気が付けば200万PV突破しておりました。
たくさんの人に読んでいただけて感謝しかありません(ㅅ˙ ˘ ˙ ) カンシャッッッ
残す所数話ですが最後までお付き合いくださればウキウキとゴールテープが切れそうです。
いつもいいね、感想、☆、誤字報告ありがとうこざいます。
朝から全身を磨かれ、何時もよりも数倍磨き上げられた私は真っ白なウエディングドレスに身を包み、父の手に引かれて式場まで歩いた。
「もう充分幸せだと思うが、もっともっと幸せになるんだよ」
式が始まる前だというのに既に涙目の父を見て私も思わず泣きそうになったのだが、せっかくのメイクが崩れてしまっては大変なので必死で我慢した。
本来であればバージンロードを父と一緒に歩くのだが、私は既に子を産んでいる為にそこは省略される事になり、式場の扉が開くとエリオンを抱いた真っ白いタキシード姿のミューゼ様が待っていて、父の手から私の手を受け取るとエリオンの手を2人で片方ずつ握って真っ赤なカーペットの上を親子3人で歩いた。
エリオンの体と歩調に合わせて身をかがめながら歩くのは少し大変だったけど、ワクワクした顔でテトテト歩くエリオンがとても可愛くて苦にならなかった。
神父様が待つ祭壇の前まで何とか歩き切ったエリオンはミューゼ様に抱かれ、神父様が祝いの祝詞を読み上げると、それに反応するかのようにエリオンが喋り始め、会場からはクスクスと笑い声が沸き起こった。
嘲るような笑いではない為会場のムードはとても和やかだ。
神父様が聖書の一文を読み始めるとエリオンがウトウトとし始めて、そっとやって来たセナ様がエリオンを受け取っていった。
「新郎ミューゼ・ランベスト、あなたはフェリー・ランベストを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
「新婦フェリー・ランベスト、あなたはミューゼ・ランベストを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「それでは誓いのキスを」
ミューゼ様が近付いてきて唇が軽く重なった。
「この身にかけてフェリーを生涯愛し抜くと誓う」
「私も、誓います」
ふわりとした浮遊感と共にミューゼ様の香りに包まれ、満場の拍手と喝采の中私はミューゼ様にお姫様抱っこをされて再びキスをされた。
こんなに賑やかだと驚いて泣き出したりしないかとエリオンを見ると、セナ様の腕の中でスヤスヤと眠っていた。
「あれは大物になりそうだな」
「ふふっ、そうね」
「幸せだな」
「本当に、幸せ」
*
披露宴では沢山の人達に「おめでとう」と言われた。
シャーリンはヘルドリアスとペアになるドレスコーデで2人で来ていて、ヘルドリアスは流れるように女性に声を掛けているのだがシャーリンはそれにはもう何も言わない。
「わたくしとは真逆の印象の女性にしか声を掛けられないらしいのよ。馬鹿よね」
そう言ったシャーリンはとても綺麗だった。
「次はシャーリンの番ね」
シャーリンの結婚式は今年の秋に予定されている。
卒業パーティーでの公開プロポーズから本来であれば最低でも1年は要する結婚準備に入るのだが、ヘルドリアスの強い希望でそれよりも早まった。
ヘルドリアスの脳内ではプロポーズした翌日には式を挙げるというとんでもない計画が立てられていたようなのだが、一国の王太子の結婚式が招待客もお披露目もなしなんて許されるはずがなく、準備に1年を要する所を半年程無理やり縮める形で様々な所を納得させたそうだ。
そういう行動力や決断力はあるのに、シャーリンに関してだけは本当にダメダメなのだが、ヘルドリアスに絆されてきているシャーリンは「そんな所が可愛いのよ」と笑っていた。
*
驚く事があった。
お祝いの挨拶に来たキリアンの隣に、なんとアリザがいたのだ。
そして2人の口から「婚約しました」との驚きの報告を告げられたのだ。
結婚式は来年を予定しているそうだ。
「え?何時から?」
卒業してからアリザは本格的に作家として生きていく事を決め、リリンから聞いた設定集を作る事を決めたそうなのだが、今までにはなかった特別な本を出すのだから全てに拘りたいと考えて、表装の布から特別なものをと考えている時にたまたまキリアンと関わるようになり、表装の布地について相談をしているうちに互いに惹かれ合い、そこからはキリアンが猛アタックをしたそうで婚約が決まったそうだ。
幸せそうな2人の姿にこちらまで幸せな気持ちになった。
作家としての活動をやめるつもりがない事、作家としてやっていくならどうしても伯爵夫人としての役割が果たせなくなる事を考えて断ろうとしたアリザに、「どうしてそれが断る理由になるの?」とキリアンはキョトンとした顔で聞いたらしい。
「将来的に僕は伯爵家を継ぐと思う、潰れてなくならない限り、ね。でも、僕が伯爵になったとしても君は君でしょ?作家として活躍の場があるならそこで輝けばいいと思うよ?僕んちみたいな貧乏伯爵家に大した伯爵夫人としての仕事なんてないし、時々社交の場に『どうだ!僕の奥さん可愛いだろう!』って君を自慢する為に見せびらかしに行くのを許してくれればそれだけでいい」
そうキリアンは言ったのだそうだ。
「そんな事言われたらあれこれ考えてるのが馬鹿らしく思えてきて」
キリアン男前!
「だって僕は伯爵夫人になって欲しいから結婚したい訳じゃないから。アリザが好きだな、一緒にいたいな、一緒にいたら幸せだろうなって思ったから婚約を申し込んだし、結婚したいと思ったんだ。作家としての活躍を潰してまで伯爵夫人の役割なんてして欲しくないし、して欲しいとも思わないよ。それに、僕、作家としてキラキラしてるアリザが大好きだから」
目の前で堂々と惚気けてくるキリアン。
幸せなのはいい事だ。