
その後しばらく2人は、どうしたら伊奈野から自分たちのお願い事を聞いてもらえるか話し合うのであった。
相手が通常の一般人であるならそう難しい話ではないはずなのだが、残念ながら相手は伊奈野である。勉強に関係のない話をどう進めていくのかが課題だった。
それから数十分後。
『………最近、余もこの墓場の外へと目を向けるようになってな』
「ああ。そうなんですか?」
まずは世間話のようなものから始める骸さん。
伊奈野も休憩時間に世間話をすること自体はそう珍しい事でもないので。違和感も感じないまま相槌を打つ。ただ世間話に違和感を持たないだけであって、いままで墓場以外に目を向けてこなかったことには疑念を抱いたが。
『そこで手始めとして、配下の鳥に市井の様子を観察させてみたのだ。そこで初めてこの国の変わり様を知ってな』
「あぁ~。なるほど」
伊奈野はこのサーバにおける国が以前までどのようなものだったのかは分からない。だが、他の国々のサーバと比べて明らかにこの国のサーバにおけるNPC達の様子は特殊だった。
プレイヤーが来るまでのこの世界の設定がどうなっているのかは知らないが、大きく変化している可能性があることは予想できる。
『余の弟もあの頃の志をすっかり忘れてしまっていてな………』
「弟さんですか?」
『うむ。余の弟、とはいってももちろん人間であるぞ?あれでも人間の運命を託したのだが、いつの間にかその託されたものをすっかり忘れ血税を新たな宗教のために使っておる』
「は、はあ。それは大変ですね」
血税などと言う単語に違和感は覚えるが、伊奈野はあまり深掘りせずに話を聞いていく。
骸さんの生前の家族構成など聞いても何の得にもならないのだから。
『そこでやはり余がこの世を変えねばならんと思ってな。この世界をすべて余の配下に収めようという決意を新たにしたわけだ』
「お、おぉ。頑張ってください」
『うむ』
ここまではあくまでも世間話、というには少し深い話だが、伊奈野はただ話を聞くだけでよかった。だが、ここから先骸さんは本題に入っていく。
『………ただ、この世界にいる余はこの考えになったが、他の世界の余もこうなるとは思えん。だから、そなたには他の世界の余と余の弟が連絡を取るための懸け橋となって欲しいのだ』
「懸け橋……つまり、伝言係になれ、と?」
『まあ、言ってしまえばそうなる』
伊奈野の確認に、骸さんは隠すことなくうなずいた。
ただ、
『さらに言ってしまえば目的はそれだけではない。余の弟と接触してこの国の防衛体制を調べてきてほしいのだ。この世界を支配する際に確実に役立つはずであるからな。もちろん報酬は用意してある』
本当の目的はそこだ。
他の世界の自分が自身と同じような道をたどることを是とせず、できるのであれば平和的にいかせてあげたいという気持ちがないわけではない。
だが、それよりも人間たちの防衛体制や防衛能力を知りたいという気持ちが大きいのだ。
ここからは、いかに報酬と言うものを魅力的に見せるかで伊奈野を頷かせられるかどうかが変わってくる。
骸さんが気合を入れて交渉に臨もうとして、
「あっ。良いですよ。それくらいだったらやります」
『………よ、良いのか?』
「はい。大事なことなのは分かりますし。協力します」
伊奈野はあっさりと承諾して見せた。
今まで長い時間をかけて説得するための要素を考えてきていた骸さんや炎さんとしては拍子抜けな展開である。
ただ、当然伊奈野がうなずいたことにも理由があり、
(このダンジョンの防衛には骸さんが欠かせないし、もし骸さんがこの世界の掌握に失敗すればこのダンジョンが攻勢を受けることは免れないはず)
という、下手に協力しないでいると自身のダンジョンが被害を受けてしまいかねないという不安感があるのだ。伊奈野としても使いやすい勉強部屋の1つであるダンジョンは手放したくない物となっている。
「で、その骸さんの弟さんって会うのは簡単なんですか?」
『それはその世界の余でないと分からんが…………一応国王であるから難しいかもしれんな』
「………………………………………なるほど」